圭輔と紗綾姉妹
9話まで読んで有難うございます。
楽しんでください。
急いで家に帰り、遅れていた昼ご飯を食べ、AVを見て自分の世界に入った。
「はっ、はっ、うっ」
「やっほー、けーい君」
「えっ?」
「えっ?」
その時、時は止まった。畳の上に何滴か飛んでしまった以外は。
二人とも猛烈に赤面した。
「あわわわわ」
沙也加は硬直した。
圭輔は急いで畳を拭いて、ズボンを履いて、手を洗いにいった。
数分後。沙也加は硬直が溶けた。
「もう、お嫁に行けない」
「全く、ノックぐらいしてくれ」
「う、うん。ゴメンなさい」
「で、用は何?」
「えっ?なんだっけ?」
「忘れたの!?」
「さっきの騒ぎで忘れちゃった」
「全く、見られ損だよ」
「まっ、減るもんじゃないし」
「沙也加ちゃんがそれ言うかな……」
「ちょっと待って、思い出すから」
「ったく」
暫く小説を読んで、待っていると、
「思い出した!」
「何?」
「圭君と絡みたかったんだ」
「ふーん」
「そんな連れないこと言うなよ」
「ふぅ。後片付け終わったわ」
紗綾が部屋に入って来た。
「紗綾じゃん」
「お疲れ」
「貴方が帰るのが遅かったから、こうなったのよ」
「わりーっ、わりーっ」
「そう言えば圭君なんで帰ってくるの遅かったの?」
「えとーっ、明美さんにちょっと色々……」
「何?」
二人はジーッと圭輔を見た。
「いや、だからね。その……」
「まさか、いやらしいこと……!?」
「違う、違う。マッサージして貰っただけっ」
「えっ、マッサージ?!」
二人は仰天した。
(まさかそう言う手でくるとは……)
二人は一本取られた感じになった。
「なかなか良かってさ、気持ち良かったよ」
「ふーん」
沙也加の方は黙ったままだった。
「何処やってもらったの?」
「えっ?腰と脚だけど」
「へぇ……」
「じゃあさ、どんな感じだったか、私に揉んでみてよ」
「えっ、ちょっと姉さん?」
「えっ何でさ?」
「どれくらい気持ち良かったのかなって。」
「いや、けど……」
圭輔は紗綾の方をチラッと見た。
「紗綾もやってもらう?」
「私は結構」
こうして圭輔は沙也加の腰と脚を仕方なく揉んだ。
「んっ、悪くないじゃない」
(何で僕がこんなことを)
「ん、あっ」
「……」
「んっ、んっ」
「……」
「あ……」
「はい、ストップー!!!」
紗綾は焦りながら言った。
「えー、もう終わり~?」
沙也加は不満そうに言った。
「当たり前よ。全くもう」
紗綾はぷんすかしていた。
(はぁ、終わったか……)
さて、圭輔は小説を読み始めた。
「圭君話そうよーっ」
「何を話すんだよ」
「圭君。今、何したい?」
「小説を読みたい」
「何読んでるの?」
「歴史小説」
「ふーん。誰が出るの?」
「塚原卜伝が主人公の短編」
「誰それ?」
「有名な剣豪の話」
「ふーん」
「圭輔さんに話したって、殆どが小説か漫画の話なんだから」
「そうだな。話題がそんなにない」
「ねえ。圭君」
「何?」
「漫画は最近どんなの読んでるの?」
「最近はラブコメかなー」
「ほう、ラブコメ。負けヒロインについてどう思う?」
「変な所を着目するわね。姉さん」
「んーっ、特にハーレム系だと好きな人と幸せになれないから、あんまり好きじゃないな」
「そうよねぇ。好きな人と幸せになれないもんね。」
「……」
(姉さん。何を言うつもりかしら?)
