8月6日-(8)-
夜になった。
いくつかの部屋以外は電灯がないから、夜は真っ暗だ。
仰向けになって、ホゥッと溜め息をつく。
今日だって、もちろん、いろんなことがあった。
ただ、ヒドいことは何も起きなかったのがホント良かった。
(こういう日が、ずっと・・・)
こんな生活続けたいわけない。
一秒でも早くやめたい。
でも、こんな生活をまだ続けさせられるっていうなら、今日みたいにヒドいことのない日がいつまでも続いていて欲しい。
(・・・・・)
そのとき急に、理璃がどうしてるか気になったから、あたしの近くにいてくれるはずの理璃に声を掛けてみることにした。
「理璃、もう寝ちゃった?」
「起きてるよ」
暗がりの中、思ってた以上に近くから、理璃の返事が聞こえてきた。
「もしかして、眠れないの?」
「ちょっとだけ考え事してたんだよ」
「そうなんだ」
「うん」
衣ずれのような音がした。
「!」
理璃は、あたしの腕をトントンとしながら
「でも、もう寝るよ」
とささやいたので
「うん」
あたしも理璃の腕にトントントンとお返しをした。
「お休み」
「お休み」
(・・・・・)
今日一日ずっと言い出せるようなタイミングを見計らっていたけど、結局、理璃には訊けないまま。
何ていうんだろ、理璃には、昨日あたりから悩みっていうのかな、何か気になってることがあるように感じてた。
まあ、理璃は何が気になってるのかが訊けないでいるのは、昨日から続いてる。
そして、そんなあたしの方にも実は悩みがある。
(違うか)
悩みというよりは、理璃に言うことができないから隠してること、だろうか。
理璃に言えば、絶対心配してくれると思う。
(スゴい勝手だけど)
もしかして、理璃を悩ませてる何かと、あたしの隠してることが、ホントは同じだったりしないだろうか。
(もし、同じだったら)
理璃があたしと同じことを悩んでるのって、悲しいこと?
そうだったら、ホントは、あたしは嬉しかったりするんじゃないの?
間違いなく分かってることもある。
とにかく誰かの役に立ちたいって、強く思ってはいるけど、いつも何も始められないこと。
役に立ってあげられる人を選べるのなら、理璃の役に立ちたいこと。
でも、あたしには取り柄が何もない。
ほとんど全部人並み。
そんな自分をイヤってほど知ってるから、昨日理璃が掛けてくれた言葉を何回も何回も頭の中で繰り返してしまうんだろうと思う。
茉莉亜、一緒に頑張ろうね。
あの理璃の言葉に、今でもドキドキが止まらない。
理璃が本気で言ってたかもしれない、と思うだけで、あたしでも理璃の役に立てるような考えが浮かんでくる。




