表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
LEVIATHAN~Sodalis~  作者: 黄帝
62/269

8月6日-(10)-

 「美結、お休み」

美愛がキュッと手を握ってきたので

「うん、お休み」

と言いながら私も美愛の手を握り返す。

 目を閉じると寝返りをうって、美愛には背中を向ける。

 真っ暗な中、急に今朝の健ちゃんの言葉を思い出した。


 ミユ、ウレシイコトデモアッタノカ?


 違う。

 こんなところに来てから、ほとんど、うれしいことがない。

 たぶん、今朝だってうれしいことは、なかった。

 そういえば、昨日降ってた雨は、朝、目が覚めたときには降ってなかった。

 雨は嫌いじゃないけど、雨降りよりは晴れてる方が楽しい。

 朝、健ちゃんから言われたとおり、もし健ちゃんにさえ分かるほど、私が何かいつもと違う感じがしたんだとすれば、まあ、晴れだから良かった、そのくらいだろう。

(楽しい?)

そっか、晴れてて楽しい気分になったときに、ちょうど健ちゃんが見つけてくれたんだ。

(それにしても・・・)

 思わず謝っちゃったくらいだし、栞那ちゃんに昨日してしまったことは悪いことだった。

 今になっても、そう思う。

 栞那ちゃんに悪いことしちゃった、と思ってはいるけど、どこが、どうして、どのくらい悪かったのかなんて、私は分からない。

 夜どこにいるの、って聞いてみただけだった。

 全然深い意味なんてない。

 私はうっかりしてるから、不思議だなと思ってたことが、そのまま口に出ただけ。

 栞那ちゃんの夜の居場所をホントに知りたかったわけじゃない。

 栞那ちゃんが教えてくれなくたって、適当にごまかされたって、それはそれで良かった。

 いつもフッといなくなってしまう栞那ちゃんが、少しだけ集会室に居続けてるのを見かけて、せっかくだから、栞那ちゃんと、もう少し話がしたかったから呼び止めたんだし、話をつなごうとした。

 あのとき、私の心臓がギューってなって、ドッキンドキンとしたのは、栞那ちゃんの表情が少しも変わってなかったから。

 そう。

 栞那ちゃんは怒っちゃったとか、全然そんなふうには見えなかった。

 全然見えなかったけど、でも、今まで一度だって、誰かの目があんなふうになったのを見たことない。

 好き。

 嫌い。

 無視。

 そんな視線は向けられたことがあって、どんなものかも知ってた。

 あのときの栞那ちゃんの視線は、私の知ってるどれとも違う。

 目が私に向いてても、私の向こう側だけしか見てない。

私は透明じゃないのに、栞那ちゃんの目には・・・映らない。

 私はあそこにいるのに、栞那ちゃんにとっては・・・いない。

 そんな感じ。

 そんな感じがしたから、急に、息ができなくなった。

 そんな感じがしたから、胸が、グシャッと、つぶれそうになったの・・・

 裁きに因る死亡者

  なし


 裁きに因らない死亡者

  なし


 国家の人口

  26人

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