一、異世界への招待状①
「オメェ、今、俺らのことを見てたべな?」
「あぁ?」
学校からの帰り道、五十嵐大翔、十七歳は通学路の田んぼのあぜ道でたむろしていたガラの悪い不良たちに絡まれてしまった。大翔は因縁を付けてきた不良たち三名を睨み付ける。その目は鋭かったのだが、不良たち三人も負けずに大翔を睨み付けてくる。
一触即発の状況の中、
「お前みたいな田舎の農業高校のヤツに、デカイ顔をされてたまるかよ。あぁ?」
一人の不良がそう言って大翔へと詰め寄ってきた。大翔は、はぁ、とあからさまなため息を吐き出すと、
「田舎モンは、お前たちだって一緒だっぺな」
そう呆れたように呟いたのだが、
「なんだとっ? 俺たちは進学校に通っているんだ! 農業高校と一緒にすんじゃねぇよ!」
「進学校が、そんなに偉いのかよ……」
言い返してくる不良たちの言葉に、大翔はますます呆れかえってしまう。
この五十嵐大翔、確かに県内の農業高校二年生である。自分で色を抜いて、少しまだらになっている短い金髪がトレードマークとなっている。髪の根元の方はもう伸びてきていて少し黒い。
そんな大翔はこの金髪のせいなのか、近くの進学校に通っている、いわゆるヤンキーと呼ばれる人種に良く絡まれていた。ヤンキーたちは毎日、何かにつけて大翔にいちゃもんを付けては絡んできて、そのたびに返り討ちに遭っている。
そんな毎日を送っている大翔は生傷の絶えない生活ではあったが、去年一年間は無遅刻・無欠席で皆勤賞を取っている。外見の、特に頭こそ派手ではあるが、大翔は根が真面目なのだ。
今、因縁を付けてきているヤンキー三人組も、大翔は何度か返り討ちにしている過去がある。
「オメェたち、飽きないな。俺は正直、オメェたちの相手は飽き飽きしてきているぞ」
「んだと、こらぁっ! 黙って聞いてりゃ、いい気になってんじゃねーぞっ!」
一人のヤンキーが大翔へと殴りかかってきた。正面から来た拳を大翔はいつものようにひょいっと頭を倒すことでよける。
「このっ!」
よけられたヤンキーが振り向きざまに大翔を殴ろうとしたのだが、その行動さえも大翔は予想しており、身体ごとよける。勢いを殺せなかったヤンキーはそのまま田んぼの中へと落ちてしまった。
「オメェ! よくも!」
それを見ていた他の二人のヤンキーが殺気立ち、同時に大翔へと殴りかかってくる。大翔は右から来たヤンキーの拳をすっとよけると、手に持っていたスクールバッグをぐるっと回してヤンキーの後頭部を殴った。そのままの遠心力を殺すことなく、左側から殴りかかってきたヤンキーへスクールバッグを当てようとするのだが、それをヤンキーは危機一髪でよける。
田んぼのあぜ道で乱闘に発展したヤンキー三人と大翔を止める者はいなかった。しばらく殴り殴られを繰り返していた四人だったが、
ガッ!
「うっ……!」
大翔の後頭部に強烈な一撃が見舞われる。大翔は反射的に自身の後頭部を押さえ込んだのだが、
(は?)
突然襲われためまいに立っていることが叶わず、平衡感覚も失われてしまい、そのまま意識を手放すことになってしまうのだった。