三人の思惑と相談
あれ、皆どうしたの?
楽しんでください。
翌日(月曜日)。
朝ごはんを食べ、子供達は学校に向かった。
圭輔は登校時、いつも晴美に会うのだが、今日は会わなかった。
(怒ってるのかな?)
圭輔は少し心配しながら、学校に行った。
そして、彼は自分のクラスに行くと、女子達に声をかけられたが、美咲からは声をかけられなかった。
(これは、怒っているか?)
誰も女子が来ていない時も、美咲は来なかった。
(いつもと違うと気になるな)
だから、圭輔は美咲に声をかけた。
「やぁ、中条さん」
「あら、小谷君」
「いつも、一緒に話すのに、今日は話してこないから、どうしてかなぁ、と思って」
「どうしてと思う?」
「えっ、そりゃあまだ怒っているから?」
「まっ、それもあるけど、それだけじゃないわ」
「えっ、そうなの?」
「だって、土曜のことなんて、今に始まったことじゃないもの」
「うっ……」
「まっ、考えてみなさいな、このタラシさん」
「うっ」
部活の休憩時間。
明美も特に圭輔の元へ来なかった。
(なんか違和感あるなぁ)
そして部活終わり。
「明美さん」
「あら、小谷君。どうしたの?」
「いや、何となく話してなかったから、話したいなぁと思って」
「ふふっ、そうか。話をね」
「どう一緒に帰らない?」
「ゴメン。今日は用事があるから。急いで帰らないと」
「そう……」
圭輔は静かに帰っていると、目の前に晴美がいた。
「おーい、晴美ちゃん」
「!? 圭ちゃん?」
「部活帰り?」
「うん? そう」
「一緒に帰ろう」
「うん。いい……」
(は、いけない)
「ゴメン。今日は私急いで帰らないと」
「? さっきまで急いで帰ってなかったじゃん」
「今思い出したの。じゃっ」
「う、うん……」
圭輔は少し寂しさに駆られた。
帰宅後。
「ただいま~」
「お帰りなさい。圭輔さん」
圭輔は変わらない紗綾を見て嬉しくって、ハグをした。
「ど、どうしたの?」
「紗綾は変わらなくて良かった」
「どういう意味?」
「今日はいつもの三人が冷たくって」
ピキッと紗綾はなって、圭輔に制裁を食らわした。
「もう少し、反省しなさい」
紗綾はぷんすかしながら離れた。
(うーん、なんでだろう。なぜ皆(紗綾を含め)は冷たいのか?)
圭輔は考えた。
(もう皆に嫌われちゃったのかな……)
翌日(火曜日)。
今日も晴美には会わなかった。
「……」
そして、自分のクラスにて。
「中条さん」
「何?」
「いままで話してくれて有難う」
「えっ?」
美咲はぎくっとした。
「どういう意味?」
「いや、もうこの関係は終わりなんでしょ?だから、最後に挨拶だけでも」
圭輔はしょぼくれながら言った。
(逆効果だったかーっ)
「ち、違うわ!」
「えっ?」
「おーい、席に着けーっ」
昼休み。
彼はいつもの三人に囲まれた。
「何?」
「はぁ、ちょっとやり過ぎちゃったわね」
「えっと……」
「まさか、そっちの方向になるとは」
「?」
「貴方から距離を置いたら、私達の大切さが分かると思ったけど、今回は逆効果だったみたいね」
「圭ちゃんから距離置こうって誰がこの案出したっけ?」
晴美は二人を睨んだ。そして、三人は口喧嘩を始めた。
「まぁまぁ、とりあえず嫌われてなくて良かったよ」
「当たり前でしょ!??」
三人は同時に怒りながら言った。
(なんだ。そうだったのか)
帰宅後。
「紗綾っ」
「何?」
「本当は紗綾も僕から距離を置いて、紗綾の大切さを教えようとしてるんでしょ?」
「“も”?」
「“も”!」
ピキッと紗綾はなって、圭輔に制裁を食らわした。
「全く反省が足りないわ。このタラシ!」
「違う……のか?」
圭輔はガクッとなり、近くに居た沙也加があらあら、とニヤニヤしていた。
紗綾と沙也加が話し合っていた。
「全く本当に、男って何個も愛を持っているんだから」
紗綾はぷんすか言うと、
「まぁね。特に圭君はもてるから」
「ふん。全く、昔が懐かしいわ」
「そうね」
「昔の圭輔さんはそんなことなかったんだけどなぁ」
それは10年前に遡る。
当時圭輔6歳。沙也加6歳。紗綾4歳。咲2歳。
親同士の繋がりで、よく懇意にしており、この中で圭輔と仲の良い相手を許嫁とするように親同士で決めた。
