8月8日-(5)ー
「っとね、栞那ちゃんが言ってたの」
「カンナチャン?」
なぜか不思議そうな顔をするヒデくん。
「それって、榮川のことか?」
「うん」
不思議そうな顔のままのヒデくんから
「榮川が、何て?」
って聞かれたので
「荷物調べてみなさい、って言われた」
正直にホントのことを話す。
「なに?」
「それで、調べてからは、ずっといつも持って歩きなさいって」
「なんだって?」
ちょっとビクッとするような言い方をされた。
「美結、そうなのか?」
「え?」
急に少しヒデくんの口調が変わってしまって、今のは詰め寄られたみたいに感じた。
「っと、なにが?」
ヒデくんの知りたいことにちゃんと答えようと、身体ごと向き直って聞き返す。
「だから、美結が昨日バッグ調べようとか言ってたのは、榮川に言われたからか?」
ヒデくんは、私をジーッと見ながら言った。
「うん」
本当のことだったし
(今ヒデくんに、そう言ったじゃない)
と思ったから、私は簡単にうなずいただけなのに
「…」
ヒデくんは私を見つめたまま固まってしまって、私は、こういう空気に耐えれないので
「どうしたの?なんか気になることあるんだったら言ってよ」
すぐ頼んだけど
「…」
ヒデくんは答えてくれない。
別に頭いいわけでもないけど、自分で自分をスゴくバカってまでは思わない。
その程度の私が気づかない何かに、ヒデくんは気づいたんだろう。
(ねえ、どうして)
そんな目で私を見るの…
「英基」
「え?」
そのとき急に右の方からの声がして、そっちを向くと中岡くんだった。
「ここにいたのか」
「ああ」
ヒデくんに声をかけたはずの中岡くんは、なぜか少し離れた所に座った。
そして、リュックを下ろす。
(・・・・・)
スゴクちょっとしたことなんだけど、何か落ち込む。
昨日から、みんなそれぞれが自分の荷物を持って歩かなくちゃいけなくなってしまってるんだもの。
「これか?」
私が見てたことに気づいた中岡くんが
「昨日の千賀のことがあるからな」
リュックをポンとたたいた。
「ホント肌身離さず持って歩かないと」
「…」
中岡くんの言葉を聞いて、ひざの上に載せてたバッグをキュッとお腹に抱きしめた。
「なぁ、英基」
「なんだ?」
「英基がどう思ってるかはともかく」
腕を組んだ。
せいぜい何秒かだけど、重苦しい沈黙の後に中岡くんは
「千賀は、きっと素直な気持ちで法を作ったはずだった」
言ってから、ほどいた両腕でバーンと強く机をたたいた。
「俺なら、他人の物を盗むなとかにしただろうに、そんな言葉、千賀は使えなかった」
もう一度たたく
「そういうくらいの千賀が、自分の作った法で裁かれるなんて!」
また、たたく。
「・・・・・」
そこは、いつも千賀さんがいた机。




