第13話 運命の相手②
詰め替え用シャンプーの残り使うと1回分得した気分になるよね。
「どどどどうなってんの!?」
俺は公衆トイレに入り、混乱した脳を一回落ち着かせようとする。
溝口さんに告白された。なんで俺なんかを?ビリビリってなに?メルヘンなの!?考えれば考えるほど混乱する。一体なにが目的なんだ。
「言ったろ、あいつはお前に惚れてたんだよ。で、どうすんだよ」
「どうするってなにが」
「決まってんだろ、付き合うか付き合わないかだよ。お前の灰色な人生にようやく色がつき始めようとしてんだぞ、もちろん付き合うに決まってるよな」
付き合う?おれが溝口さんと?友達でもないのに?
「…とりあえず一回、なんで彼女がこんな暴挙にでたのか考えよう」
「暴挙って。」
そもそも溝口さんが俺を気になり始めたのはいつからだ?まず間違いなく俺を尾行していた日には俺に対してなにかあったんだろう。でも、今日とその日以外で溝口さんとなにもなかったし…
「そういえばお前、あの女に顔をジッと見られた時があったな」
「え…そうだっけ?」
「ほら、あのハゲ頭の教師の授業の時」
「あ、ああ!あの日か!確か顔にゴミが付いてると思ったとかなんとか」
「つまりその時からお前に惚れてたんだよ」
「い、いや…まてよ、そもそも俺の顔にゴミが付いてるってなんで分かった…?俺の横を通っただけでそんなことわかるわけないし」
「お前の顔に魅とれちまって思わず吐いた嘘だろ」
「俺にそんな魅力があったらこの歳まで友達ができないのはおかしい!」
「天弥……」
思い出せ。あの日から今日まで俺か彼女に何か変わったことがあるはずだ。何か変わったこと…変わったこと…
「……あ」
天弥は呆けた顔で安らぎの方を視る。
「あ?なんだよ」
お、お前だあああああああ!
***
あの男、私の告白への返事より先にトイレを優先するってどういう神経してるのよ。これだからぼっちは物事の順序を考えられないからぼっちなのよ。本当にあんな奴が私の運命の相手なのかしら。でもあいつの近くにいるとあのビリビリを感じるし…
というか、あいつを運命の相手だと思ったの最近だよね。じゃあそれまではなんで何も感じなかったのだろう、何か変わったのかしら、シャンプーとか?
そうこう考えている内に、私の運命の相手、天弥君が戻ってくる。
さぁ今度こそさっきの返事の返しをもらうわよ。
私はよくみんなから「可愛い」って言われるし、色んな男から告白される。まぁ全部断るし付き合ったことはないけど。それもこれも全部アンタに会うために我慢してアンタのために友達と練習してきたんだから!さぁさっさと言いなさい!
「天弥君、おなかの調子だいじょ…」
私は天弥君に近づきながら話しかける。
だけど、私はある違和感を覚える。いや、これはむしろ普通なことだ、普通のことなんだけど…
彼から何も感じない!どういうこと!?天弥君がトイレに行く前まではちゃんとビリビリと感じてたのに。まさか、魅力も一緒にトイレに流しちゃったの?
「ご、ごめん。お待たせ」
「あ、だ、大丈夫だよ」
「どう?今でも僕から何か感じる?」
天弥君からまさかの質問がくる。もしかして今はなにも感じないのバレてる!?
「も、もうなにその質問」
私は笑ってごまかす。とりあえずなんでこんなことになってるのか解明しないと。ここにきて実は天弥君は運命の相手じゃありませんでしたなんて最悪すぎる。
「今なにも感じてないでしょ?」
「そ、そんなことないよ」
私は少し早口で言ってしまう。
「嘘だ、眼が泳いでる。それと今ちょっと早口になった」
なんなのコイツの観察眼!気持ち悪!
