紗綾と仲直りのはずが……
楽しんでください。
火曜日。
ボロボロのまま圭輔は学校に登校した。
(しかし、昨日はどうなるかと思った。何とか思い留まってくれて良かった)
許嫁解消が過ると寒気がした。
「お早う。圭ちゃん!」
「お、晴美ちゃん」
「圭ちゃ……いやにボロボロね。どうしたの?」
「紗綾と昨日喧嘩してさっ」
「ふーん、そろそろ他の女子に乗り換えない?」
「そういう話で喧嘩したから、暫くは遠慮しとく」
「ふーん、あらそう。そろそろ部活が自主練習になるねぇ」
「あぁ、そう言えばそうだな」
「あぁ、テスト面倒くさい」
(そう言えばテストが近いんだっけ、あーっ、確かに面倒だな)
二人ともテストが得意でないから、無理もなかった。
「よし、もう自主練習行く!」
「おいおい、中間テストはどうするんだ!?」
「中間テストより、総体が大事だもん。テストは赤点取りゃなきゃ良い」
(こいつ、テスト諦めやがった)
「……私が何か困ったら」
晴美は上目遣いで、
「助けてね?」
「えっ?」
圭輔はドキッとしたが、
「普通に嫌だけど……」
即答した。
「えっ、ちょっとなんでよ!?」
「紗綾の気が収まる間は駄目だって」
「ぶーっ」
晴美は膨れた。
(ったく。誘惑するなよ。紗綾の一件でひやひやしてるんだから)
そうこうしていると、学校に着いた。
「じゃね。圭ちゃん」
ぷいっと、晴美は自分のクラスへ行った。
圭輔もクラスに行った。そしたら、いつものように美咲がいた。
「あら、小谷君、お早う」
「お早う」
「えらいボロボロね。大丈夫?」
美咲は心配そうに見た。
「大丈夫。紗綾と一悶着あって」
「あらそうなの。いつでも乗り換え券があるわよ。今ならお買い得よ」
「そう言う話で紗綾と喧嘩したから要らない」
「あら、残念ね」
(皆は僕に絡んでくれるのは嬉しいが、紗綾がいるから容易に動けない)
「宿題は終わったの?」
「あぁ、終わっ……、いや、そう言えばまだ途中だったな」
「じゃあ、手伝うわ」
「ありがとう。中条さん」
「美咲で良いのに」
「まだ恥ずかしい」
「一応確認なんだけど、中間テストの勉強は一緒にするのよね?」
美咲が上目遣いで見ると、
「あぁ、それはするさ。気をつけて・・・」
「そう、それは良かったわ」
美咲はホッとした。
(大丈夫だよ……な?沙也加ちゃんもいるし)
圭輔は一抹の不安を感じながら、自分の中で納得した。
「そう言えば、私最近恋愛小説にハマってるんだけどね」
「へぇ」
「主人公が5股かけてて、ヒロインに殺される話なんだけどね」
圭輔は吹いた。
「どうしたの?小谷君?」
「主人公殺されるの?」
「そうなの。包丁でざくっと。まっ、主人公が悪いんだけどね、面白いの」
「あはは……」
圭輔は青ざめた。
「ここ、間違っているわ」
「あっ、うん……有難う」
「どうしたの?顔色悪いけど」
「ううん、大丈夫、大丈夫」
「ねぇ。小谷君……」
「何?」
「私に何かあったら、助けてくれる?」
「えっ?」
圭輔はドキッとしたが、
「暫くは無理」
美咲を突き放すように言った。
そして、放課後。部活終わりの自主練習。
「そう、大分良くなったね。小谷君」
「本当良かった」
「これで大分ボールの中心を捉えることが出来るだろう」
「それは良かった」
「もう少しここをこう……」
明美の行動がかなり圭輔の体に近かったので、瞬時に離れた。
「えっ?どうしたの?」
「いや、体同士が近かったから、離れたんだよ?」
「……私と接触するのは嫌かい?」
「そんなことはないけど、昨日そう言う話で紗綾と喧嘩したからさ」
「そうなんだ。紗綾ちゃんと……」
「だから、暫くはあんまり女子に近づかないように」
「なる程、そうか。分かった。私も気をつけるよ」
「頼んます」
「そう言えば、中間テスト近いから、自主練習になるんだが、来るのかい?」
「いや、テスト勉強に専念するよ」
「そう。もし良かったら勉強を一緒にどうかな?」
「いや、先約があるから」
「誰とするの?」
「えと、中条さんと沙也加ちゃんだけど」
「なる程。私も加えてくれないか?」
「えっ、でも……」
「私では役不足かな?」
明美は上目遣いで見た。
「いやいや、滅相もない。是非来て下さい」
「そうかね。それは良かった」
明美はニコニコした。
(大丈夫、大丈夫だよー、これくらいなら紗綾は怒らないよー、一人増えただけだもーん)
圭輔は不安ではあったが、何とか落ち着きを取り戻そうとした。
そして、帰宅。
「ただいまーっ」
「あら、お帰りなさい」
紗綾は包丁を持って玄関に立っていた。
「えっ、何それ!??」
「何って、包丁だけど?」
圭輔は動揺した。
(えっ?今日のことでもう怒っているのか?!!)
「何のために持ってるの?」
「勿論切るためだけど」
「切るため??」
(えっ、まじで?冗談だろ!?)
圭輔は声を裏返しながら玄関で腰を抜かした。
(死ぬのか?死ぬのか?)
そして、目が泳いだ。
そしたら紗綾ははっとして、圭輔の方に包丁を投げた。
「ひっ!!」
ドアに包丁が刺さった。
「蝿は殺さないと。大丈夫?圭輔さん。圭輔さん??」
圭輔は気絶していた。
晩ご飯食べた後、三人は紗綾の部屋に集まり会話した。
「あはは、だから気絶したのか」
沙也加は爆笑していた。
「まさか、包丁が飛んでくるとは思わないじゃないか」
「ふふ、まぁ確かに。後で母さんに怒られてたけどね」
「また、お兄様が女子のことを考えてたからこうなるのです」
京香は説教するように言った。
「流れというのが、あってだな、断りずらい場面というのがある。ねぇ、沙也加ちゃん」
圭輔は同意を求めた。
「う、うん。まぁ。」
「いいか、明美さんがテスト勉強に加わったのは紗綾には秘密だぞ」
「あっ」
「話すと厄介だからな」
「何が厄介って?」
「それは紗綾に明美さんの話をだな・・・」
圭輔の背後には夜叉もとい、紗綾がいた。
「紗綾!?」
「タダでさえ、むしゃくしゃしてるのに、この浮気者が!」
「待て、紗綾!まだ浮気と決まった訳じゃあ……」
「問答無用じゃ!!!!」
圭輔は紗綾にコブラツイストをお見舞いされた。
「うぎゃあああああ、ご勘弁うぉぉぉぉぉ!!!!」
最後まで読んで有難うございます。
ありゃりゃ、いつもの圭輔でした。
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