8月10日-(3)-
あいつが愛想笑いを浮かべた顔を遠くから眺めてた。
不思議でしかない。
どうしてだろう?
いくら考えたって俺には解らない。
あいつが自分の行動を決めたわけは、いくら想像しようとしても、何も思い浮かばない。
ただ、俺だっていつも正しい判断ができるわけじゃないけど、あんな奴よりは少しでもマシな判断ができるはずだ。
ここに来てからあいつはあんな奴と一緒にいることが目立つようになってるけど、もし今あいつから、これからどうしようかって相談されたら、あんな奴と一緒にいた方がいいとは絶対言わない。
(でも・・・)
じゃあ俺は、どうするのがいいと答えればいい?
それに、あいつが決心したわけは判らなくても、何をしようとしてるかはさすがに判る。
あいつも自分の身を守ろうとしてるからこその決心。
(・・・・・)
そういえば大翔は、言わないことが伝わるわけないというようなことを言ってた。
確かに大翔の言うとおりなのかもしれない。
でも、だからって、あいつに言うわけにはいかないことばかりだし、大体、あいつを目の前にした時、結局、どう切り出せばいいのかだって俺には判らない。
要するに俺ができることなんて、ああしてるあいつをただ見てることくらいだ。
それに
(今日は何日だっけ?)
なんて考えるまでもなく、今日は、もう10日・・・
昨日までで10人だから、10日もしないで10人が死んだ。
このスゴく下らない状況に乗って、他人を追い落とそうと、他人を死なせて平然としてる奴がいる。
そいつにすれば、10日で10人って、どんなペースなんだろうか。
まさか遅すぎるとか感じてるんだろうか。
まあ、そんな奴が何をどう考えているか考えても仕方ないんだから、俺が考えなければいけないのは、どうすれば追い落とされないかで、それを二日目からずっと考えてきたし、おとといくらいからは余計考えなくちゃいけなくなってて、今朝も繰り返し繰り返し考えてる。
結論が出たこともある。
自分を守るのだって難しいだろうと解るのに、俺は、あいつも守りたいって強く思ってること。
あいつが自分で努力する他に、身を守るために誰かに協力して欲しいとか誰かに守って欲しいとか思っていても、守って欲しかったり協力して欲しいその誰かが俺とは限らないこと。
(・・・・・)
まあ、多分、あいつは俺を頼ったりしないだろう。
でも、もし、俺があいつを守りたいと思っていることを、あいつに伝えられれば・・・
でも、もし、あいつに、誰に守って欲しいのかを訊ければ・・・
(何か変わるのか?)
あいつが愛想笑いを浮かべた顔の横を無言で通り過ぎる。
言わないことは、絶対あいつに伝わらない。




