8月9日-(7)-
昨日はスゴク暑かったせいで、よけいに気がめいってしまう感じがしてた。
でも、今日は少しだけ涼しい感じだ。
まあ、夏ってことには変わらないし、冷房もないまま過ごしてるから、昼の間ちょっと動くと汗ばんでしまう。
昼ご飯を食べた後、部屋で座って静かにしてたら、何か急に眠くなってきた。
おとといは1秒も寝れてない。
昨日だってほとんど寝れなくて、明け方ちょっと前にウトウトしただけだから、眠気くらい来たって変じゃなかった。
そんな私が眠そうなのに気づいた健ちゃんが
「美結、俺と英基が見ててやるから、眠いんだったら寝てろ」
って言ってくれた。
「うん・・・」
髪をほどいて
「ゴメン、じゃ、ちょっとだけお昼寝するね」
その場でコテンと横になった。
「・・・」
何の夢も見なかったので、まぁまぁふつうに起きれた。
「え?」
でも、時計を見ると、もう4時近くだった。
ほんの少し離れたところに健ちゃんとヒデくんがいてくれるので、まだ少しボーッとする頭で昼ご飯前の栞那ちゃんとのやり取りを思い起こす。
栞那ちゃんが口に左手を当てるのは、前もあんな感じのことがあったし、栞奈ちゃんのあの仕草は、何か考え込むときの癖なのかもしれない。
「え?」
左手で唇をふさいだまま栞那ちゃんが何かつぶやいたので、栞那ちゃんが何を言ったのか全然分からなかった。
「・・・」
それで、チラッと10㎝以上は高い栞那ちゃんの瞳を見上げるようにしたら
「ん」
栞那ちゃんは当ててた手を口から離して、私と視線を合わせた。
「今は持っている?」
「手紙を持ってるかってこと?」
栞那ちゃんが無言でうなずく。
「ゴメン、今持ってないの」
首を振った。
「・・・」
それでも全然栞那ちゃんの表情は変わらなかった。
「あ、でも、バッグの中に入ってるのを、すぐ持ってくるから待ってて」
栞那ちゃんが美愛の手紙を見たいのかと思った私の顔の前で
「・・・」
栞那ちゃんは右手を広げたから
「え?」
1歩後ろに下がってしまった。
「あとでいい」
「あと?」
「次の集会のときに・・・」
左手を口に持って行こうとした栞那ちゃんだったけど、途中でやめて
「私は集会室でノートを落とすから、それに挟んで」
と言ってサッと右手を私の顔の前から引っ込めた。
「え?」
アッケに取られたみたいになった私を、もう栞奈ちゃんは見てなくて、机の上のバッグを肩に掛けて行ってしまった。
「あ、あの・・・」
私の言葉が聞こえたのかどうかはともかく、いつものように栞那ちゃんは立ち止まったりなんてしなかった。
(・・・・・)
私は、集会室で栞那ちゃんがノートを落とすことだけを、もう一度心に刻んだ。




