放課後デートの定番と言えば
前回までのあらすじ
愛南の過剰な意識を正すことに成功
王真に日和からの冷たい視線を感じる
愛南との仲が深まる一方それに嫉妬する日和
好感度の下がり始めた日和の再攻略を開始
ハーレム作り18日目。
飛月の作戦通りクラスに入ると愛南に軽く朝の挨拶をして、そのまま日和の席に向かう。
「日和、おはよう」
「……おはよう」
机に頬杖を突き、不機嫌そうな顔をしながらではあるが一応挨拶を返してくれる。
「なんか不機嫌そうだな、なにかあったのか?」
「別にー、なにもー」
さっきからこっちを見ようともしないところからしても日和は俺に対して明らかに怒っているのがわかる。飛月の話によれば怒っている原因は嫉妬らしく、日和の機嫌を直すには『とにかく褒めてください、褒められて嫌な女はいません』そんなありきたりなアドバイスを貰ったのでとりあえずその通りにしてみるか。
日和の外見をよく見てみると、前はどちらかと言えばボサボサで無頓着な髪の毛だったけど、今はなんとなくだけど艶が出ているような気がする。
「日和、髪綺麗になったな」
「『なんですか、それ、褒め言葉のつもりですか?』」
教室の隅からインカムを通じて俺のセリフに文句をつけてくるのは勿論飛月だ。
「『どう聞いても褒め言葉だろうが』」
「『どこがですか、私には『お前、前は髪ボサついてたよな』的な感じで昔の自分に駄目出しされているようにしか聞こえないのですが』」
「『そんな風に聞こえるのは捻くれてるお前だけ――』」
俺が飛月に対してそこまで言うと、日和は少しだけこっちを見ながら口を開く。
「き、気づいた? 最近ちょっと手入れしてるんだよね、でもさっ、ウチみたいにガサツな女子が髪を手入れするなんて、おかしいよね」
「そうか? 俺は女子じゃないからからその辺よくわからないが、単純に髪の綺麗な日和もいいと思うぞ」
「そ、そう? 王真がそう言うなら、もう少し続けてみようかな」
照れくさそうに頭をかいている日和の顔にはさっきまでの不機嫌さが見受けられなかったので、どうやら上手くいったようだ。
このまま一気にデートの約束を取り付けられるかもしれない。
「なぁ日和、その、日和さえよかったら今日の放課後どこか遊びに行かないか?」
「えっ、……ごめんっ! 誘ってくれて嬉しいけど、今日は部活があるから」
「それなら部活が終わってからでいい」
「でも、それじゃあ王真を待たせることになるよ?」
「ああ、わかってる。部活が終わるまでこの教室で昼寝でもしてるよ」
「……本当にいいの? 本当にウチのこと待っててくれるの?」
「いいって、特に用事もないし」
「やったっ! ウチも王真と一緒に遊びたかったんだ。それじゃあなるべく早く部活終わらすから待っててねっ」
自分で言うのもなんだが怖い位に上手くデートの約束取りつけることが出来て内心ガッツポーズをしていると、そんな余韻を吹き飛ばすかのように飛月が話しかけてくる。
「『デートの約束を取りつけたのならすぐに席に戻ってください、話せば話すほどボロが出る可能性がありますから』」
「『言われなくてもわかってるっての』」
少しぐらいは驚くかと思ったが意外に冷静だったので、少し面白くないが言われた通り自分の席に戻り席に座る。
「『……にに様は意外とアドリブ力がありますよね』」
「『それって褒めてるのか?』」
「『さぁ、どうでしょう』」
そうはぐらかされ通信を一方的に切られると同時に朝のホームルームが始まった。
それから放課後までは日和をなるべく刺激しないように細心の注意を払いながら、愛南とコミュニケーションを取りつつ放課後を待ち。
俺は誰もいなくなった教室で日和が教室にやって来るのをただ待っていた。
ちなみにだが、『誰も』と言うからには飛月すらもいない。
飛月からは『私はデート中に大空と水無瀬が接触するという最悪のパターンにならないよう水無瀬を監視しますのでなにかあったらインカムを使ってください』と言われている。
つまり、今回の放課後デートでは飛月のアドバイスをあまり期待できなので少々不安だが、今日中になんとか日和の好感度を戻せるように頑張るしかない。
それにしてもデートとかどこに行けばいいんだ? 前と同じようにスポーツ施設なんて芸がないし、なにより日和の部活が終わってからだと時間的に満足には遊べないだろう。どうするかな、こうなったら日和に行きたいところを聞いてそこに行くことにするか。
「それしかないか」
「ん? なんのこと?」
自分の席に座り、天井を見上げなんとなく呟いた俺の視界を遮るように日和が上から顔を被せてきた。さっきまでは毎日掃除でもしているような綺麗な天井しか見えなかったのに、今はニコッと楽しそうに笑っている日和の綺麗な笑顔しか見えない。
「日和!? なんで教室にいるんだ? 放課後が始まってまだ1時間くらいしか経ってないぞ、茶道部ってこんな早く終わる部活なのか?」
「えっと、まぁ、今日は特別みたいな感じ」
「まさかとは思うが、サボって来たんじゃないよな?」
「さ、サボりじゃないよ、ちゃんと部活に行って活動したし許可も取ったし、だからこれはれっきとした早退だよ」
「……それもサボりだと思うが?」
大義名分はしっかりとあると言わんばかりのドヤ顔は日和の性格も相まってか、とても可愛く見えてしまい少し赤くなっているであろう自分の顔を見られないように逸らしながら辛うじてそう返す。
「も~、そこは追及しなくてもいいじゃん」
「そうは言ってもな、いくら遊びたいからって言っても部活をサボるのはよくないじゃないのか?(時期魔王になんて言われたくないだろうけど)」
「――こう見えてもウチはただ『遊びたいから』なんて理由で部活をサボったことはないんだよ?」
「なに言ってんだよ、早く遊びたいがために今日の部活サボってんじゃねえか」
「うん! 【王真】と遊ぶために――ねっ!」
俺と遊ぶため……か、なんかいいように言い訳に使われている気もするが、日和とのデート時間が延びるのは好感度を上げるチャンスも増えるし、好都合だな。
「そうかよ、それじゃあ早速どこに行くか決めるとするか、日和はどこか行きたい場所とかないのか?」
「う~ん、ないこともないけど、前はウチの行きたいところに王真が付き合ってくれたでしょ? だから今度はウチが王真の行きたいところに付き合ってあげたいなって」
「えっ、俺の行きたいところ?」
「うん、今からだと行けるところなんて限られてるけど、王真の行きたいところだったらウチ、どこだって付き合ってあげる」
まさか、こんな展開になるとは……。かなり困った。日和の行きたいところに行くつもりだったからなにも案を考えてなかったし『どこだって』って言われると選択肢が広すぎてどこに行くのがベストなのかがわからない。
飛月に意外とアドリブ力があるなんて言われたが、あいつにしては珍しく過大評価だったらしい。
そんなわけで悔しいが上手いアドリブが思いつかないマニュアル魔族の俺はつまらないと非難を受ける覚悟で無難そうな、この島で1番の大きさを誇る学校近くのショッピングセンターの前まで来ていた。
ここなら映画にショッピングに食事と、デートに置いて必要なことを大体は出来る。
つまりは色々回って日和が興味を示すところで時間を使えばいい。
かなり受け身な作戦だが、俺の恋愛経験値ではこれが精一杯だ、あとは出たとこ勝負。
軽く開き直りながら俺は日和とショッピングセンター内に入った。
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