日和END?
前回までのあらすじ
飛月にボコボコにされた王真
待たせている日和と公園で合流
またイジメられたら助けてやると約束
日和を送り届けて帰路につく
ハーレム作り11日目。
クラスに入る扉の前で一瞬躊躇してしまう。
昨日、釘は指したがあの糞女子共が日和になにか復讐をする可能性があったからだ。
それにもし、昨日の戦闘を鮮明に思い出してしまい。俺が魔族である事に気づいているかもしれない。
だが、そんな心配は杞憂に終わった。
クラスに入ってみればいつもと雰囲気は変わらない。唯一変わっているのはあいつらが日和を恐れているかのように距離を取っているくらいだ。
それでも一応は警戒していたんだが、特になにもないどころか、あいつらは日和に近づくこともせずに、平和のまま放課後を迎える。
取り繕われた友情関係は破綻しているようで、それに関して俺はよかったと思っているけど、日和がどう思っているのかはわからない。
あいつらと関わらないほうが日和のためだと俺が勝手に思っているだけで、日和が関わりを持ち続けたかったと言うのなら、余計なことをした可能性だってある。
それくらい日和に直接聞けばいいんだろうが、もし俺と同じ考えだったとしても恩着せがましい気もするし、気恥ずかしい。
次期魔王の俺が言うことじゃないが、こういうのは本人が気づかない内に助けているというのが、本当のヒーローなんだろう。
うんうん、こういう男にきっと女子は惚れるはずだ(多分)決して休日デートをした結果、急激に仲良くなったせいで今まで通り話すのが、気恥ずかしいとかそんな理由ではない。意識しているとか、そんなんじゃない。なにせ俺は次期魔王、この程度のことでドキドキするほどピュアではない。女子とも手を繋げたし、日和を意識なんてするわけないんだからねっ!
「なんでツンデレなのですか? すごく気持ち悪いですよ」
授業をすべて終え、下駄箱の前で考え事をしていた俺の後方から、飛月の平坦で容赦のないセリフが聞こえてきた。
「頭の中を見るんじゃねえって言ってんだろうが! つうかエスパーかよ」
「エスパーじゃありませんよ、私はどちらかと言えばフェアリータイプです」
「(なんの話だ!?)」
「それより、こんなところで突っ立ってないで早く帰って、次の作戦会議を始めたほうがいいと思うのですが」
「それもそうだな」
日和とは仲良くなって好感度は上がったが、ハーレムに加入したとみなされる値に届いてはないらしく、引き続き攻略をしなければならない。しなければならないなんて言ってはいるが、それはツンデレ的な意味合いで、日和と仲良くすることは俺にとって望むところだから、実は嬉しかったりもする。
俺と飛月は靴を履き変えて校門前まで歩くと、飛月がなにか思い出したように話し出す。
「あっ、そう言えば言い忘れていましたが、大空からにに様への言伝を頼まれていました」
どこかわざとらしいような口調でそう言った飛月は、俺に日和からの言伝の内容を話した。
「指定された場所ってここだよな」
飛月の奴が一緒には行かないって言うから、俺は1人でそう呟きながら日和の言伝通りに指定された場所へ来ていた。
指定された場所と言うのは日和がよく茶道部の部室へ行くために通っていた校舎裏だ。
ここは俺にとっても馴染みのある場所だった。地面に跡なんてほとんど残ってはいないけど、たしかこの辺りに落ちたんだったな。数日しか経ってないのに懐かしいような感じがする。
「たしかこの上から飛び降り――」
そう独り言を呟きながらこの前飛び降りた3階の教室を見上げると、その3階の教室の窓枠を思いっきり踏み切る女子高生の姿が目に映った。
落下によってなびく綺麗な橙色の髪と、スカートの中から見えるスパッツが印象的なその女子高生をとっさの判断で受け止める。
勿論、重さが無いなんてことは無く、その女子にはそれなりの体重があるようで、かなりの衝撃が両腕にかかったんだが、避けるなんて選択肢は頭に出てこなかったので仕方がない。
少しだけ魔力を解放し、歯を食いしばってなんとか受け止めた結果、不可抗力ではあるが、所謂お姫様抱っこを俺なんかにされてしまっている少女の顔をしっかりと確認するために視線を落とす。
「ナイスキャッチ! 王真くん」
嫌な顔どころか、にこやかに笑いながら親指を立てそう言っているのは、お察しの通り日和だった。
「ナイスキャッチじゃねえよ、そのまま地面に落ちたらどうするんだ」
「落ちないよ、だって王真くんがキャッチしてくれるって信じてたし」
「ったく、それで俺をこんなところに呼び出してなんの用だ? まさか今のがやりたかっただけ、なんて言わないよな?」
「それもあるけど、ここに呼び出した1番の理由は王真くんにお礼を言うためだよ」
「お礼? なんのことだ?」
「昨日ウチに内緒で、ウチがもうイジメられないように色々してくれたんでしょ」
