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第1章:かなり最低な男女の出会い 1 なんだこいつは 

 「おい、君。大丈夫か?」

 一応、日本語で話しかけてみた。

 かなり顔色が悪い彼女は、一応、覗き込んだ俺の顔に気が付くと、少しだけ顎を引いてこっちの声が聞こえている意思表示をした。

 しかし声が出せるほどの元気がない様子であり、地面に倒れたままの彼女をとりあえず電柱に寄りかからせて、取るものもとりあえず、さっきのコンビニに駆け込んで水と栄養ドリンクを数本掴んで、思い出したようにスポーツドリンクも一緒に買いあさり、また電柱のもとに駆け寄る。


 「とりあえず、これ飲めるか?」

ミネラルウォーターのペットボトルの封を開けて、彼女の前に差し出してやると、震える手で受け取ったペットボトルの中身を怪訝そうな顔押しながらもゆっくり口に含む。

 次の瞬間、彼女の目に生気が宿り、一気にボトルの中身を飲み干す。

 (なんなんだ、この女?なんか怖い・・・!)

 飲み終えたボトルを俺のほうに突き出し、何事かを言ってるのだが、いかんせんよく聞き取れないおそらくは外国語であろう言葉が、わからない。

 なんの自慢にもならんが、英検3級程度の語学力で、それも高校生の時の話だ。

 ただ、数少ない知識でなおも続く未知の言語を聞いてみても、英語・ドイツ語・フランス語・むろんハングルや北京語の類でもない。

 俺が彼女の言葉を理解できず、首をかしげていると、言葉が通じていない状況にようやく気が付いた彼女が、なにやら耳についていた大ぶりのイヤリングと、首元のチョーカーについていた押し釦スイッチのようなものをいじりだした。

 『・・・ぁあ、そこの。』

 「ほわっ!びっくりしたー!」

 『大声を出すな、喧しい。』

 「あぁ、すまん。って、なんだ、日本語喋れんじゃねぇか。」

 『お前の知能レベルに言語を引き下げて自動翻訳を使っただけだ。』

 「はぁ?言葉が通じたと思ったら、意味わかんねぇよ。」

 エラそうな物言いと、水でもくれてやったことに少々の公開と呆れを覚えて、とりあえず俺は立ち上がり、この女には構わないことに決めた。

 「その水はくれてやる。さっさとその痴女一歩手前みたいな服を着替えて家に帰れ。」

 金髪女に背中をむけて歩き出そうとした瞬間、足首というか、ズボンの裾に絡みつかれた。

 赤い波なら蹴飛ばしてマシンが叫ぶところだが、仮にも行き倒れみたいな女を蹴り剥がすのは、少し心が痛んだのでもう一度だけ対話することにした。

 「なんだよ、まだなんかあるのか?」

 さすがにちょっとムカついて、不機嫌さを隠さずに声に出す。

 それでなくても、さっき買った缶チューハイに水滴がついて、そろそろぬるくなり始めてるのにもムカついてるが、それでなくても来月からの仕事の口がなくなってしまい、正直途方に暮れていたのだ。

 『・・・立てんのだ。力を貸せ。』

 「断る。さようなら。」

 『女が困ってるのに、手も貸さないとか、この【世界】の男は薄情者か!?』

 「この【世界】かどうかは知らんがなぁ、助けた相手に礼も言わずにてめぇの欲望や希望だけまくしたてるどこぞの半島住まいの連中と同じメンタリティしか持ち合わせない人間になんざ、だれが助けるかよ。その2本の足できっちり立ち上がって、さっさと甘やかしてくれる奴がいる家に帰れ、ど阿呆が。」

 本気でこんどこそ金髪女を蹴り剥がしにかかろうとしたが、どこにそんな力と器用さがあったのか、気が付いたら俺は背後からしがみ付かれておんぶするような格好になっていた。

 無駄にでかいアングロサクソン系っぽい特有の肉の塊が、俺の背中から押し付けられる。

 「いいから降りろ!おっさん相手だと思って舐めたマネするんなら、こっちにも覚悟があるぞ。」

 『事情なら他の場所で説明する!だから、とりあえずお前の住処まで連れて行け!』

 「・・・そうか、そんじゃこのまま警察までご一緒願うか。不法滞在の外国人ですって引っ張ってきゃぁ、流石にこの辺の事なかれ主義のお巡りだって、手柄になるかもしれんと思って柄抑えてくれるだろうよ。」

 『助けてー!この人痴漢ですー!犯されるー!』

 「止めンか馬鹿たれ!」

 ボロ雑巾でも引き裂くような声とはいえ、曲がりなりにも女の悲鳴だ。

 異常を察した野次馬がいつの間にか少なからずおり、これ以上の注目を避けたい俺は、この馬鹿女を黙らせる手段をもたないままに、やむを得ず俺の家まで連れていく羽目になった。

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