8月10日-(2)-
(あ・・・来てる)
今日は愛麗沙が国王。
愛麗沙が国王になるのは2回目。
おとといが1回目で、そのときは、端末をずっと身に付けておくという法を作った愛麗沙。
端末は、この生活では一番大事なものの一つだから、ずっと身に付けておいた方がいいのは確かだろう。
だけど、法にするほどのことなのかどうかっていえば、大げさ過ぎるんじゃないかと思った。
端末は10色もあるから、同じ色を持ってるのは3人しかいない。
それに、最初の日に指紋かなんかで登録されてしまってるらしく、自分じゃない誰かが使うのも無理だってことは、とっくに確かめられてるし、みんながそれを知ってる。
役にも立たない物なのに、自分のじゃない端末を持ってるところなんかを誰かに見られたら、盗ったとか言われるかもしれない。
そんな危険を冒してまで、自分のじゃない端末を奪い取ろうなんて考える人がいるんだろうか。
落としたり無くしたりしないようにっていう親切のための法でもないはずだ。
ただ、もちろん、愛麗沙がバカじゃないのは分かってるから、何の考えもなく、校則みたいなノリで作った法じゃあないはず。
それで、今度どういうのを愛麗沙が作るかは、ずっと気になってたけど、朝起きた頃には、まだ法を作ったっていうメールが来てなかった。
それで、わたしは先にご飯を食べに行くことにして、ご飯食べ終わってから
(もしかして・・・)
と思いながら端末を見たら、来てた。
愛麗沙の作った2つ目の法は、午前9時から午前9時30分までは集会室で過ごす、となってた。
正直、首をかしげてしまう。
みんな集会が終わったら部屋をさっさと出て行くのは確かだ。
でも、昨日みたいに誰か欠けてるときは、誰かが端末で欠けてる人を告発しないようにするため、全員が集会室に籠もってお互いを監視するっていうのは意味がある。
とはいっても、30分は長すぎる。
(何か意味あるのか訊いたら、教えてくれる?)
たぶん、愛麗沙に訊く機会はあると思うけど、わたしはきっと、まだ愛麗沙に信用されてるわけじゃないのに、わざわざ警戒されるようなことをするのが怖い。
もちろん、普通の感覚なら、みんなが破滅するように考えることなんてしないはずだ。
(普通じゃなければ?)
愛麗沙が普通じゃない感覚を持ってることを知ってしまったときから、どんな言葉とか行動にも裏があるんじゃないかってしか思えない。
(でも・・・)
自分が普通でいれてるとも思えなくなってきてる。
あんなことを選ぶんだし、もう
(わたしも普通なんかじゃ、ない・・・)




