8月6日-(4)-
「あたしね、美結がふさぎ込んじゃったら、どうすればいいのか分かんないもん」
「え?」
美愛が急にマジメな顔をして言うので
「ええー、何それ」
わざとらしいくらいの動きと声で、美愛に突っかかる。
自分としては、不満そうな顔を作ったつもりなのに
「だってさ」
美愛の表情は、全然変わらない。
「あたしは、だいたい毎日、美結から元気をちょこっともらって過ごしてる」
「は?」
「あたしの元気の何分の一かは、いつも美結からもらった元気だよ」
明るい美愛だもん、さすがにそろそろ笑ってくれるんじゃないかと思ってたのに、まだマジメな顔のままだ。
「こんなとこにいたら、余計そうだよ」
「美愛・・・」
こんなとき、何て言えばいいんだろう。
「今は半分、いやもっともっといっぱいかな、美結にもらった元気は」
そこまで言ってから美愛は初めて笑った。
「あたしは、美結がいないとやってけないよ」
「そんなの私だってそうだよ」
すかさず、ちょっと強めの言い方で美愛に返す。
「違うよ」
でも、美愛は、かえってまたマジメな顔に戻ってしまう。
「違うよ。あたしは美結みたく誰とでも打ち解けれない」
「え?」
「クラスで友達っていえるのは、美結しかいないよ」
「・・・・・」
(そうかな・・・)
何かもう遠い遠い昔みたいな、でも、つい最近のことを思い出してみる。
美愛はポツンと独りでいたりしてた場面は思い出せなかったけど、私が誰かとしゃべってるときに一緒に話に入ってたりしてたことは思い出せた。
「美愛は結構いろんな人としゃべったりしてたじゃない」
思い出したままのことを美愛に伝える。
「みんなと全然打ち解けてるように見えてたけど」
「違うよ」
何か今まで見たことのない不思議な笑顔をしながら、美愛は小さく頭を振る。
「そういうのって全部、美結がいたからだよ」
「私が?」
「そう」
コクンとうなずいて
「あたし、美結がいないとこじゃ誰かとしゃべったりできてなかったんだよ」
「・・・」
そう言われちゃうと、私が見てないとこで美愛がどうだったかなんて判るはずないから、もう言葉が続かない。
「今年のクラスの中じゃ、美結がいてくれなけりゃ、やってこれてないよ」
美愛がフーッと音を立ててため息をつく。
「うん、分かった。それでいいよ、もうやめてよ」
美愛がこんなことを言うなんて少し変に感じたから
(もう聞きたくない)
と思いながら私が笑いかけると、美愛もいつものようにして笑ってくれた。
「・・・美結といないと」
美愛は笑顔はそのままにして
「ろくでもない話が来るしね」
少しだけ今までより大きめの声で言った。
「え?」
「大丈夫大丈夫」
美愛の表情は変わらず笑ったまま。
「美結といれば、独りじゃないもん、大丈夫だよ」




