第6話 カフェ【スティモン】
少し間が空いたのはリワークをしたからです。
「俺みたいに死神を見ることができる人間なんてほとんどいないんだろ?」
「ああ、そうだな」
「じゃあ俺達は死神から話を聞かないといけない」
「その通りだ」
「でもその死神もめちゃくちゃいるわけじゃない」
「そうだ」
「どうすりゃいいんだよ!」
家に帰った俺と安らぎは、早速どうやって姉の魂を奪った死神に会うか考えていた。まぁ良い方法が思いつかないのだが。
「姉ちゃんの魂を奪った死神の特徴はないのか?」
「特徴・・・・」
安らぎは顎に手を当てて考える。
「剣」
「剣?」
「デカイ剣持ってた」
「お前それなんでもっと早く言わないんだよ」
「人間が言う武器を俺達の中には持っている奴もいるが、あれは好きで持ってんじゃなくて体の一部としてなってるんだ。体の一部なんて気にする奴なんていねえよ」
「そういうものなのか、死神って。でもそのデカイ剣ってのは有力情報だ。そんな目立つ奴いれば聞いていく内に分かるだろ」
「でも、その聞く死神はどこで会うんだよ」
「ああ・・・・そうか。」
「有力かどうかわかんねぇけど、死神も人間と同じで流行っていうのがある」
「流行?」
「今だとタピオカじゃねえのか?人間の好きな物は死神も好む傾向があるからな」
「タ、タピオカ?死神って食べたり飲んだりできんのか?」
「俺達は生物に触れることはできないけど物を持ったりすることはできる、まぁ飲食はできないけどな。俺達の場合『飲む』ってより『かける』。『食べる』ってより『潰す』とか『落とす』のが正しい。液体は口から入れても体を濡らしながら地面にぶちまけちゃうだけだ」
「じゃあなんで死神はタピオカなんて好きなんだよ」
「さぁ?俺は興味ないからわからん。見てるだけでも楽しいんじゃないのか」
見てるだけ。その言葉になぜだか胸が苦しくなる。
興味があるのに食べることも飲むこともができないから見るだけなんて食べれないからメニュー表だけ見て満足して帰るようなものではないのか?一種の諦めさえ感じる。
「タピオカ・・・・タピオカ・・・・」
俺はポケットからスマホ取り出しこの辺のタピオカを売っている店を探す。
「一昨日オープンしたばっかのカフェがある」
「もしかしたらそこにいるかもな」
「明日そこに寄ってみるか・・・・」
「今から行けばいいじゃねえか」
「またあの刑事と出会ったらどうすんだよ」
俺はベットに倒れ込み、瞼を落とす。
5分立つ頃には意識が遠のき、いつのまにか夢を見ていた。
その夢では姉ちゃんが1人で踊っていた。真っ暗な夜空に、無数の星空。その下で姉ちゃんは1人で踊っていた。
近づこうと足を動かすけど、前にすすもことはなくて、1人で踊る姉を心配しているのか、羨ましいと思っているのかよく分からない感情だ。
どうがんばっても全然近ずかない。
姉ちゃんは俺がいることに気づくことはなく、ただ1人で踊っている。
そこで夢は終わった。
***
「じゃあ、これでホームルーム終わりにします。お疲れー」
そう言って先生は一目散に教室から出て行った。
「な、なぁ天弥、今日は行くんだろ?」
安らぎは少しはしゃぎながら聞いてくる。こいつもしかして興味あるんじゃないか?
