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ゲーセンキング(地元最強)

前回までのあらすじ

日和の好感度を上げ直すため

放課後デートの約束を取り付ける

日和は部活を早退し王真と

ショッピングセンターデートへ向かった


「王真って、ここによく来たりする?」

「いや、1回だけ飛月と買い物をしに来たことがあるだけだな、そう言う日和はここによく来るのか?」

「うん! ここはね、ウチの庭みたいなものなんだ。特にゲーセンにはよく行ってて、気づいたら周りからキングって呼ばれるようになってた」

「キング? それってつまり何度も通ってるうちにゲームがすごく上手くなって周りからそう言われるようになったってことか?」

「その辺はウチにはよくわかんないけど、ここら辺じゃ敵なしだったのはたしかかな?」

 なるほど、日和はゲーセンによく通っていたのか、ここのゲーセンなら飛月と来たときに軽く遊んだ経験があるから話にもついていけるだろうし、まずはそこに行くとするか。

「それじゃあ、まずゲーセンに行くとするか」

「う~ん、ウチは別にいいけど、今日は王真が行きたいところに行くんだから、王真が行きたいって思ってないなら行かないからねっ」

「俺もここのゲーセンは行ったことがあるからな、キングって呼ばれるほどの日和の腕前が見たいんだよ、そしてあわよくば勝つ」

「うん! いいよっ! ゲーセンのキングとして王真の挑戦受けて立つ!」

 日和は俺に人差し指をビシッと真っ直ぐ突きつけ、自信満々にさながらライバルキャラのように振る舞った。

 日和の腕前がどの程度かは知らないけど、所詮はキング。次期魔王とは肩書きの格が違う。次期魔王の名に懸けてこの勝負は負けられない。

 1時間後。

 肩を落とし軽くやつれ気味の俺の隣で日和は満足そうに笑顔を浮かべ、両手を腰に当てている。ゲーセンから出てきたそんな俺たちの姿を見れば結果など語る必要もないんだろうが、一応、念のために言っておくが完敗だった。

 格ゲー、ガンシューティング、レースゲー、音ゲー、UFOキャッチャー、と5つのゲームで挑み、全てで完敗した。目も当てられないような惨敗劇だったので次期魔王の名誉のため内容は割愛する。

「ふふ~ん、ウチの圧勝だったね~」

「ああ、完敗だよ、さすがにキングって呼ばれるだけのことはあるな」

「でしょでしょ、もっと褒めていいんだよ」

 少年のような屈託のない笑顔を浮かべ喜んでいる日和の姿を見て、どうしてクイーンではなくキングと呼ばれるようになったのかがわかった。でもそれが日和らしさで、日和の魅力だと言うことを……。

