8月10日-(7)-
(あ、でも、これだと)
この部屋には舟山さんが一人になってしまう。
「あの、舟山さん」
あたしは首だけ部屋の中に入れて声をかけた。
「え?」
舟山さんが本から目を離して、こっちを見た。
「ゴメン、ここ舟山さんだけになっちゃうから、一緒に来てよ」
「え?」
一ノ木さんがいた辺りを見た舟山さんは、すぐ立ち上がった。
「・・・うん」
一ノ木さんが部屋を出て行ったのに気づいてなかったみたいで、舟山さんは部屋から出てきた。
「ありがとう」
「・・・」
舟山さんが小さく首を振ると、あたしと舟山さんを待つようにしてた一ノ木さんが、建物の奥の方へ向かって歩き始めた。
「3人でどこか行くのか?」
「!」
突然後ろから声が聞こえてビックリした。
身体ごと振り返ると、村井くんだった。
「あ」
村井くんの後ろを通って藍川くんと田月くんが部屋の中に入っていった。
「どうした?」
「あ・・・」
一ノ木さんに言われて廊下に出ただけだから、あたしに尋ねられても何も答えれないし
「曽根嶋さん、わたし」
舟山さんは部屋に戻ってしまった。
「・・・曽根嶋も一ノ木も気を付けろよ」
あたしが何も答えないからだろう、村井くんも部屋に入っていく。
「・・・」
男子3人が戻ってきてもう一人じゃないんだし、あたしを一ノ木さんとだけ行かせるっていうのは当たり前の判断だと思ったので、もう1回身体の向きを反対にしたら、ほんの少し離れた所で一ノ木さんがちゃんと待っててくれた。
「ゴメン」
「・・・」
ゆっくりとまた歩き出す一ノ木さん。
「舟山さん一人はヤバいかと思ったから」
「・・・」
「でも、男子が来たから大丈夫だね」
「・・・」
なんかあたしだけ話してるみたいだけど一ノ木さんだから仕方ないし、後ろをついて行くしかないのかもしれない。
「どこ行くの?」
「・・・」
「何か話したいことでもあるの?」
「・・・」
ずっとうつむきながら歩いてた一ノ木さんだったけど、この質問にだけは小さく首を振ったような気がした。
「そっか・・・」
話があるわけでもないようだ。
(ってことは・・・)
一ノ木さんは、あたしをどこに連れて行って、何をしようとしているんだろう。
こっちの奥にもトイレはあったはずけど、さっきの部屋を出て右に行った方がずっと近くにあるから、わざわざ遠回りする意味なんてない。
(まあ、そんな遠く行くんじゃないし)
結局は建物の中なんだから、もう少しで着くだろう。
(どこなんて、どうでもいいか・・・)
そんなことを考え始めた丁度そのとき急に、廊下の突き当たりまで来た一ノ木さんがピタッと止まった。




