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初めてのキス

事件が起こると、物語が動き出す。

楽しんでください。

 木曜日。

 朝ごはんを食べた圭輔はいつものように学校に向かった。

 久方ぶりの雨である。圭輔は真面目にカッパを着て登校する。


「おはよう、圭ちゃん」

「お早う、晴美ちゃん」

「もう、真面目ね」

「傘で自転車は危ないからな」

「けど、カッパはダサいわ」

「ダサい以前に安全かどうかだろ?」

「まぁ、それはそうなんだけどね」


(ったく、危ないな)


「そういえばさ、石原さん振ったんでしょ?」

「えっ、あぁ」

「まぁ、そうだよね。許婚いるからね。易々とうんとは言えないよね」

「まあ、そりゃあな」

「許婚の立ち位置って、付き合うに当たってはかなり有利だよね」

「確かに」


(なんだ? さっきから)


「けど、許婚だからって余裕でいると足下すくわれるよね」

「何が言いたいんだ?」

「別に、事実を確認しているだけだよー」


(まっ、私がどう動くか考えないといけないし)


 その時ザッと雨風が吹いた。


「きゃっ」

「危なっ」


 圭輔は晴美を抱きつくような形になった。

 圭輔はドキドキした。


「圭ちゃん……」

「なに?」

「冷たい……」

「えっ、あっゴメン、ゴメン」


 ぱっと離した。


「あ~っ、濡れたじゃない」

「ゴメン、ゴメン」

「けど、ありがと」


 晴美はふいに圭輔の唇に自分の唇を当てた。


「えっ?」


 突然晴美は急にかーっと赤面して、


「ゴメン。先に行くからっ」


 晴美は急いで走り去った。


「えっ? えっ? えーーーーっ??」


 そして、圭輔は暫くぼーっとしたまま学校に向かった。

 ぼーっ、ぼーっ、ぼーっ。


「あら、お早う、小谷君」


 ぼーっ。


「? 小谷君?」


 ぼーっ。


「おーい、小谷君?」


 ぼーっ。


「小谷君、小谷君。小谷くーん」


 圭輔はやっとはっとした。


「あぁ、ゴメン、どうしたの?」

「いやにぼーっとしてるから、心配しちゃって」

「えっ、あぁ大丈夫だよ?」

「本当に?」

「本当だよ」

「宿題終わったの?」

「あっ、終わってない。英語だっけ?」

「そうね」

「これか」

「それは国語の教科書じゃない」

「あぁ、そっか。こっちだ。こっち」

「……教科書反対よ」

「えっ、あぁ、本当だ」

「……」


 美咲はじーっと圭輔を見た。


「……何?」

「なんか今日の貴方おかしい」

「そんなことないよ?」

「嘘ね。何かあったわね」

「ないない」


 じーっ。


「だからないってっ」


 じーっ。


「紗綾ちゃんと何かあった?」

「紗綾?!」


 圭輔はドキッとした。


「紗綾……は関係ない、ないです」


 圭輔はおろおろし始めた。

(これは何かおかしいわ、紗綾ちゃんと何かあったのかしら。紗綾ちゃんに聞いてみよ)

 美咲は紗綾に直接ラインを送って返事が来た。

『別に何もなかったですが

 圭輔さんに何かあったんですか?』

『なんか様子がおかしいの』

『へぇ、様子が』

(紗綾ちゃんは関係ないか、なら鎌かけてみるか)


「市原さんと何かあった?」


 圭輔の顔が突然赤くなった。


「何もないよ?」


 小声になりながら言った。

(これね)

 美咲は予想した。

(何かあったか気になるわ。)

 紗綾は色々考えたが、SHRが始まった。

 昼休み。

 圭輔は一人静かに本を読んでいた。


「小谷君」


 圭輔はドキッとして、


「何かな、中条さん?」

「ちょっと来て」

「ゴメン。ちょっと用が出来た」

「紗綾ちゃんに市原さんと何かあったって送ろうかなぁ」


 そして圭輔は顔面蒼白になった。


「いや、それだけは」


(これは尋常ならざることね)


「じゃあちょっと来て」

「……はい」


 雨はもう既に止み、美咲は体育館裏に連れて行った。


「で、何があったの?」

「言えない……」

「そっ、なら聞き方を変えるわ。許婚に言えないレベルのことを市原さんとしたのね」


 圭輔は目を反らしながら赤面した。


「そして、学校に来る間、つまり通学中に起きた」

「……」

「まさかとは思うけどかなりのスキンシ……」

「ディープキスじゃないよ。ただのキス。不可抗力のキス!」

「えっ!?」

「へっ?」

「えーーーっ!?? キス、えっ、キ、えーーーー!??」

「えっ? あれっ? 違ったの?!!」


 二人の時は止まった。


「へーっ、キス。それは紗綾ちゃんには言えないわ」

「黙っといてくれないか?」

「そうね……。あらっ、唇にキスに何か?」

「えっ、嘘?」


 ちゅっ。


「嘘っ。分かったから、黙っといてあげる」


 美咲は晴美に対抗すべくキスをして去って行った。


「へっ??? ちょっと、へっ???」


 そして無情にもただ予鈴のチャイムが鳴っているだけだった。

最後まで読んで有難うございます。

一体どうなるのか?

読者様からブックマーク、感想、評価を頂き、励みになっております。

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