「ま、まぁ」
俺は小声で返す。
後ろを振り向き、溝口さんの方を見る。昨日なんで俺のこと尾行していたのか聞いていないが、今日も尾行されると困る。
溝口さんはよく一緒にいる女子2人と仲良く話しており、こっちをみる気配がない。
「なぁ安らぎ、今日も溝口さんが尾行してたら教えてくれ」
俺はクラスの人に聞こえないように言う。
「分かったよ」
「尾行されてたら今日カフェへ行くのは中止する」
「ええ!?まじかよ!」
安らぎはあからさまにがっかりする。
俺は早足で教室を出て急いで下駄箱に行き靴を履き替え外に出て、スマホのマップアプリを駆使しながら目的地のカフェ【スティモン】を目指す。
すこし遠いが徒歩で行ける距離なので交通費削減のため徒歩で行く。ほぼながらスマホに近い状態で右へ左へと歩を進めていくと30分後、ようやくお目当ての店に辿り着く。さすがに疲れた。
「すっげぇ人・・・・」
そのあまりにも混んでいる店を見て、俺は思ったことを口に出してしまう。
「そんなうまいのか、タピオカって・・・・」
安らぎは人混みを眺めながら呟く。
「それにしてもこの混み具合は異常だろ」
行列は店を出ており、最後尾は店から10メートルほど先にある。
だが今回俺たちの目的はタピオカを食べることではなくてタピオカを眺めている死神に会うこと。俺は店の周りを見渡す。
「見当たらない。というか奥が見えない」
「待ってろ、俺が探してくる」
安らぎは浮遊して店の奥へ行く。
5分後、安らぎは1人の死神をつれてこちらに戻ってきた。
「まじナンパなら勘弁して欲しいんですけどぉ〜」
そのJKのような喋り方をする死神はやれやれといった感じでこちらにくる。その見た目は死神というイメージを全く彷彿させなく、ピンクに光る目、短いローブに長い骨の爪。女子高生というイメージなんだろうが不気味な様子から申し訳ないがミュータントかなにかを連想してしまう。
「ナンパじゃねえわ!ほら、タピオカ眺めてた奴連れてきたぞ」
「初めまして俺、新生 天弥と言います。」
俺は死神JKに自己紹介をする。お辞儀は周りの目が気になるのでするのはやめた。
「うっそ!私のこと視えんの!?ちょおウケるんですかどぉ、SNSに投稿したらバズんじゃね!?まぁスマホなんてないんだけどぉ」
そう言って死神JKはゲラゲラ笑う。
「とりあえず人気がないとこいこうぜ」
安らぎは路地裏に指を指す。
「え~まじナンパじゃ~ん、でもその綺麗な瞳ちょお好みだから付き合ってあげてもいいけどぉ?」
死神JKは安らぎの瞳をのぞき込む。綺麗な瞳って、ただ青く光ってるだけだろ。
「ばっ、お前・・・・何言ってんだよ」
安らぎの音色が明らかに変わる。照れているようだ。
※※※
ひとまず路地裏まで来た俺と安らぎは、さっそく死神JKに話を聞く。
「さっそく何ですけど俺達の質問に分かる範囲でいいので応えてくれませんか?えっと・・・・」
「おっけー、てかタメでいいよぉ~、敬語疲れっしょ。あとウチの名前は気分で変えてるんだけど今は『星影夢』で~」
ゴリゴリのキラキラネームだ。
「よ、よろしく星影夢ちゃん。さっそくなんだけど、死神が沢山場所とかしらないかな?」
「お兄さんそんなウチらに会いたいの?ちょおウケるんですけどぉ、まぁ~ウチらに会いたいならぁタピるのは必須?的な」
「た、タピる?」
「タピオカを飲むことだな」
安らぎがタピるの意味について応える。
「なんで知ってんの」
「JK用語特集ってのをお前の母ちゃんが見てて、その横で一緒に見てた」
「なんでそんなもん母さんが観てるんだよ・・・・」
「まだまだ若くありたいっていう表れなんじゃねえの?」
「ちょっとぉ、私置いて話すなら戻るよぉ~」
星影夢は2人で話し込もうとする俺と安らぎに尻 (と思われる部分)振りながら怒る。
