8月8日-(1)-
パンドラの箱の底に沈んだ
希望という最大最悪の災い
けたたましい、踏切のような音で目が覚める。
昨日の夜、端末を耳元に置いてしまっていたようだ。
(この音は・・・)
踏切みたいな音は、音質からしてイヤな気持ちになるし、実際今までこの音で届いたメールはイヤな中身のものだけ。
「・・・・・」
いつの間にか眠ってはいたみたいだけど、あまり寝た気がしない。
たたき起こされたせいでボンヤリとした頭のまま端末を手に取って画面を見ると、メール1通が届いていて、題名は“@8月7日”。
@8月7日
~裁きに因る死亡者 内海芳毅 千賀理璃 星佑太郎 三浦克哉 柚島美愛~
~裁きに因らない死亡者 なし~
~国家の人口 21人~
「…」
正直、これを見たって何も思うことがない。
もうとっくに知ってたことだ。
2日目、佐藤と根津が裁かれた次の日に届いたメールからずっと、死んだ人を知らせるメールは6時丁度に届く。
佐藤と根津のときも、戸田や工藤のときも、俺は後悔みたいな気持ちをスゴク感じた。
でも、今こうしてても何も思うことがないってのは、この一晩で完全に俺の中の何かが壊れたせいかもしれない。
もう部屋の中は明るいから右左に首を動かしてみると、メールは全員同時に届いているせいで、同じ部屋の中で他にも端末眺めている人がいる。
でも、いちいち反応してるような感じもしてこないのは、やっぱり俺と同じだ。
どこかの何かが壊れたのは、みんな同じなのかもしれない。
(いやいや)
それも違うって昨日の夜に気付いたのを思い出した。
壊れてる奴は、ずっと壊れてた。
昨日壊れたわけじゃない。
なのに、ちょっとしたことで俺は勘違いしてたんだ。
(二、三日だぞ)
たった二、三日誰も死ななかっただけで、俺は、どこか気が抜けてたんじゃないか?
壊れてしまってる奴は、ずっと壊れたままだったし、壊れたまま、ずっとチャンスを狙ってたわけだ。
俺は、それに少しも気付かなかった。
壊れてる様子が、顔つきや目つき、言うこととか、振る舞いなんかで分かるんだったら気付いただろうけど。
(気付いていたら?)
壊れてるのが分かる奴がいたとして、それで俺は、どうするだろう。
俺に何かできるのか?
壊れてる奴を力ずくで止めるのだってできるだろうが、それは危険すぎる。
おかしくなって暴れてる奴を抑え付けたり、ケガまでさせてしまったら、本当に壊れてる奴らが俺を、ケガをさせた、暴力を振るったって、告発するだろう。
そうだ。
本当に壊れてて、本当に俺達の害になる奴らは、いつもどおり変わらない顔で、いつもどおり変わらない振る舞いを続けている。
(このままじゃ・・・)
「あいつを守れないじゃないか」




