第10話 死神『ナイト』
私生活が忙しくてめちゃくちゃ間隔空きましたが、僕は元気です。
「新生天弥さん、検温のお時間です」
女性看護師が天弥の部屋に入ってくる。
「もうそんな時間か。それじゃあ天弥君今日は失礼するよ」
「あ、はい」
看護師と入れ違いになるように浅沼と虎之助が病室から出て行く。
廊下を歩きながら虎之助は汚いメモに今日記録したことに目を通す。
「ほんとにあいつのこと信じていいんですかね」
「嘘を吐いているとは思わなかった。仮にデマを言ってたとしたら龍之介との関わりが謎だ」
「兄貴…」
虎之助と龍之介は兄弟であり浅沼と龍之介は友人関係であった。子供の頃はよく3人で遊んでたのだが浅沼と龍之介が十歳の頃、ある事件をきっかけに龍之介は変わってしまった。
「虎、またあのこと思い出してるのか?」
龍之介というワードを聞いて先ほどから視点が定まっていない虎之助に声をかける。
「あ、いえ。別に…」
「とりあえず今は龍之介の跡を追うことに集中するんだ」
「は、はい」
「それともう一つ。今回カフェでの事件、客が飲むものに薬物を混入させるなんてすぐ警察にバレること、いくら馬鹿でも分かるはずだ」
「ええ、リスクが大きすぎます」
「こんな狂気じみたことなにか確実に逃げ切れるような策略がない限りやらないはずだ。例えば、事前に警察が動くことを知っていれば、警察が来る前に逃げるなんて簡単なことだ」
「ま、まさか…」
「おそらく、俺達の中に裏切りものがいる」
*****
「おい天弥、さっきから外で待たせてる奴がいるんだが、連れてきて良いか?」
検温が終わり暇な時間を持て余してるところに安らぎが窓を開けながらそう言う。
「待たせてるって誰をだよ」
「おいおい、俺達が何でヤクザ達と争ったのか忘れたのかよ。」
「ヤッホー天弥!ウチのわがままのせいでこんな目に遭わせちゃってほんとごめん!」
安らぎが開けた窓から勢いよく星影夢が入って来る。
「うわ!ほんとにウチらのこと視えてんの!?マジやばくね!」
「こいつが視える眼の持ち主か」
続いて2人の死神が病室に入ってくる。
「し、死神」
「そう身構えるな、敵じゃない。俺の名前は騎士ミカちゃんの彼氏でありミカちゃんだけの英雄だ」
「きゃー!ナー君かっこいー!もぉ好き好き好き好き好き好き好き!」
ミカちゃんという死神は騎士に抱きつく。ミカちゃんの姿は星影夢に似ているがラメが入っているのか顔部分が少しキラキラと青く光っている。騎士の方は人型の骸骨でマントを羽織腰にはレイピアがついており、騎士にみえなくはない姿をしている。
「もぉミカちゃんのタメなら例え火の中水の中、天国地獄。どこでも駆けつけるよ!」
ミカちゃんと騎士は俺達の存在を忘れたかのようにイチャイチャし始める。
「この2人がウチの友達~こう見えても騎士の方は死神の中ではめっちゃ強くてぇまじやばだから!」
「そ、そうなんだ。それでこの死神が神鬼を見たの?」
先ほどまでイチャイチャしていた騎士が『神鬼』というワードを聞いた途端こちらに振り向く。その黄色く光った眼にはさきほどからは感じなかった威圧感がある。
「お前神鬼に会ってどうしたいんだ」
先ほどのミカちゃんとのやりとりとは対照的な口調で問いかけてくる。
「あ、姉の魂を還してもらう」
「還してもらえなかったら?」
「多分、戦うことになる」
「やめておけ」
「え?」
「勝てないぞ」
「天弥だけで戦うんじゃねえぞ。俺もいる」
騎士の言葉に反感をもった安らぎが会話に入る。
「結果は変わらんよ」
「なんだと?」
安らぎは騎士に威嚇するように顔を近づける。騎士は全く動じずにまたしゃべりだす。
「憑依だかなんだか知らんがあいつは本物だ。支配している魂の数が比にならない」
「やってみなきゃ分からねえだろ」
「分かるさ、俺が負けたからだ」
「え、うそ。騎士君それ初耳なんですケド」と星影夢が口(と思われる部分)を押さえながら言う。
「俺もミカちゃんに会う前はヤンチャでな。昔はよく死んだ生物の魂を取り込んで他の死神と手合わせしていたものだ。だが神鬼に出会って俺は井の中の蛙だと知った」
「でも俺達には憑依がある」
と安らぎが言うと騎士は安らぎの肩を押して距離を取り「じゃあその憑依がどんなものかみてやるよ」と言った。
「ちょ、騎士君天弥は傷を負ってて…」