「どうすれば負けヒロインを幸せに出来るかしら」
「主人公と愛人関係を持つか、多妻結婚するか、他の人間とくっ付くしかないんじゃない?」
「他の人間とくっ付く気がなかったら?」
「うーん。愛人関係しかなくね?」
「それじゃあメインヒロインはどうなるのよ!?」
紗綾が割り込んできた。
「えっ?メインヒロインは主人公と結婚するんだろ?」
「愛人なんて作ったら、メインヒロインの立場がないじゃないの!」
「何を怒ってるんだ、紗綾」
「別に怒ってないわ」
紗綾は怒りながら否定した。
「明治時代は愛人なんてちらほらいたじゃないか」
「時代が違うわ!」
「男からしたら、奥さんは旦那にとって女の代表だな。愛人はまぁ、私的な好みの間柄かな?」
「なんか納得いかないわ」
紗綾は不機嫌になった。
「メインヒロインが可愛そうよ」
「どうした紗綾?少し感情移入し過ぎじゃないか?」
「だって、私は貴方にとってメインヒロインじゃないの?」
紗綾は少しうるっとした目で圭輔を見て甘えるように言った。
「と、当然だろ?なあ沙也加!?」
「さぁ、あんまり許嫁意識し過ぎて、足をすくわれないようにね、紗綾」
「さ、沙也加!」
紗綾は膨れた。
(ね、姉さんめ)
「まっ、負けヒロインも主人公に愛されないと愛人すらなれないけどね」
沙也加はピクッとした。
「まっ、確かにそれはそうね」
(なんだ、なんだ?二人がバチバチしているぞっ。一体どうすればいい……)
「ねぇ、圭君」
「どうした?」
「より成熟し、包容力のある女子の方が好みじゃない?」
「えっ、それはまぁ……」
「な、何を言ってるの、姉さん……」
「だから、私の方が紗綾よりかは包容力あると思うけどなあ」
「えっ?」
「ちょっと姉さん?! な、何を言ってるのかしら??」
「まぁ、二人とも落ち着けって!! 漫画の話だろ!?」
二人は黙った。そして、沙也加は言った。
「どっちが女性として魅力的か圭君に見て貰いましょうよ」
「えっ?」
二人は言った。
「女子の魅力……どうしてそんなことをしなければならないの?」
「あら?怖いの?」
「怖くはないわ。ただ私にするメリットがないわ」
「圭君にアピールするチャンスよ」
「……」
(確かにそうだけど。負けたら許嫁の沽券に関わるわ!どうすればいい?)
紗綾は圭輔の方を見た。
(何がどうしてこうなった!?)
圭輔は困惑した。そして、沙也加はニヤニヤした。
(これで私の女性らしさを圭君に示すチャンスだわ)
「それではスタートよ」
「待って!」
紗綾が止めた。
「何、紗綾?」
「あまりにもまだ体が未成熟な私は女らしさはやっぱり不利だわ」
(気づいたわね。けどこれは織り込み済みよ)
「けど、紗綾。別に体の発達状態は、女性らしさの所詮一部分よ」
「確かに、それはそうね」
「待て」
次は圭輔が止めた。
「僕がそれを審査するメリットがない」
(これでどうだ)
(確かに圭輔さんの意志も必要よね)
「私たちの新たな一面が見れるかもしれないじゃない」
「そ、そうかなー。張り合う必要はないと思うけど」
「うっ……」
(圭君なかなかやるわね)
「女性磨きには、競い合うのも重要よ」
「そうなのか? 紗綾?」
「うーん、一理はあるわね」
「圭君が判定するから、“男を虜にする女の魅力”を基準にするわ」
沙也加はネットで調べた。
「①肌がきれいで若々しく見える。これは……」
「引き分け」
「②顔色も体型も健康的。これは?」
「引き分け」
「こっからね。③いつも笑顔で愛嬌がある。これはどうかしら?」
「紗綾」
「④自然体で親みやすい。これは?」
「紗綾」
「⑤完璧すぎず、隙がある。これは?」
「紗綾」
「⑥感情を素直に表現する……。これは?」
「引き分け……」
沙也加の完敗だった。
「日頃の行いが敗因ね……」
「一朝一夕に出来る内容じゃないから……」
圭輔は意見を言い、珍しく沙也加はしょげた。
(何だろう。勝ったけど、勝った気がしない……)
紗綾は釈然としなかった。
「ねぇ。圭君。私ってそんなに魅力ないかしら?」
沙也加はずいっと体を圭輔に近づけて、
(ちょっ、ちょっと、姉さん)
「そ、そんなことないよ。十分魅力的だよ?」
「じゃあどうして?」
「もう少し、愛嬌が合って、親しみやすくて、隙を作らないと。特に親しみやすいって、主観が入ってる。僕以外になら沙也加ちゃんの性格に親しみを感じる男子がいるかもよ」
「圭君じゃないとダメなの!」
(姉さん……)
「なぜ?」
「それは……」
沙也加は黙った。
(それは貴方のことが好きだから……)
「はい、今日はお終い。さぁ、私はこれから料理作りに行くから、姉さん出てって。」
沙也加は素直にコクンとして紗綾と共に出て行った。
「姉さん……」
「何?」
「いや、何でも無い」
「そっ……」
二人は沈黙のまま廊下を歩いた。
最後まで読んで有難うございます。
圭輔も大変です。
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