8月10日-(5)-
いくら探ってもないので、ポケットかバッグに入ってるとか服のどこかに引っかかってるとか、そんな考えはやめた。
集会が終わってずっと、必死にさりげなく集会室の床を見回してみたけどなかったんだから、きっと集会室じゃない。
(だったら・・・)
今日は少し早めに、6時前から夜ご飯を食べ始めて、食べてる間すぐ脇に置いてたのを覚えてるから、食堂に持って行ったのは絶対間違いない。
その後、一旦いつもの部屋に戻って、そのときも持ってたって記憶してる。
そこからどうだったかは分からないので、落としたりしたんだったら、廊下かいつもの部屋ってことになるんだろう。
視線を左右に動かしながら、ゆっくりと廊下を歩く。
結構暗くなってきてるのかもしれないけど、まだ何が落ちてるのかも分からないくらいの暗さじゃない。
角を曲がろうとしたら、少し離れたところに安齊さんがいた。
安齊さんは鹿生くんと仁藤くんが挟むみたいにしてる。
(・・・・・)
あたしと違って安齊さんには、いつも一緒にいてくれる人がいる。
「あ」
安齊さんが、あたしに気づいたみたいだ。
「曽根嶋さん」
軽く手を挙げてくれたので、あたしも胸の前で少し手を振ると、鹿生くんと仁藤くんもこっちを見てきた。
「一人なの?」
言いながら安齊さんがこっちに歩き始めたので、他の二人も一緒に動き出した。
「ああ、うん」
「曽根嶋さんの部屋は医務室の隣だったよね?」
「うん」
「ヒデくん、健ちゃん」
安齊さんが左右の二人に順番に目をやると
「部屋に行くんだろ?」
「仕方ないな」
仁藤くんと鹿生くんは、あたしと部屋まで一緒に行ってくれるようだ。
「ありがとう」
「いいよ、やることあるわけじゃないし」
「うん・・・」
さっきチラッと思ったとおり安齊さんにだったら、あたしの今の状況を話しても大丈夫なはずだ、きっと。
それに、あたしなんかのためにここまでしてくれる仁藤くんと鹿生くんにも、話して大丈夫なんじゃないかと思う、たぶん。
「行こう?」
「あ、うん」
安齊さんに促されて廊下を歩き始めるけど、元々の目的を果たさないわけにもいかない。
できるだけさりげなく、廊下を見渡しながら歩く。
(でも、やっぱり・・・)
既に失敗してしまってるんだし、これ以上失敗するわけには絶対いかない。
今ここにいるのが、あたし達4人だけだって間違いなく言えるなら、なくしてしまったことを打ち明けられると思う。
けど、どこで誰が聞き耳を立ててたりするか分からないから、やっぱり今は言えない。
どうにかして、自分で解決するしかない。
でも、廊下のあちこちにホコリとか綿ゴミとかが落ちてるのは見えちゃったのに、肝心のものは、ない。
そして、いつもの部屋に着いてしまった。




