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鈍感は罪

前回までのあらすじ

飛月の弁当を食べている途中

食堂に行く愛南を発見し追尾

一緒に昼食を取ることになった


 残りの昼食の間は水無瀬とほとんど喋らずに食事を続け、水無瀬のほうが先に食べ終わり、俺に何故か一礼すると後片づけをして食堂から出て行った。

 その後、俺も食べ終わり、片づけをしているとテーブルに額を乗せて微動だにしない飛月の姿が目に入る。

 何をやっているんだと思いながら俺は食器を片づけ、飛月に近寄って声をかける。

「お前、なにしてんだ?」

「にに様ですか、私はもう、食べられません」

 目の前の料理に視線を移せば、ほとんどの料理が少量程度しか食べられていない。

「ったく、お前小食のくせにこんなに頼むから食べきれないんだろ」

 飛月はこの体格(主に身長)のくせにかなり食が細い、本人曰く『本当は1日食パン1枚で十分』らしい、それでもなんとか3度食事をとっているのは人間らしく振る舞うためと言うのもあるが、なんでもそれぐらい食べないと体重がどんどん減ってくから少し無理して食べているとか。

「(肉体は人間の体だからあっちに居た時とは色々違うからな、こいつなりに食事面は苦労してるんだろう)それでなんでこんな無茶な注文したんだ?」

「今後、作る料理の参考にしようと思いまして」

 無謀に思われるほどの量を注文した理由を苦しそうにお腹を押さえながら答える。

「料理に興味を持って勉強熱心なのはいいけど、だからって、1度にこんな量を注文するなよな? お前って頭良い癖にこういうところ抜けてるよな」

「抜けてなんて、いません、今から全部食べれば、問題ありません」

「あと何時間かけるつもりだよ、もうすぐ昼休み終わるっての」

 俺はそう言って飛月の隣の席に座り箸を手に取り、皿を手に取ろうとする。

「なにをするつもりですか?」

「なにって、このまま残すわけにはいかないだろ、だから俺が残りを食ってやるよ」

「それは、駄目です、私(使い魔)の残飯を食べてもらうなど、許されません」

 こういう無駄なところで主従関係を守ろうとするのが飛月らしいと言えば飛月らしい。

 こいつの中には一応、主従関係のボーダーラインのようなものがあるようで、そのラインを超えるとこういう風に普通の使い魔らしいことを言ってくる(まぁ、こいつのボーダーラインの基準が良くわからないんだが)。

「今は俺とお前は兄妹だ。妹の残した物は兄が責任を持って食べるただそれだけだろ、大体そんなこと言うんなら今後こんな馬鹿みたいなことするなよ」

「……はい」

「なんだよ、珍しく随分素直だな、お前が素直だと調子狂うんだが」

「ただ単に、お腹が苦しかったので、適当に返事しただけです」

「そうかよ」

 少しは反省しているのかと思ったがそういう訳でもないらしい、こいつの場合は俺に怒られても基本的に反省なんてしないんだけど。

 なんとか昼休み中に全部食べ終え、かなりの満腹感に襲われながらも俺は食べ過ぎでダウンしている飛月を担いで保健室のベッドに寝かせてから教室へ戻り、最後の授業を終えるとまだ寝てるであろう飛月の様子を見に保健室へ向かった。

