雨霖鈴曲
中須賀とはよく話す
ほとんどあいつの恋愛相談だけど
どうやら夢のことが好きらしい
あの清楚で不思議な感じにそそられるとか
最近の男子は気持ち悪いなーと思いながらも
私もその最近の男子が好き
佐野は中須賀が好き中須賀が思ってる以上に好き
叶わない事くらいわかってる
私自身昔から男みたいだったから友だちも男ばっかで女友達なんかほんとに夢しか居ない
だけど女の子みたいに恋はする
女の子が通る道にちゃんと通る
中須賀もそれは理解してくれて
私の好きな人も知ってる。
そして今日、佐野は中須賀に振られた
その夜中須賀から電話がきた
何を話すかはもう知ってる
でも、今日はいつもと違うかった
「今から家来て」
と、はっきり中須賀は言った
どんな顔でどんな気持ちで言ったのかは知らない
だけど何かに耐えてるような声だった
私はなんで?とも何も言わずに
「わかった10分くらいで着く」
と言って電話を切った。
わずか12秒だけの通話履歴を見て静かに家を出た
エレベーターの中で中須賀から
ドア開いてるから入って右の扉開けて
とLINEが来ていた。
5階の503号室に中須賀と明朝体で書かれた名前のプレートをしっかり確認して扉を開ける
玄関は真っ暗でガランとしてる、靴も1足しかない
私は言われた通りに右のドアを開ける
すると手を引っ張られて壁に押さえつけられた。
「な、なかすか!なにす…」
私の口を抑えられて中須賀が薄暗い部屋で言った
「俺のセフレになって」
意味がわからなかった、なにがどーなったら
あんたとセフレになんてなるの
そう言おうとしたけど中須賀は真剣な目で言った
「俺はお前を夢と思ってする、だからお前も俺を佐野と思ってすればウィンウィンだろ」
高校生の性欲は異常だ
大人よりも真っ盛りだと思う、事実私もその1人
確かにウィンウィンの関係だとは思う
けどそんなのイヤだ佐野は佐野だし
中須賀を代わりにするなんて絶対無理
「離して!」
私は押さえられた手を振りほどく
今日佐野にやられたように。
「やっぱ無理だよな何言ってんだろ俺」
と言って中須賀はベッドに座った
「今日さ佐野に告られた」
「知ってる」
私は表情を変えずに言う。
「なら話が早いな(笑)けどその時思ったんだよ
あーこいつが夢ならなーってひでーやつだよな俺
あいつの気持ちなんも考えずにきもいとか言って」
何も言い返せなかった
自覚してるなら責めるつもりもなかった。
中須賀はまたこっちを見て言った
「なぁ花凛、ほんとにダメか?」
懲りない奴、そんなにしたいなら本当に夢とすればいいのに
「ダメに決まってんじゃん」
「なんか顔赤いけど」
「え!?嘘、なんで、んな事…」
あるわけない、あいつがそんな話するから。
「今まで聞き飽きるほど下ネタ話してたくせに
リアルになると照れんだな」
「うるさい、、」
バカ、私のバカあいつの言いなりになんて絶対ならない。
しばらく沈黙が続いた
いつの間にか中須賀は寝ていた
帰ろうとしたとき中須賀を見た
寝顔が佐野そっくりだった
一度だけ見たことある佐野の寝顔
隣の席だったとき私の方を向いて寝ていた佐野の寝顔にびっくりするほどそっくりだった。
私は触れてしまった
あの時触れなかった寝顔に。
どうしよう止められない
今の気持ちは触ってたいの一点張り
だけど触られたい、佐野に佐野に
「佐野!」
アドレナリンが出て思わず声を上げてしまった。
「あ、ごめん、起こしちゃった」
するとその時、
「やばいその声あいつそっくり」
寝起きの声でそう言った中須賀は私を押し返した
「ね、ねぇ私は…」
「俺は佐野ひなただ、お前は?」
覚悟を決めたような顔に変わった中須賀は
私の髪の毛を触る。
本当に佐野に触られてるのかと思うと
もっと、もっとと欲が出てしまう
そして遂に私は、
「…田口、、夢」
その晩私たちは好きな人を想いながら朝を迎えた
「おはよう」
中須賀はそっぽを向いてそう言った
そう、現実はただ単に中須賀とヤっただけ
中須賀なりの配慮なのかもしれない
「ちゃんと寝れた?」
私は中須賀の声があの時に聞いた寝起きの声じゃなかったから少し心配になった。
「よく眠れた、そっちは?」
ウソだ、だから私も嘘をついた
「よく眠れたよ」
時計を見ると6時10分だった
私は何も言わずに中須賀の家を出た
そのときの様子はあんまり覚えていない
正直、あんまり思い出したくない
これから中須賀とどう接すればいいか
中須賀はまたしたいと言ってくるのか
そんな事を考えながらドボドボ自転車を押しながら家に帰った。