8月5日-(8)-
私は、頭の中のハテナを無理矢理蹴散らした。
「っと、それで、何か分かったの?」
そして、栞那ちゃんに話を合わせようとして聞いてみると、栞那ちゃんは小さく左右に首を振った。
「そうなんだ」
やっぱり何か分かったということでもないようで、もちろん、ガッカリしてしまった。
そのとき、栞那ちゃんが左足をちょっとだけ後ろに引くのが見えた。
(あ、ここから行っちゃう)
いろんな偶然が重なったんだろう、今日、栞那ちゃんが私の誘いに乗って廊下に来てくれてる。
そして今だってまだ、立ち止まったまま私と話してる。
こんなことになってしまってから、栞那ちゃんと話す機会できた。
でも、大体は、あいさつするくらいだったし、それも私からってより栞那ちゃんからしてもらうばっかりだ。
だから、これはチャンス。
「あ、あの」
どうにかしてもう少し栞那ちゃんから何か聞いてみたい。
「そうだ、あの、いいかな、訊いても、ね?」
しどろもどろに言うと、そんな言い方でも栞那ちゃんは行っちゃうのを思い止まってくれたのか
「何を?」
左足を戻して私に視線を向けた。
「・・・か、栞那ちゃんはさ、ハーフ、とかなの?」
「ハーフ?」
「あ、ほら、名前とか髪の色とかが」
「ハーフとは違う」
ピシャッとした口調。
最初の日一緒に歩いてたときと同じだ。
「私の場合」
それなのに、まだ話が続くところも同じ。
何か、栞那ちゃんのパターンの一つが分かったみたいで、昨日、名前で呼び合えるようになったときと同じでうれしかった。
「高倉村生まれの父方祖父が、Salzburg生まれの祖母とドイツ在住中に結婚、 母方はアメリカ移民で祖父がGdansk (グダンスク)、祖母が Karlovy Vary生まれと聞いている」
「はぁ・・・」
スラスラと言い切られたので、もう1回言ってと頼むのは気が引ける。
「美結さんがいう私の外見は、祖父母4人中3人のドイツ系に由来するはず」
「うん」
「それと名前は」
「うん」
「榮川は父方祖父の姓」
「うん」
「ドイツ系の姓が残らないから、私の名にドイツ色を加えたようだ」
「そうなんだ」
「珍しい名前ではないから、祖先の誰かの名だろう」
「うん」
栞那ちゃんのおじいさんおばあさんの生まれた場所とかは、地理がスゴい苦手な私なので、教えてもらったところで、どこら辺なのか全然分からない、というよりは、初めて聞く場所ばっかりだった。
でも、顔立ちとか金髪とか青い瞳とか、そういう栞那ちゃんの見た目のことは全部、おじいさんおばあさんの4人のうち3人がドイツ系というのが理由なのだということ、そして、ステファーニェというのはドイツ系の名前だと栞那ちゃんが思ってるのも分かった。




