8月6日-(3)-
(昨日のことで、もう栞那ちゃんとはダメだと思ってたのに、別にそうでもないのかな・・・)
栞那ちゃんの後ろ姿を見てたら
「美結、お待たせ」
美愛が横に来てたようだった。
「もう、いいの?」
「うん」
美愛が答えたころ、ちょうど栞那ちゃんは廊下の角を曲がった。
「じゃ、行こっか」
「うん」
美愛と一緒に部屋に戻るため、廊下を歩き始めようとしたら、ヒデくんと健ちゃんが食堂の方から来るのが見えた。
軽く手を振りながら声を掛ける。
「健ちゃんもヒデくんも、さっき来たばっかりなのに、もう食べ終わったの?」
「ああ、まあ」
「あまり長居するような場所じゃないからな」
「鹿生くん達にとってはそうだよねぇ」
美愛が私の顔を見ながら言うので、うなずくしかなかった。
「美結、うれしいことでもあったのか?」
「え?」
急に健ちゃんから言われたので
「どうして?」
聞き返す。
「どうしてって」
健ちゃんは私の返事に困ったような顔をして
「いや、別に理由なんてなくて、何となくだけど」
ポソポソッと答える。
「そっか、何となくね」
私は、健ちゃんを困らせる気があったわけじゃないので、これで終わりにするつもりだった。
それなのに
「美結はいつもそんな感じだな」
健ちゃんは言葉を継いできたので、結構ビックリ。
「え?なに、それ?」
「いや、それでいいよ」
健ちゃんは一度言葉を切って
「美結はそれでいい」
照れ隠しみたいに自分の顔の前で手を振った。
「・・・」
そう言う健ちゃんだって、別に前と変わってなんかない。
大して恥ずかしいこと言ってるとも思えないのに、こんな仕草が出てしまうのは、中学校のときからずっとだ。
だから、かえって安心できる。
(私は健ちゃんに安心してもらえるような何かはできないのにな・・・)
「そうだねー、あたしも美結はそれでいいと思うよ」
美愛が私の肩をつかんで揺すりながら言うので
「何なの、美愛まで」
わざとらしい感じで振り払った。
「いやいや」
笑いながら美愛が手を振る。
「美結は気持ちが顔とかに出やすいから」
「ええー、そんなことないよー」
「ほら、また、出てる」
「んん」
腕組みをする。
「俺も美結は今のままがいいと思うぞ」
「何なの、もう、ヒデくんもなの?」
私が右足を強く踏み鳴らすと、三人が一緒に笑った。
私も笑った。
健ちゃんだけじゃない。
美愛だって、ヒデくんだって、やっぱりこんな所に来てから嫌な気持ち悲しい気持ちになったりもするはずだ。
それなのに、どんなヒドイことがあって、私からすれば、なんにも変わらないでいてくれてる。
スゴク安心できる。
健ちゃんに対してもそうだし、私はヒデくんにも美愛にも何かしてあげれることがないのに、もらってるものだけがいっぱいある。