「君のそのビリビリの正体教えてあげようか?」
「え?」
「安らぎ!」
天弥君がそう言ってものの数十秒で彼からまたあの感覚が蘇る。
「あ、ああ…うそ…」
「戻ったでしょ」
私はなにも言えなかった。
「あの、言っても信じてもらえないと思うんだけど君のソレは多分…」
「かーのじょっ。こんなとこで何してんの」
天弥君がそう言いかけた時に4人くらいの男が私に話しかける。見た目からして多分、一般的に良い印象があまりないサルだ。
「ねね、暇ならそんなつまんなそうな奴ほっといて俺らと一緒に遊ぼうよ」
いかにもな台詞を私になげかけてくる。ああ邪魔くさい。
「あの、今大事な話してるので。」
「いーじゃんいこーよ、楽しい場所しってるから」
男の1人が私の腕を掴む。
「ちょっと離してよ!」
ふり離そうとするといつのまにか、私の腕を掴んでた男が腹を押さえてうずくまっていた。
「はぁ。こういうのって自分1人で対処した方がいいんだろうな…」
いつのまにか私の前に立っていた天弥君は独り言のようにそう呟く。
「おい、ガキ。なめてっところ…」
男が言い切る前に天弥君の拳が男の顔を叩いていた。男は先ほどの奴みたいにうずくまって顔を押さえている。
「溝口さん、さっきの話の続きなんだけど、君のその感覚の正体は多分僕からじゃないよ」
「このガキが!」
男2人は天弥君にむかって拳をふりかざす。天弥君はひらりと避けてなにもなかったように話を続ける。
「そのビリビリの正体は多分『死神』だよ」
「…は?」
天弥君はそう言って残り2人の男に制裁を加えた。
***
「ど、どうかな?信じてくれたかな」
天弥君が4人の男を倒した後、場所を変えて私は彼がさっき呟いていた『死神』のことについて話してもらった。説明されただけじゃ分からないだろうとさっき男4人を倒せるほどに強かった訳や、その場で自分の鞄が宙に浮くなどの超能力をみせてもらったし、何回か天弥君が手を叩くたびに私が感じるビリビリが消えたりまた普通に戻ったりなんてされた。
「うーん、正直まだ実感がわかないというか」
「えぇ…」
「でもまぁ信じるわよ。実感なんて後からいくらでも湧くだろうし」
「そ、そっか。それで…えっと」
天弥君は急にもじもじしだす。そういえば私、彼に告白したんだっけ。
「そうそう、さっきの告白はもちろんなしよ。だって勘違いだったもの。明日からまたただのクラスメイトだからね、じゃあね。」
「う、うん。じゃあ…」
彼はあからさまに暗い顔をする。
…そっか。この子、友達がいないんだ。
「…あーもう!勘違いしたのは私のせいだし、恋人は無理だけど友達ぐらいにはなってあげるわよ!」
「え、友達?」
「そう、友達!」
「ほ、ほんと!?」
「ほんと!それじゃあまた学校で、天弥君」
私は踵を返してその場を去る。
すこし歩いて振り返ってみると、天弥君が勢いよく手を振っていた。
…なんで彼には友達ができないのかしら。
***
「なんか凄いなあの女。鞄浮かせても全然驚かなかった」
溝口さんがいなくなったのを確認して、安らぎが口を開く。
「そうだな。」
「お前、いつも同い年の奴と喋るとあんなに情けなくなるのか?」
「ああ、そうだな。」
「『友達』ができて嬉しいか?」
友達?その言葉で上の空だった俺の心が帰ってくる。
そうか、俺に今友達ができたのか。俺の心はどんどんと熱も持つように熱くなってくる。さっきまで浮遊してたくせに騒がしい奴だ。まぁ俺なんだけど。
「わ、悪くないな。ふふ、ふふ…」
俺は不気味な含み笑いをしてしまう。
「うし、帰るか」
安らぎはそう言ってトボトボと進む。俺もその後に付いていく。
「あ」
「ん、どうした?」
そういえば、ノート貸してもらうの忘れてた。
お久しぶりです、2週間ぶりです。最近はいろいろと忙しいフリしてるので書けませんでした。あと最近気づいたんですけど30話分くらい貯めて1日1投稿でやっていった方がいいですね。なかなか小説を書くのは難しいです。でもやっぱり書いてて楽しいですね。




