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長い長いデートの終わり

前回までのあらすじ

どうせ治療するからと言う理由で

女たちを更にボコボコにする飛月

治療し目を覚まさせ逆らわない事

日和への謝罪を条件に解放

バランスを崩した飛月を抱きかかえるが

胸のことを言ってしまいボコボコにされる王真


「ふぅ、まぁいいでしょう。疲れているのは本当ですし、これ以上無駄な体力を使いたくありませんのでこのくらいで勘弁してあげましょう」

「(そう言うセリフは軽く1発だけ殴った奴が使うセリフだ)」

「これから大空のところへ行くのでしょう? ちゃんと気を遣って顔は止めておいたのですから感謝してください。それとこれを」

 横暴過ぎる言いぶんに反論しようとしたところ、飛月からペットボトルに入ったスポーツドリンクを2本投げ渡される。

「私は疲れたので少しここで休んでから戻りますので、さっさとそれを持って大空のところに行ってください、さすがに1時間待たせるのはどうかと思います」

「寮まで送り届けたんじゃなかったのか?」

「ああでも言わなければあの場面で聞く耳を持ったとでも? 嘘も方便ってやつです」

「(本当にこいつには敵わないな)ありがとな」

「どういたしまして」

 互いに顔を合わせることなくそう言って、俺は廃ビルを後にして日和が待っている公園へと向かった。

 時間にして約1時間もかかってしまったが、日和はまだベンチにいてくれた。

「あっ! 王真くんどこまで行ってたの!? すっっっごく心配したんだから!」

 俺の姿を見つけるなり犬のように駆けよって来たかと思えば、心配していたのが伝わって来るような表情で怒られてしまう。

「ごめん、ごめん」

「ごめんじゃないよ! もう、何回も探しに行こうかって迷って、迷って、でも、探しに行ってすれ違いになったらって思って、もう少し遅かったら探しに行くところだったよ」

「いや、実はこの辺の土地勘無くてちょっと迷ってさ、それで遅くなったんだよ」

「それなら、よかったけど。何か事故とかに巻き込まれたんじゃないかって、本当に心配したんだから!」

 こんなに心配したって怒られたことがない俺にとってはかなり新鮮で、正直なんて顔をすればいいのかわからない、親にも飛月にもこんな顔をされて怒られたことが無いので、ここまで心配してくれる何て嬉しいような気恥ずかしいような気分だが、悪い気はしない。

