8月6日-(7)-
謝ったら、それ以上何も言われないし、何も飛んでこなかった。
「珠美佳ぁ」
またスゴく言葉尻が上がってる言い方。
「え?」
あたしの近くだから大体分かるけど、三田さんはビクッとしたように肩をすくめた。
「・・・ゴメン」
そして、取りあえず謝ってしまうのは、三田さんも同じだった。
「は?」
同時にガシャーンって大きな音がしたのは、たぶん、さっきまで自分が座ってたイスを森さんが蹴飛ばすかなにかしたからだ。
「あんたらさー、マジなんも分かってないんだ」
薄暗い中、森さんが向かって行く方向が、あたしじゃなくて一ノ木さんのいる方だったので、ちょっとホッとしたら
「あのさー、梨加子」
森さんにすぐ側まで来られた一ノ木さんが、ヒッという感じの息づかいをした。
「何日、今日?」
さっき三田さんにしたよりもっと冷たい言い方。
「・・・」
「梨加子ぉ」
「む、むい・・・か」
絞り出すような声。
「だよね」
言いながら森さんがこっちに来る。
「6日なんだけど?」
でも、今度もあたしじゃなくて三田さんの横で止まった。
「広魅」
急にあたしの方に顔を向けた。
「え?」
「あんたさぁ、ちゃんと誰か誘ってんの?」
(あ・・・)
そう言われてやっと、あたしには森さんの言いたいことが分かった。
「う、うん」
うなずくと、あたしと同じく、いま分かったんだろう三田さんが
「ああ、うん、うん」
言いながら立ち上げるのがぼんやり見えた。
「あたし、ちゃんとやってるよ」
「そ」
森さんは
「珠美佳ぁ」
バンと音がするくらい三田さんの肩をたたいてから
「ホント、頼むからねぇ」
と言って、もう1回たたいた。
「梨加子もさぁ」
一ノ木さんの名前を呼んで
「あんた、何しなきゃいけないか、ちゃんと分かってんだよねぇ?」
なんか急に優しげな声になった。
「ぃ・・・」
「こういうときだもん、みんなで助け合わなくちゃねぇ」
「ぅん・・・」
「梨加子はともかく、珠美佳」
少し落ち着いたみたいで、声の調子がいつものようになってきた森さん。
「あ、うん」
「誘うたって、声かけるだけでいいってんじゃ、ないよね?」
「あ、そう・・・だよね」
「だから、あんたはさぁ、今日中に誰か連れてくんでしょ?」
「え?」
「は?」
また一瞬で空気が凍るみたいな声に戻った。
「あ、うん、連れてくる」
慌てたような言い方の三田さん。
(そんなの、無理だよ・・・)
そうは思ったけど、あたしだって分かってる。
森さんの機嫌を取るため、三田さんじゃなくても違うことなんて言えやしない。
「!」
そのとき、森さんがあたしの肩に、そっと手を置いたので、広魅、あんたも誰か連れてくんだよ、と言われたような気がして
「うん」
慌てて5回も6回も、うなずいた。




