同時攻略開始
前回までのあらすじ
食べ過ぎた飛月を保険室に連れて行く
体調が回復した飛月と作戦会議
愛南が王真を避ける理由はモブ女だと断定
意識しすぎている愛南を飛月がどうにかすることに決まる
ハーレム作り16日目。
その日はいつもよりも早く家を出て、学校へ向かっていた。
飛月が言うには『水無瀬の件、朝のうちに片づけておきたいので』と言うことで早めに学校へ行き水無瀬が登校してくるところを校門で待ち受けるらしい。
それを登校中に聞いて(飛月が水無瀬に何かするだけなら俺が一緒に朝早く登校する必要ないだろ?)と理不尽にも早く起こされ眠い目をこすりそんなことを思いながらも歩き、目的だった校門で飛月と別れて、自分のクラスに向う、当然のことだが教室には俺だけだったので何とも言えない孤独感と言うか特別感を感じながらも襲ってくる睡魔には勝てず、誰もいない教室で1人顔を机に伏して目を閉じた
思いのほか気持ちよく眠れてしまったからか、目を開けるのが少し億劫だと思っていると左の肩を誰かにつつかれる。
どうせ作戦を終えた飛月だろう、この教室でこんなことをする奴は飛月か日和ぐらいで最近の日和との距離間を思えば飛月しかいない、そう思いながらもゆっくりと起き上がり振り向くと、そこに居たのは水無瀬だった。
少し前、具体的に言うなら昨日までは考えられなかった行動に俺は目を擦りながらもう1度水無瀬の姿を確認するが、それは間違いなく水無瀬だった。
「おはようございます、雉君」
「お、おはよう」
水無瀬のキャラが植物園で会ったときのキャラに戻っているので飛月の奴が上手くやったのだとようやく理解する。
「その、最近雉君を避けていたことを謝りたくて、ごめんなさい」
「い、いや謝らなくても」
「さっき、妹さんの雉さんから言われたの『にに様はあなたのことなんてなんとも思ってないんだから、勘違いしないでよねっ』って、それでわたしの勘違いのせいで雉君に嫌な思いさせたのかなって……」
よりにもよってなんでツンデレ妹キャラなんだよ……まぁ、そこはいいか、とりあえず飛月の作戦は上手くいったようだな。
「これからはいつも通りに接してくれるんだろ? だったら気にしなくていいって」
「ありがとう、雉君――えっと、雉さんからもう1つ言われたことがあってね、『雉って苗字で呼ばれると紛らわしいので、これからはにに様のことを下の名前で呼んでください』って言われているんだけど、……いいかな?」
あいつ、ものの数秒でツンデレ設定忘れていつも通りの口調に戻ってやがる。それでも、名前で呼び合うって言う作戦自体は仲を深めるのにはいい作戦だよな。
「勿論いいけど、その代わり俺も水無瀬のこと下の名前で呼んでいいか?」
「うん、勿論いいよ。それじゃあ王真君これからもよろしくね」
「ああ、仲良くしような、愛南」
そんなやり取りを終えて愛南は自分の席に向かって行った。
それにしてもテンパっていたときの愛南と今の愛南じゃまるで別人だな。纏っている雰囲気とは裏腹に話やすいし、これなら好感度上げも難しくないかもな。
そんなことを思っていると、誰かからの視線を感じその方向を見てみると、日和が少し頬を膨らませながら不満そうな顔でこっちを見ていた。
日和にも挨拶しようかと思い手を上げて声をかけようとするがフイッと顔をそらされてしまったので、声をかけられず上げてしまった手を下ろすと後ろから声をかけられる。
「なにをしているのですか?」
「飛月か、いや、別に。それより愛南のほうは上手くやったみたいだな」
「まぁ、私にかかれば楽勝です。それより早速下の名前で呼び合うようにしたのですね」
「ん? なんか意外そうな顔だな、下の名前で呼び合うように仕向けたのはお前だろ?」
「たしかに私の案ではあるのですが、こんなに早くだとは思っていませんでしたので……、どうやら水無瀬のにに様に対する好感度は良いようですので今回の攻略は簡単そうですね」
そう言われた瞬間、何故かさっきの日和の視線を思い出す。
一応飛月に聞いておこうかと思ったんだが、ちょうどホームルーム開始のチャイムが鳴り、先生が教室に入って来たので飛月は自分の席に座ってしまう。
「(まぁ、後でいいか)」
当然、こんなフラグらしいことを言っておいて、後でいい訳がなかったんだが、それを知るのはその日の放課後だった。
下校を終えアパートに着いてリビングに入ったところで、飛月に何気なく最近の日和の様子について話すと、飛月の表情が引きつったような顔に変わる。
「……にに様、なんでそれを早く言わないんですか」
「なにか、まずかったのか?」
「本当にトリプルDですね、大空の好感度メーターを見ればわかりますよ」
