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 第七章 『消照闇子』

 『暗所から暗所へ距離や遮蔽物を無視してテレポートを行って歌声を届けに行ったり、闇を意のままに操って人を包み込んだりして傷付いた人々を癒すことができる。 その能力ゆえに機構と敵対する要注意団体に誘拐され暗殺者として育て上げられたという過去を持っており、時折見せる昏い人格はこうした経緯から形成されたものだとされています』


 恥っず!

 いや、恥っず!

 様々な人気番組を担当する有名女性ナレーターが熟練の緩急つけた声色でヴァーチャルアイドルとしての私の設定を語っている。

 恥っず!

 『消照闇子』は上述の設定を持つヴァーチャルアイドルである。

 極めて異学的な世界観とダウナー系の装い、そしてテクノとバラッドを融合させた音楽。

 自分がその中核を担っているという事実は、今でも時々信じられなくなるほどの素晴らしい幸福である。 

 しかしながら、この中二病的と評されることの多い設定は客観的に評されると結構きついものがある。 

 

 『それでは、闇子さん。 今回の意気込みを、どうぞお聞かせください』


 「えーと、めんどくさいけど、頑張ります」


 取り敢えずキャラ設定に沿うことを選択。

 消照闇子は本心は他人の幸せを何よりも祈っている心優しい少女だが、とても面倒くさがりで人見知りなのだ。


 「おっと、そりゃないでしょー! これでもスタッフさん、頑張ってるんだからね!」


 「あ、あっじゃすみません!」


 あたふたしてみる。

 これが『他人の幸せを願う』部分の表現である。


 「ちょっとちょっと、こんなん僕が女の子いじめてるみたいになってるじゃないですか」


 一笑い起きる。

 完全に内容じゃなくて雰囲気で笑わせている。

 真似できないスキルだ。


 「という事で次、え~、と、この名前ってどこまでを指してるの?」


 八組のメインゲストのうち、声真似名人、ロックバンド、想一君、そして私が紹介され、次は最近メキメキと知名度を上げているボカロPの晩になった。


 「グループの名前ですね。 一応赤いやつはモナ、黄色いやつはイズ、そして私はユカっていいまーす」 我々個人勢が座る雛段の右隣の大型モニター上で3Dモデルの女の子が手を振った。 「成程ね。 じゃあ、VTRお願いしまーす」


 物悲しいピアノソロが流れ始める。

 夕暮れを思わせるフレーズが二回繰り返され、そして溶け消えたピアノを電子音主体のどことなくオリエンタルなメロディが流れ始め、同時に初音ミク(でいいのだろうか? こういうのには詳しくない)が歌い始めた。

 テレビ画面には手術台とテスラコイルのイラストとともに歌詞が流れている。

 その画面右上に小さく『drミンチに会いましょう 天帝ver.』とある。

 画面が転換し、同じ画風で眠っている女の子のイラストが挿入されたと同時に音量が降下し、ナレーターの声が挿入された。

 『天帝のはしたなきPの歴史は、ゲーム音楽のアレンジから始まりました』


 という事は今流れてるこれもそうなのか。

 確かめる前に曲は中断され、別の曲に移った。

 今度のは知ってる。

 カービィの『グルメレース』だ。

 ただし原形をとどめているのはメロディだけで、主旋律は凄まじい存在感を放つハイテンポなバグパイプで担われ、厚みのあるピアノがその裏で特徴的なフレーズを繰り返している。

 今回も歌詞付き。

 どうもひと夏の初恋をうたった詩らしい。


 『彼女達は徐々に知名度を上げていき、ついにこの曲で再生回数500万回(ここで画面が若干ズームアウトし、画面内に入った『530万回視聴』が赤丸でハイライトされる)を超えました』


 彼女たちの経歴が語られる。

 音楽がMVごとフェードアウトし、小学生体型の桃髪と緑髪が肩を組んで笑っているイラストが代わりにフェードインしてくる。

 過去が語られるときによく使われるオルゴール調の音楽が極めてアンマッチである。


 『天帝のはしたなきPの初期メンバーである歌詞、MV担当の未踏々モナさんと作曲、収録担当の籠足ユカさんは、今から5年前に出会いました。 当時からそれぞれかなりのSNSフォロワー数を持っていた二人は互いに意気投合、『天帝のはしたなきP』を結成したのでした』


 画面が転換し、今度は色素の薄いイラストをバックにポップスが流れ始めた。

 

 『そして作り始めたオリジナル楽曲が大ヒット、その代表作が、この『殺恋事件』です』 さっきの曲と同じような形で再生回数がハイライトされる。 4300万回視聴。 『現在の総再生回数は約一億を超え、一層多くのファンを獲得しています』 

 画面にある人気俳優のインタビューが映る。


 『いろいろな音色を一つにまとめ上げてるんですよね、民族楽器とか、電子楽器とか。 そこがすごく面白いかなって』


 ふむ、どうやら彼もファンだったようだ。

 成程これも彼女らの人気を後押ししたことだろう。


 『そんな彼女らの活躍を後押しする転機が、つい最近訪れました』


 うきうきしたような声でナレーターがそう言うと、さっきのと同じタッチのイラストが映し出された。 

 空から落ちてくる黄髪の女の子をさっきの二人(今度は3Dモデルとほぼ同じ見た目だ)が受け止めようとしている。

 ……というか、『天空の城ラピュタ』でパズーが飛行石とともに落ちてくるシータを受け止めようとするあまりにも有名なシーンのパロディだ。


 『新メンバー、ヴォーカル担当の朝常イズさんの加入です。 これから彼女たちはどんな音楽を作っていくのでしょうか。 楽しみですね』


 司会者が彼女たちに感嘆のコメントをする。

 三人が異口同音に謙遜の声を上げた。


 「一億のうち4千万はゲームやった動画の奴ですから、私たちのすごさもその6割くらいですよ」


 そこまで謙遜しなくてもいいんじゃないのぉ~、と言ってコメントを締めた。

 紹介VTRは八組分ある上に、この後には人気トーク番組の名を関したも控えているので、一人一人長い時間は割けない。 

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