そして、5年間四人で遊ばせて、圭輔は特に紗綾と遊んでおり、紗綾も楽しそうだったので、紗綾と許嫁になった。
圭輔にとって沙也加は同級生でよく意地悪してくるから、苦手だった。
そして咲はまだ小さかった。
だから、圭輔はよく年も近く、優しい紗綾を気に入っていた。
そして5年前に圭輔と紗綾は許嫁となり、今年一緒に過ごすようになった。
「あの時はスケベじゃなかったのに」
「当たり前じゃない、まだ子供だったんだから」
「姉さんは圭輔さんと中学から一緒なんだっけ?」
「えぇ、そうよ」
「そっかぁ。中学の時の圭輔さんってどうだったの?」
「そうね。クラスが一緒になかったから、あまり絡みはなかったけど」
「けど?」
「よく女子に囲まれてたわ」
「もててたんだ」
「えぇ。女子の扱いには慣れてたから」
紗綾は膨れた。
「全くもてる許嫁を持つとこっちが大変ね」
「……ねぇ、紗綾」
「何?」
「……いや、何でも無い」
「……ふーん。そ」
二人は暫く無言になった。
「まぁ、頑張んなさい。紗綾」
「うん。頑張る。圭輔さんへ愛が足りないのかしら」
「男っていうのはスケベなもんよ」
「そうね」
「だから、一人を愛するまで、待たないといけないのかも」
「何年かかることやら……」
「そうね。何年かかるかしらね」
「許嫁として一人の女として頑張るわ」
「そっ」
紗綾は沙也加の部屋から出て行き、沙也加は独り言を言った。
「圭君が一人を愛するまで何年かかるか……か」
紗綾は圭輔のいる自分の部屋に戻った。
ガラッ。
「あん。あ~ん。あん」
「おぉ……」
圭輔はスマホでネットを見ていた。
「……」
紗綾はため息をついた。
(全く、性懲りもなく)
「ちょっと、もう少し音を小さくして」
圭輔はビクッとして振り返ると紗綾がいた。
「あっ、あぁ。ゴメン」
圭輔はスマホの音を小さくした。
「もう、またAV?本当に男子はそういうの好きなんだから」
「男はそういうのが好きな生き物だから仕方ない」
(どうして、こんなスケベで仕方ない人を好きになったのだろう)
また紗綾は昔を思い出した。今回は約5年前である。
当時、圭輔11歳。紗綾9歳。
圭輔はよく飯塚家に遊びに行っていた。
皆は許嫁という感覚はなく、楽しく遊んでいた。
紗綾は最初に圭輔を仲の良い男友達だと思っていた。
飯塚家の近くの公園とかで遊んでいた。
そんなある日、遊んでいる最中紗綾は迷子になった。
泣きながら町をうろうろしていると、血相かいて圭輔がやって来た。
「よしよし、大丈夫だから」
(私のために探して来てくれたんだ)
紗綾は思った。
それ以来気になる存在になり、飯塚家で培った女の取り扱い方を学んだ圭輔に大きくなるにつれてイチコロになった。
(思い起こせば、圭輔さんとの長い年月と私のチョロさが原因ね)
紗綾はほとほと参ったようにため息をついた。
「圭輔さん」
「何?」
「私のこと好き?」
「えっ?」
圭輔はぎくっとした。
「勿論好きだけど……。」
「愛してる?」
「あぁ、勿論。小さい頃から一緒に居たからな。一番愛してるよ」
「そう」
「許嫁って聞いた時はビックリしたけど、まぁ紗綾なら良いかなと思って」
「そう、なら何で他の女子といちゃつくのかしら?」
「いちゃついてないよ。ただ女子から絡んでくるからね。男として女子と会話しているだけ。決してやましいことはしてない」
「ふーん。そっ」
紗綾は立ち上がって、二人の布団の準備をした。
「明日から、皆と同じ料理に戻すから」
「えっ!? 本当?」
「ただし、女子と話すのは良いけど、手を出したら超折檻だから」
「あい……」
「許嫁同士なんだから許嫁らしくいてよ」
「いや~、夫婦未満の関係だから、つい気持ちが緩くなっちゃう」
「気持ちが緩くなるから浮気しちゃうの!!?」
紗綾は圭輔にギュッと近づいた。
「そういう訳じゃないけど、若いからね、性欲が強いというか、その男の性というか、お休み!!」
「あっ!ったく。もー」
最後まで読んで有難うございます。
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