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LEVIATHAN~Sodalis~  作者: 黄帝
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8月5日-(4)-

 雨が降ったのは、ここに来て初めてのこと。

 で、結局今日も何一つすることがないし、朝集会が終わった後、茉莉亜は安齊さん達と話してたから、一人で図書室に来てみてた。

 「ふーん」

 本棚の間を歩きながら、並べてある背表紙を目で追う。

 意外といろんな本があるようだけど、わたしにとって大して興味のないジャンルしかない。

 仕方ないから、適当に本棚から3冊出して、閲覧席みたいなコーナーまで持って行くと

「あ・・・」

ビックリした顔の舟山さんが座ってて、顔を上げた。

 「舟山さんも本を読みに来てたの?」

と言いながら、お互い本を読むくらいしかないのと、見るからに舟山さんは読書好きなんだろうと気付いたから、我ながらバカな質問したもんだって思った。

「うん」

「わたしは今日初めてここ来てみたんだけど、舟山さんは前から来てるの?」

「わたしは最初の日から・・・」

「へえ」

 机に本を置くと、舟山さんの斜め前の椅子を動かして座る。

「・・・一人?」

「え?」

座ったわたしに、ポツッと舟山さんが言うので

「一人で来たのかってこと?」

聞き返すと、舟山さんは無言で小さく頷いた。

 「そうだね、わたし一人だよ」

「・・・そう」

 そのとき、奥の方で誰かが本を探す感じの動きをしてるのが分かった。

「そっちに誰かいるのかな」

「・・・一ノ木さん」

「ああ、一ノ木さんか」

私が言うと、舟山さんがうなずいた。

 そこへ丁度、一ノ木さんが本を持って来たので

「二人で来たの?」

一ノ木さんの方を見ながら聞くと

「・・・一人が・・・怖いから」

やっと聞こえるような声で答えて

「・・・」

一ノ木さんは舟山さんの隣に、そっと座った。

 「怖い?一人が?」

 思ってもいなかったことを言われて声が大きくなってしまった。

 すると、わたしの声でビクッとしたみたいに二人は肩を上げて

「一人だと・・・何されるか・・・」

ポソポソと舟山さんが言った。

 二人の様子を見て、舟山さんに言われて、それでやっと、わたしも急に怖くなってきた。

「そっか、そうだよね・・・」

暑くてにじんでた汗が急に凍ったみたいに寒気がする。

「一人は、ねぇ・・・」

つぶやく。

(一人は危ない・・・か)

 ここがどこだかなんて知ることもできないけど、たぶんここには、わたし達しかいないっていうのは分かってる。

 昨日まであったことを考えると、わたし達しかいないのに、ここは安全な場所じゃないと思うしかないし、長谷田くんなんかが一人になるなって言うのは、お互いに監視して勝手なことをさせないようにするためだと思ってた。

 でも、信じれる人といつも一緒にいれれば、お互いを守り合うこともできるんだって、舟山さんと一ノ木さんのおかげで気付いた。

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