「ああ、ごめんごめん。で、そのタピるをするとなんで死神と会えるの?」
「会えるっていうかぁ渋谷いくとタピオカ目当ての死神がめっちゃいてぇ、マジ混沌としてる。的な」
「渋谷にそんなにいるのか」
「もち。多ければ4人いる的な」
「まあまあ少ない」
予想していた数を大幅に下回っていてついつい思ったことを口にする。
「いやいや、4体もいればまあまあ多いぞ。」
「まじウチも東京行きたいんだけどぉ、ここから遠すぎ。的な」
「そっか、ちなみになんだけどこの辺で大きな剣を持った死神知らない?」
俺は多分知らないだろうと思いつつ、一応聞いてみる。
「あーそれって『神鬼』のことじゃね?」
「し、知ってるの!?」
俺は予想外の返答に星影夢に顔を近づける。
「最近しったんだけどぉ、この町でめっちゃ魂集めてて尋ぱねぇ。的な」
「それをどこで?」
「ちょ、お兄さんがっつきすぎ。なんかぁこの前友達と友達の彼ピッピとだべってたらその彼ピッピがめっちゃ魂集めてる死神いるっていう話してきてぇ~マジ尋ぱねぇ的な」
「死神の中にも友達とか恋人関係とかあるんだ・・・・」
「ぼろ負けじゃんお前」
安らぎはクスクスと笑う。そういうお前はどうなんだと反論しようと思ったが星影夢がまた怒るとおもったのでやめた。
「そ、それよりその友達の場所まで会わせてくれないかな?」
「えー、どしよっかなー」
星影夢は少し考える。
「あ、そうだ!」
こんどは何か思いついたように手を叩く。
「ちょっとあのカフェの厨房みてきてくんない?」
「え?」
なんだそのお願いは。憑依させてタピオカ飲ませろとか言うのかと思っていたが厨房覗いてこいって。
「なんで厨房なんか?」
「覗いてこいっていうか調査。的な
なんかぁ~ここのカフェのタピオカ飲むと気分が良くなるみたいなことJKが話てるの聞いちゃってーどんな作り方してんだろって気になって厨房見ちゃった。的な」
「気分が良くなる?」
「そそ。で、この星影夢ちゃんが覗きにいったらー、白い粉的なものいれてんの~」
「白い粉って・・・・」
その隠語だけで物騒なものを連想してしまう。
「なんか隠し味とかじゃないの?」
「ウチも最初はそう思ったんだけどぉフロアで仕事してるお兄さんはめっちゃ爽やか系イケメンって感じなんだけどぉ、厨房で調理してる人たちの中にガラ入れてる奴普通にいてーちょぉ怖い。的な」
「それは確かに怪しいな」
安らぎが同調する。
「ガラって?」
「タトゥーを入れてる奴らのことだ。白い粉とタトゥーなんてなにかあるぞ」
「お、おいおい。もしほんとに客が飲む物に薬物を入れてるとしたら大事件じゃないか。それに、薬物は口に入れると異常に苦いからすぐに気ずくだろ」
俺はこのまえテレビの薬物特集で言ってたことをそのまま言う。
「少量ならバレないんじゃね?的な。それに普通にタピオカ飲むのにU吉(*一万円札のこと)溶かしてる子もいるからぁもし薬だったらめっちゃかわいそうじゃね?的な」
「調べる価値はあるんじゃねえか?天弥。お前には俺が付いてるじゃねえか。あ、付いてるじゃなくて【憑いてる】か!」
安らぎはそう言ってゲラゲラと笑う。それを冷たい目でみながら星影夢は「うわぁさっむ・・・・」と呟く。
「でも勝手に厨房入ってなんも無かったら俺が普通にやばい奴だし・・・・」
「そこをなんとか!このままあの店放っておいてもしほんとにやばいとこだったらかわいそすぎてまじ胸くそわるす!」
星影夢は俺に向かって手を合わせる。おれは顎に手を当てて少しだけ考える。
「はぁ・・・・分かった。この店の閉店時間になったらまた来るよ」
「まじ!?それは沸いたわ!」
「一旦帰るぞ、安らぎ」
「あいよ!」
***
夜8時。俺は玄関で靴を履いて出かける準備をする。