呆れた顔の飛月は好感度メーターを俺に見せてくる。
日和の俺に対する好感度は1週間ほど前に見たのが最後だったが、そのときの数値よりも明らかに下がっていて今や友達のラインすらギリギリになっていた。
「おい、日和の好感度がかなり下がってるぞ!?」
「知ってますよ、はぁ、恐れていた自体が起きてしまいましたか」
飛月はため息交じりにそう言いながらやれやれと言った様子で自分の額に手を添える。
「その口ぶりだとなにか心当たりがあるのか?」
「この状況で心当たりがないのはこの地球上でおそらくにに様だけですよ」
呆れられているような、小馬鹿にされているような調子でそう言われたんだが、勿論日和に嫌われるような事をした覚えなんて全くないので心当たりなんてあるはずもなく、首を傾げる。
「嫉妬ですよ、嫉妬。それくらいわからないんですか?」
いつもの平坦な口調よりわずかに苛立ちを見せる飛月にそう言われ、日和の好感度が下がっている原因は嫉妬だとわかったが、日和が何に嫉妬しているのかがわからない。
「それって、日和が俺に嫉妬してるってことだよな。でも何に嫉妬してるんだ?」
「にに様が大空に構わずに水無瀬と仲良くしていたから嫉妬したんですよ」
「それで嫉妬なんかするのか? つうか日和と関わるなって言ったのはお前だろうが」
「それは……だって」
「だって、なんだよ?」
「――恋人を作りに来たわけではなく、にに様はハーレムを作りに来たのですよ。それに1人の女と仲良くなり過ぎればその女に夢中になってハーレム作りに支障をきたす恐れがあったので、そう言っただけです」
「まぁ、それは一理あるかもしれないけど――」
「今は過ぎたことを言っても仕方ありません。できれば避けたかったのですが、ここからは本格的なハーレムルート、つまり同時攻略です。水無瀬を攻略しつつ大空の好感度を上げ直すことがこれからの課題になります」
「はぁ!? 1人でもあんなに大変だったのに同時攻略なんてできるわけないだろ!」
「トリプルDのにに様にそんな器用なことが出来ないことくらい私だって知っています。だから避けたかったのですが、こうなってしまってはそれしかありません」
「順番じゃダメなのか? 一旦日和の好感度を上げ直して次は愛南に戻るみたいな」
「それでは結局のところ水無瀬の攻略を終える前に大空の好感度がまた下がりますのでイタチごっこになってしまいます」
「それじゃあ、日和の攻略を最初からやり直しってことか」
そう考えると心が折れそうになる。日和を攻略するのにかかった日数は約10日。それだけの時間が無駄になったと言われればさすがに落胆してしまう。
「そうなりますが、大空と1度は友達以上恋人未満の関係まで好感度を上げていますから、そこまで戻すのであればそれほど大変ではないはずです。今回は再攻略と言うよりは仲直りと言ったほうがいいですから」
「それじゃあ、前の攻略みたいに10日ぐらいかかることは――」
「ないですね。まだ好感度も下がりきってないですし、これなら休日デートの1回で好感度を戻せると思います」
「それは助かるが、休日って明日だぞ。日和との連絡手段も無いし、次の登校日に誘ったとしても次の休みまではどうするんだ?」
「……制服デートしかないですね」
「随分な、したり顔だが制服デートとやらはそんなに好感度上げに有効なのか?」
「それはもう、ギャルゲーやラブコメなら定番中の定番です。制服を着られる間しか出来ないのですから特別感が段違いです」
一見わかり辛いかもしれないが、何故か飛月のテンションが上がっている。アニメとかを飛月ほど熱心に見ていなかった俺からすればその制服デートとやらがどれだけ好感度上げに役立つのかわからないので、飛月のテンションに全くついていけない。
そもそも魔界に制服なんてなかったし。
「とりあえずは登校日当日にデートへ誘い、その日の放課後に制服デートを決めるしかないですね。基本線は学校にいる間は水無瀬の攻略を重視しながらも最低限大空に気を回して好感度をこれ以上下げないようにして、放課後の制服デートによって好感度を回復すると言う形に持っていくしかないですね」
「なんて言うか普通と言うか、芸のない作戦だな」
「文句があるのなら他の作戦を提示してください」
そう言われてもすぐに思いつくはずもなく、飛月の作戦に従う他なかった。
「わかったよ、出来るかわからないけど、やるだけやるよ」
そう結論が出てしまい。これから始まるであろう大変な日常を想像してしまうと億劫になってしまう。
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