「なっ! なんでそれを」
「昨日、寮に帰ったあと、飛月さんが部屋に来て教えてくれた」
昨日ってことは、買い出しに行くとか言ったあのときか、あの抜け道を使えば寮生じゃなくても寮の中へ入れるし、たとえ見つかっても女の飛月なら罰せられることもないか。
「(あいつ余計なことを)……もしかして、さっきの飛び降りも」
「飛月さんが王真くんはウチが空から降ってきたら、きっと喜ぶって言ってたから、お礼も兼ねて飛び降りてみた」
「(やっぱあいつが元凶か)ったく、無茶しやがって、いいか、もうこんなバカみたいなことするなよ」
「あっはは、バカみたいって、2回も落ちてきた王真くんにだけは言われたくないよ」
そこを突かれると痛いが、ここで引くと日和が誤解して何度も飛び降りてくる可能性があるからな、ちゃんと釘を刺しておかないと。
「とにかく危ないからもう止めとけよ、日和だって女子なんだから落ちて怪我なんてしたくないだろ」
「……王真くんはさ、男の子みたいに泥だらけになりながら走り回ったりする女子とか嫌い?」
突然どうしてそんなことを聞くのかわからなかったが、日和の表情がどこか真剣だったから、とりあえず自分の考えを正直に話すことにした。
「それがその子のやりたいことで、その子の魅力になってるなら嫌いってわけじゃない。ただ、自分から怪我をしにいくような危険なことをする奴は嫌いだ。心配になるからな」
「そっか、それじゃあもう飛び降りはしない、約束する」
よくわからないが納得してくれたようなので、ホッとしていると日和は続ける。
「やっぱり王真くんは他の人と違うね。初めてだよ、そんな風に言ってくれた人は」
「(まぁ、人じゃないからな)それって、俺が変わり者ってことか?」
「うん! 王真くんが変わり者でホントよかった」
馬鹿にされているのか、褒められているのか、言葉だけじゃわからなかったが、穏やかそうな表情を見ても飛月の言葉のような悪意を感じなかったので、きっといい意味で言われているのだろうと思うことにする。
そろそろ、日和を下ろしたほうがいいのだろうか、なんて考えていると鎖骨辺りに日和の額がコツンっと当たり、急にどうしたのかと思い驚いて声をかけようとしたんだが、先に日和の口が開く。
「【王真】ありがと」
今まで活発な声とは違い優しく柔らかな声が可愛すぎたのと、急な呼び捨てに俺の緊張度はマックスを超えてしまい、咄嗟に手を離してしまったせいで日和が尻餅をついてしまう。
「わ、悪い! 大丈夫か!?」
焦ってそう声をかけると日和はいつものように明るく活発な声で笑ってくれた。
それにつられて俺も笑ってしまい、2人して笑い合った。
そのあと日和と学校で別れ、アパートに帰ってきた俺はソファに座っている飛月の隣に座り、今日のことを問いただす。
「日和に余計なことを吹き込んだみたいだな?」
「……にに様のことですから隠していたほうがヒーローみたいでカッコイイとか、そんな次期魔王らしからぬことを考えていたのかもしれませんが、ああでもしないと、好感度メーターの目標数値に届きませんでしたから」
「だからって、『助けてやったぞ、感謝しろ』みたいな感じで恩着せがましいのは好きじゃないんだよ」
「にに様の趣味や主義なんて関係ありません、私たちはハーレムを作りに来ているのですから、女を落とすためなら手段を選ばないのが我々サイドとしては普通だと思いますが?」
「手段を選ばないか、お前って次期魔王よりも次期魔王らしいよな」
「なんでしたら、後継者の座を譲ってくれてもいいのですよ。そのときはにに様を私専属の使い魔として召し抱えてあげますので」
「お前の使い魔なんてどんな理不尽な命令をされるか、わかったもんじゃないから絶対にお断りだ。まぁ、そんなことよりもさっきの口ぶりからして日和の好感度は目標数値を超えたってことだな」
「ええ、現在は友達以上恋人未満のところまで上がっています。にに様は好意を向けられる本人なのですから、好感度メーターなんかに頼らなくてもわかるはずでは?」
「なに言ってんだよ、俺はお前と違ってエスパーじゃないんだ。他の奴の気持ちなんてわかるわけないだろ」
いつもの飛月の冗談に付き合って軽い感じでそう返したんだが、なぜか飛月の視線が冷たく痛い気がした。
「あれ? 飛月どうかしたか?」
「まぁ、そうでしょうね、知っていましたけど……はぁ~、にに様はトリプルDのまま一生を終えるのかもしれませんね。いえ、そうなればいいのに」
何故か最後に深い深いため息を吐いた飛月に呆れられてしまったようだが、1人目、大空 日和を攻略することに成功したのだった。
ここまで読んで頂きありがとうございます
一応日和編はこれで一区切りですが
また出てきますので引き続き応援よろしくお願いします
高評価、ブクマ登録、拡散などして頂けると頑張れますので
応援のほどよろしくお願いいたします。




