5. 無邪気な大兵
「こらーーーっ!落ちろ!
お店壊したらだめなんだよーーーっ!!」
…空中の空トカゲの脚につかまり、自分の体重で地面に引きずりおろしている。
その後は首をひねってやったり、地面に叩きつけたり…サクサクと空トカゲを倒していく。
新品の兵士の制服を着た、この男。
栗色の髪。
緑の瞳。
そして何といっても、この長身、体格。
ガタイが良すぎるが、服装からして、多分新米の兵士だろう。
ひょっとして、今日入隊?
すると自分の同期か…。
同期がこんなアスリートみたいな奴ばかりだったらどうしよう。
友達できなそうだな、とアシュリーは思った。
大柄の青年は、アシュリーの存在には全く気づいていないようで、空トカゲを倒すことに執心らしい。
しかし…如何せん、数が多い。
一体ずつ倒していたのでは、キリがない…。
アシュリーは、思い切って声をかけた。
「おい!お前」
青年が、振り向いた。
「あっ!兵士さんだ!来てくれたんだね!」
「違う!俺、今日入隊なの!」
「あっ、そうなの?僕と一緒だね!
僕の名前は─────」
「いやそんなん後でいいから!
お前ちょっとじっとして!魔法で片付ける!」
魔法。
そう聞いた青年の目が輝いた。
「魔法!ねぇ、見たい!見たーい!」
「分かったから伏せろ」
「はーい!」
アシュリーは、もう一度意識を集中させる。
全身に巡る魔力を操り、魔法陣を起こす。
シャツの鎖骨のあたりから、青い結晶の光が透ける。
何十体といる、空トカゲ。
その全てに行き渡るように──────。
「光れ!炎のレッド・ベリル!!」
胸元の結晶に、赤の光が満ちた。
魔力が体を一気に流れ、炎をつむぎ、燃やす。
空トカゲの群れを一瞬のうちに灰にした炎。
魔力をおさめると、火は、風に混ざるように消えていった。
「…っは、
…ハァ…ハァ…ふぅ」
魔法を使うときに息を止めてしまう癖。
これは割と本気で直したい。
そして、それから─────
やってしまった。
シャツの胸や腹が割け、青い結晶が顔を出している…。