8月10日-(6)-
部屋の中には入らないで、まずのぞき込んでみる。
(・・・・・)
奥の部屋に一ノ木さんと舟山さんがいるの見えた。
「じゃあ、俺達はここで」
頭の上から声が聞こえる。
「曽根嶋、いいか?」
あたしの頭越しに仁藤くんも部屋の中を見たらしくて、開いたままの奥の部屋のドアのすぐ内側に舟山さんがいて、少し離れた所に一ノ木さんもいるのが分かったみたいだ。
「うん、鹿生くんも安齊さんも、ホントありがとう」
「いいよいいよ」
安齊さんが胸の前で軽く手を振った。
「じゃ、また明日ね」
「うん、明日」
手を振り返して、部屋の方に身体を向けた。
「・・・お帰り」
あたしの方に目を向けないで、本に視線を向けたまま舟山さんが言ってくれたので
「うん、ただいま、舟山さん」
会釈にならないくらいの動作をしながら部屋の中に入った。
「一ノ木さん、ただいま」
「・・・」
一ノ木さんは本から目を離したけど、たった今のあたしみたいな感じでペコッとお返ししてきた。
「・・・」
あたしもまぁ気が強かったり明るいタチじゃないけど、ずっと前から一ノ木さんのおどおどした態度を見てたし、理璃がいたときはともかく、この3日一ノ木さんと話すこともなかったから、仕方がない。
(それよりも・・・)
あたしのやるべきことは部屋に帰ってきて終わりなんかじゃなくて、帰ってきてからが本番なんだ。
「・・・・・」
本を読んでいる二人のわきを通り抜けて、まず奥の部屋まで行く。
(あ・・・)
この部屋は、村井くん、田月くん、藍川くんの男子3人も使ってるけど、奥の部屋に誰もいなかった。
ということは、今ここにいるのは、あたしと一ノ木さんと舟山さんだけみたいなので、かなりホッとした。
すぐに部屋の中に置き忘れてないか探すことにした。
といっても、この部屋はドア以外の場所が全部壁になってるので、カーペットの上を見るだけで良かったけど
(ぇ・・・)
本当に見るだけで終わってしまった。
何も落ちていなかった。
心臓がスゴい勢いでドクンドクンとし始める。
奥の部屋から、舟山さん達がいる部屋に戻る。
通り抜けながら、さりげなく見たときと同じで、ここのカーペットにも落ちていたりしない。
(ぅ・・・)
結局、バッグの中にはなかったし、集会室にも廊下にもなかったってことだ。
そのとき、奥から戻ってきたあたしを見つけた一ノ木さんが、立ち上がってこっちに来た。
「・・・ちょっと」
あたしの横に来たところで、小さな声を出した一ノ木さんが、そのまま部屋を出て行く。
「?」
何だか分からない。
(だけど・・・)
たぶん一緒に来てってことなんだろうから、一ノ木さんに続き、あたしも廊下に出ることにした。