スマホで調べたところ、スティモンは閉店時間が8時半だからこのくらいの時間にいけば客もいないから安全だろう。
「あら天弥。どこか出かけるの?」
母さんが外出しようとしてる俺に気がつく。
「あ、ああ。ちょっと友達のところに・・・・」
「あなたいつの間に友達できたの!?」
「うるさいな。ちょっと渡すもんあるから来て欲しいって言われただけだよ」
「あらそう。10時までには帰ってきてらっしゃい」
「はいはい」
俺は玄関を開けて外に出る。夜風が頬に当たり思わず身震いしてしまう。
「夜の町ってなんだかいいよな」
玄関を出てすぐ横に安らぎが立っていて、夜空を眺めて黄昏れながら言う。
「うおびっくりした。変なこと言ってないで早くいくぞ」
俺は自転車にまたがり、ペダルを漕ぐ。
***
「星影夢、いるか?」
自転車を漕いで15分後に夕方星影夢と話した路地裏に到着する。
「あ、ほんとに来てくれたんだぁ」
星影夢は空からフラフラと現れる。
「もうお客さんいない?」
「もち。でも中でまだ店員はいるみたい」
「わかった。安らぎ、【憑依】だ」
「りょーかい」
安らぎは頭から俺の体に入るのと同時に一昨日と同じ感覚が体に走る。
「これが【憑依】!?テンアゲなんだけど!」
「さてと、じゃあ行くか」
「ま、まて。ポケットにマスク入ってるから着けてくれ」
ポケットからマスクを取り出し口につける。これで顔は隠せるだろう、多分。
「じゃ、後はよろぴく~」
「一緒に行かねえのか?」
「星影夢ちゃんこわ~い」
星影夢は大袈裟に体を震わす。そんな彼女を無視して俺はスティモンの方へ向かう。
店内はすでに明かりが消えているが幸い扉にまだ鍵が閉まって無かったので入ることができた。中に入りさっそく厨房の方を見ると明かりが灯っており男の声が聞こえる。俺は忍び足で厨房まで近づき耳を澄ませる。
「今日の儲けは?」
「こちらになります」
「25万か・・・・アレの分を差し引いた額は?」
「10万ほどです」
「少ねえな・・・・リピーターは?」
「それがまだ・・・・」
男がそう言った瞬間、鈍い音が聞こえる。おそらく殴られたのだろう。
「はよもっとドデカい成果上げろや!」
「し、しかし気づかない間に薬漬けなんて無理が・・・・」
『薬漬け』その言葉がこの店がどれだけ黒色なのか想像ができる。やはり星影夢が言っていたようにこのカフェは薬物を使用しているのか?
「お前、そこでなにしてる」
後ろを向くと、そこには刺青が入った丸刈りのいかにもな男が立っていた。
「い、いやー。まだ開いてないかなーと思いまして・・・・」
「んなもんみれば分かるだろ!」
そりゃそうだ。
仕方ない、ここは強行突破だ。
「安らぎ!」
俺は自分の体の中にいる安らぎに声をかける。後は任せたの意だ。
「ぐふっ・・・・!」
俺の足蹴りが腹に入った男はその場でうずくまる。
男の声に気づき、厨房にいたヤクザらしき男達が一斉に出てくる。
「なんだてめぇ!」
「俺は正義のヒーロー・・・・・・なんて言えば良い?」
「なんとも言わんでいい!」
「いやいや絶対言った方がいいって。『天弥マン』はどうだ?」
「やめてくれそんなダサい名前!」
「なに1人でブツブツ言ってんだてめぇ!薬中か!?」
ヤクザが叫びながら刃物を振りかざす。それを合図に他の奴らも次々と俺に襲いかかって来た。
僕は自分でも凄いと思う特技があるんですよ。それは平成ライダーのクウガ~ジオウまでを噛まずに一気に言えるという特技です。ポケモンじゃありません。
ですがこの特技が今のところ役にたったのは「あれ、ブレイドの次なんだっけ?」となったときぐらいですですから僕は新たな特技として令和ライダーを一気に言えるようになりたいなと思います。