8月8日-(4)-
ヒデくんの真横に付いて歩き始める。
私を独りにできないってことで一緒にいてくれるのは、私だとダメだけど、健ちゃんは独りでも大丈夫ってことなんだろう。
真横を歩くのも、今朝ヒデくんに言われたからそうしてるわけで、どうしてなのか確かめてはいない。
ヒデくんが言うんだから間違いない、ただ、それだけ。
「美結」
「なに?」
「さっきトイレで榮川と一緒になったよな」
「うん」
「その・・・なんだ・・・」
「ん?」
迷ってるみたいなヒデくん。
「ふつうに、おはようって感じで、あいさつしただけだよ」
たぶん、栞那ちゃんと会ったときどうだったか知りたいんだろうと思ったので、トイレで何があったのか答える。
「あいさつ?」
「うん」
でも、栞那ちゃんが黙ってて欲しいって言ってたから、栞那ちゃんに頼まれたことは教えないつもり。
「あいさつだけか?」
「うん」
栞那ちゃんは私と話したけどトイレは使わなかったっていうのが本当のことだけど、ヒデくんからすれば、入ってから少しして出てきた栞那ちゃんしか見てないから、私とあいさつだけしてトイレを使って出てったってことでも変には思わないだろう。
「女しかいないからって気を抜くなよ」
「うん」
「中まで行けないからな」
「うん」
ヒデくんは、いつもそんなに気持ちとかが顔に出ない人だけど、今は見るからにピリピリしてるのが分かる。
落ち込んでるというよりは、怒ってる感じ。
もし私がヒデくんに、大丈夫かどうか聞いたりしたら、きっとヒデくんは、そういう美結が大丈夫なんかじゃないだろ、と言うんじゃないかな。
ヒデくんには声をかけない。
「健蔵が追い付いて来たら、そのまま食堂に行こう」
「うん」
うなずいたけど、全然お腹なんて空いてない。
相変わらず幽霊になってるみたいな力入らない感じは同じなんだもの。
「そういえば」
「なに?」
「まぁ、俺達にしてみれば昨日、美結に言われて荷物調べたよな」
「うん」
「美結は、どうして荷物調べてみようなんて思ったんだ?」
「え?」
ヒデくんの言い方は、そんな詰め寄る感じじゃなかったけど、ホントにどうしてか知りたい感じではあった。
(・・・)
だからちょっと考えてみる。
荷物を調べるのは、私の考えじゃなくて、栞那ちゃんに言われたことだ。
(言っていいの?)
栞那ちゃんは、いろんなことに気づける人に違いなくて、だからこそ、私にもいろいろ教えてくれる。
さっきトイレで私を口止めしたことは、その方がいいって栞那ちゃんが考えてるからのはずで、逆に荷物を調べるよう言った後、栞那ちゃんは私を口止めしなかったんだから、ヒデくんに言ってダメなことではないのかもしれない。
「美結?」
「え?うん」
そう。
言ってもいいはずだ。