「いや、傷ならほぼ完治してるから大丈夫だよ」
天弥は星影夢の言葉を遮るように言う。
「決まりだ。ミカちゃ~ん!ちょっとこのお馬鹿さん達に現実見させてあげるからちょぉ~とだけまっててねぇ~!?」
「もぉ~!帰ってきたら100万回頭なでなでね!」
「もぉほんとに可愛いなぁ!絶対すぐ戻るね!」
そう言って騎士は先ほど入ってきた窓から外に出て付いてこいと言わんばかりに突き進む。安らぎは天弥の体に入り込みそのまま窓から外に飛び出して屋根から屋根へと移りながら騎士の後に付いていく。
人に見られないかな…
そんな心配をしながらも騎士について行くと騎士は河川敷で動きをとめそこに着地する。
「丁度よさそうな場所だな」
綺麗に整えられた芝生の隣には川がある。
受験や恋の悩みで夕陽を見ながら体育座りして考えてる学生を想像してしまう、そんな河川敷だ。
「俺に一撃でもあてたらお前達の勝ちだ。地に頭をつけたら俺の勝ち、それでいいか?」
騎士があたりを見渡しながらそう言う。
「舐めやがって…」
俺の声を使って安らぎが言うとそのまま騎士の方へ一直線で飛びかかる。なんの合図もなしに飛び込むのは半ば反則なんじゃないかと思ったが俺は今体が動かせないので黙っている。
体をひねり、その反動を使って騎士の顔面めがけて拳をはなつ。騎士の顔面と俺の拳との距離が数ミリというところで騎士がその場にいないことに気づく。拳は空気を勢いよく叩き、空振る。俺はキョロキョロとあたりを見渡すが騎士の姿がない。
「こっちだ」
真上から声が聞こえ振り向くとそこには、直立不動の騎士が浮いておりそのまま勢いよく降りてくる。腕をクロスさせてすんでの所で防御をするが予想以上の力が体中に入り込み、地面に俺の足がめり込む。
急に体に負荷がこなくなったと思うと今度は脇腹に騎士の足がめり込んでいた。
「ぐはっ…!」
情けないうめき声と同時にそのまま川の方へと体が回転しながら吹っ飛ぶ。天弥は川を越えてそのまま向こうにもある河川敷に激突する。背骨が折れるのではないかと思うほどの痛みが天弥を襲う。
「憑依ってのはこんなもんか?」
騎士はすでに天弥の目と鼻の先に移動しており、首にレイピアを当てる。
「そういえば地に顔がついたらお前達の負けだったな」
そう言って騎士はかかと落としで天弥の顔を地面にめり込ませる。一瞬で天弥は意識を失い安らぎが追い出されるように天弥の体から出てくる。
「そういうことだ。姉のことは忘れて静かに暮らすんだな」
「はぁ…はぁ…て、てめぇ…」
安らぎにももちろん痛みは伝わっており、膝をついて息を整えている。
「どうしてそんなに死んだ者の魂にこだわる?魂が天に還ったからってもう一度会える訳ではないんだぞ」
「だからって何もしないは理由にならねえんだ、違う人生でももう一度この世で生きて欲しい。幸せに生きて欲しい、だから神の元に送り届けてやりたいんだ…!」
「わからん、何一つわからん。生まれ変わったところでまた人間として生が与えられるかも不明だし、仮に人間として生まれ変わってもその人生が幸せなものになるかも分からないんだぞ」
「分からなくていい。俺だけが分かってれば十分なんだよ…俺にこの【名】をくれたあいつのために、俺は動かなきゃいけないってことは…俺だけが分かってればいいんだよ!」
「・・・・」
安らぎはよろめきながら騎士の胸に向かって拳を放つ。その亀と同等なスピードの拳を騎士はなんと受け止める。
「おっと、拳が当たってしまった。俺の負けだ。」
最近、自転車が壊れたんで母親の電動自転車乗り回してるんですがいいですねあれ。坂を一生懸命登ってるノーマル自転車の人達を一瞬で抜き去る優越感はたまりません。実際はなんか恥ずかしいです。
さて、話は変わるんですけど今回から人物の動き説明の時天弥君だけ『俺』という表記にしてたんですが、なかなか使い勝手が悪くて天弥君も『天弥』で表すようにしました。普段はこういう所は最後まで『俺』で突き通したいという訳の分からないところで頭がカチカチのカチになってしまいがちですが致し方あるまいと思い柔らかくしました。まぁぶっちゃけ『俺』と『天弥』を両立すればいいだけの話ですが。僕の小説を読んでくれてる人がいると信じて読みやすいように書き方を少しずつ変えていきたいと思います。