 放課後だと言うのに保険医の姿はなかったが、飛月容体を聞くわけでもないし、いなくても問題ないかと思い飛月が寝ているベッドに近づく。

 寝息を立てながら気持ちよさそうに目を閉じている姿は見慣れてないせいか綺麗に思える。

「こいつ、黙ってれば普通に綺麗なんだよな」

 しみじみとそんなセリフを口に出すと飛月は俺から顔をそむけるようにあちらへ体を向けるように寝返りをうつ。

「なに気持ちの悪いことを言っているのですか?」

 いつも通りの平坦な口調が飛月から聞こえた、向こうを向いているから口元が確認できないが飛月の声に間違いない。

「なんだ、お前起きてたのか? なんで寝たふりなんか?」

「寝たふりをすれば油断して私の悪口でも言うかと思いやってみたのですが、予想通りでしたね」

「俺は悪口なんて言ったつもりはないんだが?」

「『黙ってれば』なんて普段の私が綺麗じゃないって言っているようなものだと思いますけど?」

「実際そうだろ?」

 飛月はこちらへ寝返りをうち、毛布を目元まで被ると抗議するようにジト目で睨んでくる。

「仕方ないだろ、寝てたお前は魔族って言うより天使みたいだったからそう思っただけで」

「にに様の目は節穴ですか? 全く、私の顔が天使程度に見えたなんて屈辱以外のなに物でもありません。心外です、謝ってください」

「はいはい、わかったよ。謝ればいいんだろ、それでなんて謝ればいいんだ?」

「そうですね『ツァイルがこの世で1番可愛い』って言ってください」

「お前、それ自分で言ってて恥ずかしくないのか?」

「――なにか言いましたか?」

 飛月の眼光が一段と厳しくなったので、『そもそもそれは謝罪なのか』なんてことも言えずにここは言われた通りにするしかない。

「わかったよ、言えばいいんだろ……、ツァイルがこの世で1番可愛い」

 言っておいてなんだが、もう少し照れくさいかと思ったけど特に何も感じないどころか何か大事な物を失っているような気さえする。

 冷静になって見ると俺らの本当の関係を知っている奴らがみたらそれこそ威厳もクソもない光景だよな。

「……全く、使い魔を口説くなんて本当に気持ちの悪い主ですね、あー、もういいですよ。あまりにも惨めなので今回は許してあげます」

 せっかく言いたくも無い事を言ったというのにそれに喜ぶどころかそんな悪態をついてベッドから起き上がろうとする。

 まぁ、こいつはむしろ悪態をつきたいがためにこう言うことを言わせたって意味合いが強いんだろう、俺に可愛いって言ってもらいたかったわけじゃなく、そんなことを使い魔に言っている惨めな時期魔王に悪態をつきたかっただけなんだから。

「(相変わらず可愛くない奴)もう具合はいいのか?」

「今ので元気が出たのでもう大丈夫です」

「ったく、主を罵って元気が出る使い魔なんて聞いたことねえよ」

「――そんな使い魔なんていませんよ」

「まぁ、そりゃあ、お前ぐらいだろうよ」

 飛月がボソッと呟いた言葉にそう答えると、飛月の眉がわずかに動いたような気がしたが、それ以外はいつも通りの平坦な口調と不愛想な顔、外していた眼鏡をかけて立ち上がる。

「これ以上ここに留まる理由もありませんし早く帰りましょう」

 その言葉に賛同し俺と飛月はアパートへと帰り、夕食を終えて今後のハーレム作戦についての会議をこれからリビングで始めるんだが、最初に聞いておかなければならないことがあった。

「たしかお前、俺に対する水無瀬の態度が急におかしくなった原因がわかったとか食堂で言ってたよな、それでその原因ってのは一体なんなんだ?」」

「原因はあのモブ女ですよ」

「モブ女って水無瀬の友達のことか?」

「おそらくですが水無瀬の隣にいたあのパッとしない女子生徒が水無瀬に余計なことを吹き込んでいるのでしょう」

「余計なことってなんだよ」

「トリプルDのにに様ではわからないかもしれませんが、普通あれくらいの年代の女子は色恋沙汰に過敏に反応します。放課後手紙で呼び出されて2人っきりで話すなんてイベントがあればよほど鈍感な女子でもない限り『こいつわたしに気があるな』と思うわけです」

「それじゃあ、水無瀬は俺のことを意識しすぎておかしくなってるってことか? でも植物園で話したときはそんな感じはなかったぞ」

「そうです、どうやら水無瀬自身はよほど鈍かったのか、男子に放課後呼び出されても緊張の類は全くありませんでした。つまりあの時点ではまだにに様のことを意識していないと言うことです、なのでにに様と別れたあとに何かがあったと考えられます。下駄箱で一緒にいたあのモブ女と水無瀬は部活が同じなので、その部活中もしくは下校中に余計なこと……具体的には『それって絶対に愛南のことが好きなんだって』とか『付き合ったらどうする? キスとかするの?』とかそんな女子トークを吹き込んだに違いありません」

 なるほど、そこまで言われたらどんなに鈍くてもあれだけ意識するのも無理ないのか。

「でもよくわかったな、そのモブ女が原因だって」

「あの女の顔は友達の恋愛を面白おかしく見守っている奴の顔でしたから」

 それがどんな顔なのかはわからないが、何故か飛月は確信を持っているようだし、ここはとりあえず飛月の話を信じるとするか。

「原因はわかったが、結局のところ今のままじゃ水無瀬とまともに話せないんだし明日からどうするんだ?」

「そうですね、正直言って意識してもらうほうが好感度的には上がりやすかったりもするのですが、今の水無瀬だと意識しすぎているようだったのでこのままだと話す機会すらまともに巡ってこないでしょうね……まぁ、とりあえずにに様にできることは何もなさそうなので、明日は私に任せてください。なんとか水無瀬をテンパリピュア少女から元の和美人系お嬢様キャラに戻しますので」

 何をどうするのか全く見当もつかなかったが、あまりに自信満々な様子だったので、ろくなことしないだろうなと思いつつも明日はとりあえず飛月に任せることにした。


ここまで読んで頂きありがとうございます

高評価、ブクマ登録などして頂けると頑張れますので

応援のほどよろしくお願いいたします。

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