8月7日-(10)-
見てたつもりはないけど、視線が珠美佳の方を向いてたせいなのか、珠美佳がわたし目がけて歩いてきて、丁度わたしの横に来たところで脚を停めた。
「・・・・・」
今まで感じたこともないのに、わたしが座ってて珠美佳が立ってるせいなのか、威圧感がある。
「なに?」
腕組みしてる珠美佳に言われたので
「なにって?」
逆に聞き返した。
「こっち見てたから、言いたいことでもあるのかと思って」
「別に言いたいことなんてないよ」
「ふぅん」
動作とか口調とかでモロに出てるとおり、珠美佳はイライラしてる。
それはそうだろう。
ある意味愛麗沙と珠美佳の間でできた役割なのかもしれないけど、さっきみたいに愛麗沙がいいところばかり持ってく感じになれば、珠美佳じゃなくたって気分が悪い。
「愛麗沙には愛麗沙の考えがあるみたいだけど」
一度言葉を切って、腕を組み直した。
「広魅とか梨加子だって、自分のできることやってるんだから」
「・・・・・」
きっと珠美佳は、わたしにもみんなと同じようにしろって言いたいはずだ。
でも、愛麗沙のいるところでは、言えない。
だから、わたしも頷いたりしないで、ただ黙ってた。
「でもさー」
まだ何か言わないでは気が済まないのか、もう一度珠美佳は腕を組み替えて
「バカは死ななきゃってゆーけど」
どこか得意げな表情で言った。
「死んじゃったら、治ったかどうかも分かんないねぇ」
それから、その場で腰をかがめた珠美佳は、わたしの耳に口を近付けて
「ま、あんたはさ、バカじゃないもんねぇ」
ささやくと、わたしの横から愛麗沙の方へ戻って行ってしまった。
(・・・・・)
男子達のことは分からない。
でも、千賀さんと柚島さんが、たぶんわたしと同じだったのは分かる。
もちろん、今ごろ分かったって、どうもならない。
(わたしと二人に、差なんてあった?)
(二人と支え合うことはできなかった?)
そんなことを考えてたら
「逆さま?」
急に声まで出してた自分にビックリする。
そうだ。
今は、もう逆さまになってる。
いつのまにか、ひどい人達に命を握られてしまってた。
今日までぼんやりなんてしてなくて、ちゃんと注意して過ごしてた、つもり。
なのに、結局ひどい人達に命を握られてる。
(なにがバカで、バカじゃないんだろ・・・・・)
(あんな人達に命を握られてしまったわたしは、バカなの?)
(わたしの命を握った気でいる人達は、バカじゃないの?)
(昨日までの人達も、今日の人達も、みんなバカだったの?)
自分の中での問い掛けが続く。
わたしが、いまだに生きてるのって、わたしがバカじゃないから?
裁きに因る死亡者
千賀 理璃
星 佑太郎
三浦 克哉
内海 芳毅
柚島 美愛
裁きに因らない死亡者
なし
国家の人口
21人




