8月6日-(5)-
当たり前のことをわざわざ法律にしてくれれば、つい間違って破っちまうこともないだろうから、今日の千賀の法律は良かった。
「あーあ、こんなんでいいのかぁ?」
俺とは違って、何でだか不満そうなのもいるようで、しかも俺に向かって言ってるって、当然気づいたから
「何だよ、星」
面倒だけど話を振る。
「だってさ」
星は頭を左右に振りながら
「今日の千賀だって考えて動いてるようじゃないよな?」
得意げに語尾を上げた。
(ホント、面倒なヤツ)
話を振ったのは、やっぱり間違いだった。
「いつまでもみんな仲良しなんて、そんなときか、もう?」
「・・・」
俺は別に星が好きでも嫌いでもないけど、同じクラスのヤツってこと以外の気持ちを持ってるわけでもない。
ぶっちゃけ、知ってるってだけで、友達じゃない。
「何が言いたいんだ?」
「ちゃんと考えてないと死んだ奴らみたくなるってことだって」
(死んだヤツら、ね)
星と同じで、今までに死んでしまった4人と俺は友達とかじゃなくて、ただの同じクラス同士だったけど、なんも悪いことしたわけでもないってのに死んでしまうなんて、かわいそうだなってくらいは思う。
でもきっと、星はそんなふうにさえ思わないから、あんな言い方になるんだろう。
ムカついたっていうか、今もカチンときたから
「その4人が何も考えてなかったなんて、何で分かるんだ?」
言ってしまってから
(失敗した!)
って思ったけど、星は俺の言葉は気にならなかったみたいで
「死んだんだから、何も考えてなかったに決まってんだろ」
鼻息の音がするくらいの調子で言い切った。
「・・・」
(勝手な思い込みか・・・でも、まあ、俺にムカつなかったのはラッキーかな)
星がまだ俺にムカついてなくたって、俺はマジでムカムカがヒドくなってきてて、こうしてるうちに、また星に余計なことを言いそうな気がしてきた。
星はたぶん、自分は何でもお見通しだって信じてるタイプのヤツだろうから、こんなストレスの高いことさせられてるうち思い込みが余計強くなったのかもしれない。
ただ、こんなことになってるうちは、星だろうが敵に回さない方がいいに決まってる。
たかが星を機嫌悪くさせて、何かしら俺が損するなんてことがあったらイヤだ。
「そうだな、あの4人だって、星みたいにちゃんと考えておけば良かったのにな」
わざとらしく、大きくうなずきながら言う。
「ああ」
俺の言ったことでプライドをくすぐられたんだろう、星は満足げにニヤッとした。
(何も考えてないのは、誰よりもお前だろうが)
でも、案外こういうバカの方が、今みたいな状況の中では幸せかもしれない。




