8月7日-(1)-
賢くしてたら今日死んでしまう
バカになって明日生きていよう
朝は、ずーっと当たり前に来たし、だから逆に、朝なんて来て欲しくない、って思うこともあった。
朝になったら、いろんなことを始めなくちゃいけないのに、朝は何をやるのもスゴく面倒だし、いつまでも夜が続けば、このまま何もしないで過ごせるのに、って思ったことだってある。
そうやって、毎日ダラダラ過ごしたって、特に何か感じることなんてなかったけど、今は違う。
朝が来てくれると、ホッとする。
自分が今日も朝を迎えれたことに、とにかくホッとする。
誰かに何か起きたりしなかったか確かめるのは、そのあとにやることだ。
(ここんとこ、何もないで来たけど・・・)
と思った瞬間、端末にメールが来た。
8月7日 @国王の法
~今日の法は【集会室で過ごす時以外も端末を身に付けておくこと】にします。 森~
「ふーん」
昨日決めたから、今日の国王が森さんのは分かってて、どういう法を作るつもりなのか気になってはいた。
「実際、端末はいつも持ってるんだし、普通にしてれば平気だね」
来た途端メールを開いた茉莉亜が言うので
「そうだね」
頷く。
「あれ?」
「なに?」
「私のって黄色だけど、茉莉亜のは赤なんだね」
茉莉亜に端末が見えるようにする。
「あ、なに?端末のこと?」
「うん」
「一人ひとり違うのかな?」
「そんなことないんじゃない」
「そうなの?」
「安齊さんとスズミナが、同じだねーなんて話してるの聞いたし」
「へえー、双子同士の色は違うのに、スズミナと美結ちゃんとは同じ色なんだ」
(茉莉亜といると楽しいな)
なんて思ったそのとき
「法律も同じにすればいいんだよ」
と茉莉亜が言った。
「え?」
「何でもない中身を続けてれば、誰にも何も起きないんだけど」
「・・・」
溜息交じりに言うくらいだから、茉莉亜はホントにそう思ってるのかもしれない。
「でも」
茉莉亜に言いかけて、慌てて自分の口をつぐむ。
「でも?」
「あ、っと・・・」
「理璃、何?」
(・・・・・)
目ざとい茉莉亜に何か答えなければ収まりそうにないと思ったので
「何でもないことって、かえって思い付かないよね」
苦笑いを浮かべたつもりで言う。
「すぐネタが切れそう」
苦笑いを続けたつもり。
「うん、そうだね」
茉莉亜も苦笑いみたいなのを浮かべたので、一応は成功したようだ。
(・・・・・)
もちろん、さっき本当に思ったことは全然違う。
今まで、とても守れそうもない難しいこと、私が考えつかない変わったこと、目的の分からない不思議なこと、そんな中身の法律はなかった。
でも、最初の日からもう、二人が違反してしまった。
(案外、ホントは茉莉亜が言うのと真逆じゃないかなぁ・・・)