 そんなことを考えていると俺たちの周りに人が集まり始めていた。

 集まってくる人たちは口々に『キングだ』『キングがいる』と口にしているのでどうやらキングと呼ばれている日和を一目見ようと集まって来たらしい。

 ここまで日和の知名度があるとは思わず呆気にとられているうちに集まって来た人たちに囲まれ、ゲーセンの外に出られなくなってしまう。

「これじゃあ、他の場所に行けそうにないな、一旦ゲーセンの中にでも――日和?」

 少し顔を赤くした日和は覚悟を決めるかのように、一呼吸入れてから俺よりも1歩前に出る。

「ウチ、か……彼氏とデート中だから、邪魔しないで!」

 日和は堂々と宣言するようにそう言った。その宣言は思いのほか効果があったようで、周りの人たちはざわつきながらも道を開けてくれる。

「い、行こっ!」

 突然の宣言に1番驚いている俺の腕を掴んで日和は出来た道を走りだす。

 日和は人混みを抜け出した後も何故か全力疾走で、付いていくのがやっとだったが、しばらく走って、近くにあったベンチに俺たちは息を切らしながらも隣り合って座る。

 息を整え終えて日和のほうを見ると、まだ息が上がっているらしく、息遣いも荒く、汗もかいていて、顔も真っ赤になっていた。

 俺よりも運動能力のある日和が俺よりも疲れている様子を変に思い、声をかけようとすると日和は俺の顔の前に自分の掌を広げる。

「今は駄目、……こっち、見ないで」

 何故か恥ずかしそうな声でそう懇願されては紳士である俺としては見るわけにもいかないので日和に背を向けるように反対側を見ながら声をかける。

「日和がそんなに息切れするなんて珍しいな、大丈夫か?」

「うん、体のほうは、大丈夫」

 元気がないと言うかよそよそしいと言うか、さっきまでの調子とは全く違うのでなにかやらかしたかと思い少し不安になっていると、日和が続ける。

「さ、さっきのは違うから、あれはああ言えば、きっと切り抜けられるって、思って」

「さっきの? なんのことだ?」

「さっき、ウチが、王真のことを……か、彼氏って言っちゃったこと」

「(なるほど、そう言うことか)ああ、そんなこと気にしなくてもいいって、少し驚いたけど、結果的にちゃんと切り抜けられたしな」

「……うん、もう、こっち見ていいよ」

 少しだけいつもの調子に戻った声を聞いて振り向くと拗ねたように唇をとがせている日和の姿があった。

「もしかして、怒ってる?」

「怒ってない、けど、ちょっと拗ねてる」

 俺から顔をそらす日和を見て、どうやら機嫌を損ねるようなことを言ってしまったらしい、せっかくここまで上手くいっていたのに、このままだと好感度に影響が出ると思い、ご機嫌が直りそうなところへ日和を連れて行くことにした。

「わー、すごい! これ最新モデルだぁ!」

 ショッピングセンター内にある靴屋のスポーツシューズコーナーに並んであるスポーツシューズを見て、手に取って、無邪気に喜ぶ日和を見てようやくホッとする。

 あのまま失敗に終わったら飛月に何を言われるかわからないと思い内心焦っていたわけだが、日和の笑顔を見て気が緩んだせいかトイレがしたくなり、日和に断りを入れて近くにあるトイレへ向かっていると、飛月からの通信が入る。

「『にに様、デートは順調ですか?』」

「『とりあえずはな、そっちはどうだ?』」

「『水無瀬のほうはモブ女と今ショッピングセンターにいますのでそっちと接触することはないと思います』」

「『そうか、それなら……って、ショッピングセンター?』」

「『はい、にに様と以前1度行ったことのある、あの大型のところです』」

「『おい、それって――』」

 トイレにたどり着いたと思ったら、トイレの前の廊下で壁に隠れるようにトイレを見張っている飛月を見つける。

 飛月も俺に気づいたようで、まるで異世界人を見つけてしまったかのようにお互い硬直してしまう。

「な、なんでお前がここに」

「それはこっちのセリフです、にに様こそデートに行ったのではないのですか?」

「いや、ここでデートをしてるんだよ」

「なんでこんな無難なところを……、他にデートに相応しい場所なんていくらでもあったと思いますが」

「仕方ないだろ、他に思いつかなかったんだから」

「それで、大空のほうはどうしたのですか?」

「靴屋でスポーツシューズを見てる」

「1人で置いてきたのですか?」

「トイレにまで付き合わすわけにいかないからな、そう言うお前のほうはここでなにしてるんだよ、愛南はどうした?」

 飛月は俺の質問になにも答えずに女子トイレのほうを親指で示してきた。

「そういうことか、にしてもまさか被るとはな」

「デート中に2人が鉢合わせでもしたら大変なことになりますので、デート場所を変更したほうがいいかもしれませんね」

「でも今から場所を変更するなんて――」

「あれっ、王真君?」

 その声に思わずビクッと反応し、声が聞こえてきたトイレのほうを見てみると、愛南が友達(モブ女)と一緒にトイレから出てきたところだった。



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