8月9日-(3)-
そこにヒデくんが帰ってきた。
「英基、他にも何かあったか?」
健ちゃんに聞かれたヒデくんが黙って首を振ったから、他に同じような紙とかは落ちてなかったってことだろう。
「そうか」
「ああ」
もう1回首を振ったヒデくんが私を見つけたようで
「健蔵、美結に渡してくれたよな?」
健ちゃんに尋ねた。
「さっき渡したよ」
と答えた健ちゃんの言葉に続けて、すぐ
「ヒデくん、それでね」
ヒデくんの側に寄って、健ちゃんから渡されたメモ用紙を見せる。
「今、健ちゃんに見てもらったんだけど、ヒデくんも見てよ」
「健蔵に?」
ヒデくんは、チラッとメモ用紙を見ると
「あとで見せてもらうよ、美結」
私のことは見ないで言った。
「うん、分かった」
ヒデくんがどう感じてるか分からないけど、私は美愛からもらった大事な手紙だと思うから、バッグを開けてポーチにそっとしまった。
「ねえ、ヒデくんも戻ってきたし、少し早いけど朝ご飯を食べに行こうよ?」
「飯?」
健ちゃんさえ呆れたみたいだけど、昨日栞那ちゃんに頼まれてやっと自覚したとおり、ここで私ができることは、こうやってみんなに軽い言葉をかけることで、それが一番いいはずだ。
「分かったよ」
ため息をつくみたいに健ちゃんが、苦笑いを浮かべてヒデくんが賛成してくれたので、昨日の夜から猪戸さんは部屋を移っていたし、三人で廊下に出た。
「集会室入る前に、トイレ行ってもいい?」
「ああ、でも気を付けろよ」
「うん、分かってるよ、ヒデくん」
トイレに入って、一応全部の個室に誰もいないか見てから、一番ドアに近い所に入った。
ヒデくんが言うには、そうすることが『気を付ける』ってことなんだって。
「・・・」
内ドアを閉め、バッグから美愛の手紙を出して、目を落とす。
美結へ
↑
2104
可なり ランボウ力
8300
炭
しー・そー なら 見る・□□
トホウにくれる。
さっきも今も、何回読み直したって、やっぱり、全然分からない。
鉛筆で薄く塗りつぶした中に赤抜きだから、ホントは、字そのものが美愛の字かも分からない。
(大体にして、美愛、これで私に何を知って欲しかったの・・・)
もっと分からないのは、美愛のやり方だ。
私は、まぁ、スゴく頭がいいってわけじゃないから、こんな手紙から分かることは、私には何もない。
それは、美愛だって分かってただろうから、私にこの手紙で何か知らせたかったわけじゃないのかもしれない。
じゃあ、ヒデくんに分かってもらうことを期待してたのかな?
そういえば、このメモを私に渡そうと考えた人って、誰?
同じ部屋の人なら、ドアの下から入れて渡そうとするなんて回りくどいことはしないだろうから、同じ部屋ではないのかも・・・