「悪かったって、それより、ほい、スポーツドリンク、泣いてたから水分補給が必要だろ?」

「なっ、泣いてない!」

「目を腫らして言っても説得力皆無だけどな」

「うぅぅ、だ、誰にも言わないでよ!」

「わかってるって、ほら、もう日も暮れたし、そろそろ帰ろうか」

 茶化すように話題を変えた俺は手を差し出すが、日和はベンチに座ったまま俺の手を取ろうとしない。

「ごめん、まだ……」

「まだ疲れてるのか?」

「ううん、そうじゃなくて、また明日から学校かと思うと足に力入んなくて……、それにきっと王真くんにも迷惑かかるかもしれないし、ホント、ウチのせいでごめん」

 そうか、日和は学校が始まれば今日のことがきっかけで、また中学のときみたいにイジメられて、俺にも害が及ぶって思っているのか。

「今日、ホント楽しくて、浮かれちゃって、いつもならもっと警戒してるのに、ウチがいつも通り気をつけてれば王真くんを巻き込まずに――」

「そんな心配はいらない、日和は絶対にイジメられないし、勿論俺にも害は及ばない、それは俺が保証する」

「え、なんで?」

「とにかく大丈夫だ。もし、日和がなにかされそうになっても俺が守ってやる、だから俺を信じろ」

 日和は俺の顔を少し見つめた後『うん』頷いて俺の手を取った。

「あのときとは立場が逆になっちゃたね」

「あのとき?」

「覚えてない? 最初に王真くんと話したとき、王真くん地面に倒れてたでしょ」

「ああ、あのときは俺が手を貸してもらってたな」

「なんかいいよね、こういう助け合いみたいな感じ、友達――みたいで」

 はにかんだようにニコッと笑った日和は俺の手を引いて立ち上がる。

 俺たちは色々あって疲れ切った体を引きずりながらも家路を急ぎ、日和を寮の近くまで送って別れた。

 俺のほうを振り向き『じゃあね~、また明日~』と言いながら手を振る日和を見送りアパートへと帰る。

「どうかしましたか?」

 日和と別れ、1分もしないうち飛月が現れて隣を歩きながらそう声をかけてくる。

「なんのことだ?」

「さっきから上の空と言うか、なにか考え事でもしていたのですか?」

「いや、大したことじゃねえよ。ただ『友達』って響きがなんとなく新鮮でな、ほら、俺って魔界にいるときは友達なんてほとんどいなかったから」

「本当にどうでもいいことを考えていたのですね」

「自分で言うのはいいが、お前に言われるとムカツクな」

「だいたい『ほとんど』なんて見栄を張らないでください。私の知る限りフェル・カーモント様に友達なんていなかったと思いますけど」

「(こいつホント容赦ないな)俺だって友達くらい居たっての」

「そうなのですか? 初耳です。どうでもいいですけど一応礼儀として聞いてあげますが、あのフェル・カーモントと友達になるような物好きは、どこの誰なのですか?」

「いや、その……お、お前とか」

 少し照れくさいが、飛月いや、ツァイルのことは使い魔って言うよりは悪友みたいな感じでいつも接してきたし、きっとツァイルも俺のことを……。

「なにを言っているのですか、勝手に友達扱いしないでください、迷惑です」

 今ほど前言撤回したいと思ったことはない。

 照れる様子もなくいつも通りの平坦な口調でわずかに顔を歪ませ、本当に迷惑そうだ。

「私はあくまでフェル様の使い魔ですので、それ以上でもなければそれ以下でもありません。だいたい使い魔を友達にカウントするなんて、バレンタインデーに家族から貰ったチョコをカウントに入れる並の恥ずかしさですね」

 その例えはイマイチ伝わってこないが、馬鹿にされていることくらいはわかる。

「だったら、今から俺の友達になれ」

「はい?」

「こっちにいる間、俺はフェル・カーモントじゃなくて雉 王真だからな、雉 王真の友達になるのなら別に良いだろ?」

 勢いで言ってしまったが、どうせこいつのことだ『使い魔に友達になるように命じるなんて気持ち悪いですね、そのうち一緒に寝ろとか言い出すつもりですか、本当に気持ち悪いです』とかなんとか言うに決まっている。

 ツァイルの返事が返ってくる前にそんな想像が安易にできてしまい、若干の後悔をしていると、一瞬の間をあけて言葉が返ってきた。

「――友達なんて誰にでもなれるようなものになんてなりません、だって私は……にに様の妹なのですから」

「そう言われればそうだな、お前は妹なんだよな、だったら妹が友達ってのは変だよな」

「そうですね、まぁ、妹が恋人よりはマシですけど」

「ん? そりゃあそうだろうけど、なんで――」

「あっ、私としたことが今日の夕飯の買い出しを忘れていました。にに様は先に帰っていてください、私は買い物を終えてから帰りますので」

 飛月はそう言うと、華麗に反転して進行方向を変えて、そそくさとスーパーに向かって行ってしまった。

 なにか焦っているように見えたんだが、スーパーのタイムセールでもあったのかと思いながら俺はアパートに戻った。



ここまで読んで頂きありがとうございます

凡ミスで1日に2本と言う変則になってしまいましたが

引き続き読んで頂けると嬉しいので

これからもよろしくお願いいたします

高評価、ブクマ登録などして頂けると頑張れますので

応援のほどよろしくお願いいたします。

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