8月5日-(3)-
ヒデくんには、考えるなって言われてるけど、元々別に仲良くしてたわけじゃない工藤くんでも、いなくなってしまったというのはショックだ。
ここに来てから3回、同じ部屋で夜を過ごした。
同じ部屋にいるんだから、少しくらいは話もした。
みんながみんな不安な中で、話すくらいしか気を紛らわせれなかった。
そういうのからすると、私にとって、いなくなってしまった4人の中では一番接点があったことになる。
「お早う」
廊下の壁にもたれかかって、そんなことを考えていたら、ボーッとしてたんだろう、声を掛けられるまでは栞那ちゃんが横に来てたって知らなかった。
「あ、お、お早う、栞那ちゃん」
ビックリすると、うまくしゃべれない。
「雨」
「え?」
「・・・」
栞那ちゃんの視線の方、窓の方を見たら、雨が降ってるみたいだ。
(これのことかな・・・)
「・・・・・」
私はチラッと見ただけなのに、栞那ちゃんはジーッとまだ窓の外を見続けてる。
(何か見えるのかな・・・)
もう一度ガラスの向こう側で栞那ちゃんの視線の先を探す。
(特別変わったものはないようだけど)
何も見付けられないから、すぐに私は窓の外を見るのをやめてしまった。
「・・・」
でも、栞那ちゃんは見続けてる。
(それにしても・・・)
何て言ったらいいんだろ、栞那ちゃんは・・・
(そっか)
おばあちゃんちにあったような気がする。
背中の半分くらいまであってファーッと超ゆるいウェーブがかかった金髪。
サファイアみたいに真っ青な眼。
真っ白い肌。
私の倍も高い鼻。
服の上からだって、パッと見で分かるふっくらした胸・・・
(小さい頃に見ただけだった、あのフランス人形・・・)
外見だけのこと言ったって、何の個性もない、普通ど真ん中の私。
そんな私にとっては羨ましいくらい、栞那ちゃんは、いっぱいいっぱい何だって持ってる。
私は、栞那ちゃんが勉強もできるのかどうかを知らない。
でも、やっぱり中の中くらいの成績な私からすれば、何となく栞那ちゃんの言葉のところどころが頭いい感じに思えてた。
栞那ちゃんに並べれるものなんて、私には一つもない。
「・・・・・」
結局、ガラスの向こうをずっと見ていた栞那ちゃん。
私が栞那ちゃんに話し掛けるための言葉が探し切れないうちに、集会室の方へ行ってしまった。
もちろん、「雨」と言ってからは私を一回も見なかった。
もしかしたら、私がいたこと自体を忘れてしまってたのかもしれない。
私と何か話すことに意味がなかったのかもしれない。




