8月10日-(4)-
(どうして・・・)
すぐ隣にさえ聞こえないようにしようと、口に手を当てて溜息をしてから、キョロキョロ何か探してるって思われないため、ゆっくりと、ホントにゆっくり周りを見る。
もう夜の集会も終わったから、そそくさと集会室を出て行く人もいるし、残って話をしてる人もいる。
あたしはと言えば、変に見られないように注意して、できる限り目だけを動かしながら集会室の床を見渡す。
見える範囲になければ、ちょっと首を回してから同じ事を繰り返してみた。
さっきからずっとやってるけど、やっぱり、見つけられない。
(どうして・・・)
いつまで探してもしょうがないみたいなので、あたしも集会室を出る。
廊下に出ると遠くに人影が見えるだけで、近くに誰もいなかった。
(今のうちに・・・)
ゆっくりと、ホントにゆっくり全身を触る。
でも、服のどこかに引っかかっているわけではないみたいだ。
(じゃあ・・・)
今日着てる服は、スカートの左右にしかポケットがついてないから、ポケットに入ったんじゃないかどうか、両方に手を入れて探る。
ポケットには何も入ってない。
「・・・・・」
どこにも人影がなくなった。
集会室ではできなかったけど、誰も見てない今なら大丈夫だ。
(そうだよ、ここに入れたんだ)
自分でも忘れてるだけで、バッグにしまったはずだ。
バッグを左腕に掛けて、右手で中を引っかき回す。
だけど、ない。
増えることばっかり気にしてたら、減ったのは気づかないんだろうか?
安齊さんに言われたことは、スゴく良く分かったつもりだった。
肌身離さず全部の荷物を持ち歩くというのは、いつのまにか自分の物じゃない物を荷物の中に入れられないようにするため、簡単だけど確実にできることだ。
でも、あとで思ったのは、もし、あたしの荷物なのに誰の物か確認されたら、どう答えればいいんだろうっ、て聞いておけば良かったってこと。
だって、自分以外の物を持ってたとかいうことになって、理璃がいなくなってしまったんだから、あたしだって、いつ同じ目に遭うか分からない。
まあ、ホントに自分の物しか持ってないんだから、あたしのだよって堂々と言えばいいのかもしれないけど・・・
目をギュッとつぶって、ゆっくり頭を振る。
今は、そんなこと気にしてる場合じゃない。
早く何とかして見つけなきゃ。
ほんの少し前のあたしだったら、のん気に聞いて回ってたのに、今は聞くわけにはいかない。
たぶん、安齊さんになら聞いても大丈夫だろうけど、安齊さんが知らなかったら、そのあと一緒に探してもらうなんてできない。
とにかく、あたし一人で、どうにかして見つけないといけないんだ。




