8月7日-(3)-
「今は一人?」
「え?」
意外にも、私から視線を逸らさない栞那ちゃんの方が質問してきた。
「あ、うん」
慌てて何回も首を動かしてうなずく。
「でも、ちょっと先に出てきただけで、すぐに美愛と猪戸さんが来るはずだから」
誰かと一緒じゃなかったことを栞那ちゃんが気にしてるのかと思ったので、そう言うと
「いつも視界に誰か入れておく」
栞那ちゃんは、唇だけを動かして、他は手とか視線とか表情とかは、何も動かさない。
「あ、うん」
「このあとすぐ、荷物を念入りに調べて、その後は常に持ち歩く」
そう言った栞那ちゃんは、突然身体の向きを変えた。
「え?」
そして、歩いて行ってしまった。
「んー・・・・・」
栞那ちゃんが言ってたことは2つ。
いつも視界に誰かっていうのは、今までも言われてきたとおりの、誰もいない所で一人になっちゃいけないってことだと分かる。
でも、荷物を調べるとか、全部持ち歩くって、なんで?
まあ、私は今ポーチしか持って歩いてなくて、バッグとかは夜過ごしてる部屋に置いてある。
一番意味が分かんないのは、荷物を調べるっていうところだ。
(だいたいにして・・・)
私には一人になるななんて言うわりに、栞那ちゃんが誰かと一緒なのを見たことがないし、さっきだって、バッグ、ポーチどころか、栞那ちゃんは手ぶらのようにしか見えなかった。
自分は私と違うって思ってるの?
他の人にはしない注意を私にはしなくっちゃとか思ってるの?
「美結、ごめーん、結構待ったでしょ?」
ちょっと考え込んでしまいそうだったけど、ちょうど美愛と猪戸さんが来た。
「いや、少しだよ」
「そう?」
「そう」
さっき栞那ちゃんにしたみたくへラッと笑わないのは、美愛にはそんなことしなくても大丈夫だからだ。
「今日はスゴい暑いよねー」
美愛は、えり元を動かして風を入れるみたいにしてるので
「うん、そうかも」
同じように私もやった。
「でも、ここってある意味便利だよ」
「え?」
「だって、基本何しても自由だし、ご飯も好きなときに食べれるし」
「んん、まぁねぇ」
「第一」
美愛は、すそから風を入れ始めながら
「シャワーだって浴び放題、着替えもし放題、だもの」
おかしそうに笑った。
「はぁー・・・・・」
こないだ美愛は『美結から元気をもらってる』って言ってたけど、元気をもらってるのは私の方だ。
「そうかもしれないけどさぁ」
作り笑いじゃない笑みが浮かんできた。
「なに?」
でも、帰ってきた美愛の笑顔を見たら、言おうとしたことを引っ込めたくなった。
「自由に過ごせるって言っても、やることないしね」
「うん、まあ、確かに」
美愛が二、三度うなずく。




