8月5日-(2)-
今日の国王が鹿生ってのは、昨日決めたことだ。
昨日、朝集会に工藤が来なくて、たぶんみんな工藤が死んでるだろうって雰囲気の中になった。
結局工藤は死んでたわけで、みんなまともな精神状態ではないからって、夜集会で次の日の国王を決めないわけにもいかなかった。
そんな中、手を挙げたのが鹿生だった。
昨日の国王は仁藤。
だから、仁藤とつるんでることが多い鹿生が国王というのはマズい、そのときに思った。
同じ人間が続けて国王になれないとはいっても、2人が交代でやれば何の問題もないんだ、毎日鹿生か仁藤が国王になれる。
そういうのを制限する法を作ろうと思ったら、まず国王にならなくちゃいけないし、そうでなけりゃ国王を操るかだ。
もし仁藤達が国王を独占するつもりなら、俺には“何となくこいつでいいか”的な低レベルの世界の支持だと仁藤達を上回れないに違いない。
勿論、仁藤とか鹿生を操るのは、まず俺にできることじゃない。
(じゃあ、何ができる?)
と、そのとき、田月が端末を見てるのに気付いた。
「どうした?」
声を掛けると
「いや」
田月は俺の方を見ないで
「鹿生が法を作ったみたいだから」
と言う。
「ホントか」
自分でも法を確認しようとポケットに手を入れたら
(?)
端末がない。
(そうか、さっき着替えたときに移してなかったか)
仕方がない。
「田月、どんなのだか、ちょっと読んでみてくれ
「ああ」
田月は、俺の方は見ないで
「じゃ、読むからな」
端末に視線を落とす。
「国王選挙は選出された数の少ない者を優先する」
「なに!」
俺が少し大きな声を出したせいか、田月がビクッとした。
「・・・急にデカイ声出すなよ」
「悪い・・・」
顎を引くくらいだけ頭を下げ、すぐに田月の端末を覗き込む。
「・・・・・」
確かに田月が読んだとおりの法になっている。
(どういうことだ?)
急には、うまく考えがまとまらない。
さっきも思ったが、仁藤と鹿生は、何があってもすぐにはバラバラにならないだろう。
勉強以外のことでも、それなりに頭のいい仁藤。
何となく敵を作りにくいし、人が集まる中心にもなりやすい鹿生。
そういう二人に、いつまでもつるまれてるのは、俺にとって凄く邪魔だ。
でも今、俺には奴らと正面切って争って勝つための手段がない。
当然、今すぐ奴らと争うわけにはいかないから、当面のあいつらとの接し方が一番の考えどころだった。
(一体何だ?)
奴らの方が自分で自分達が国王になり続けれることを放棄するなんて、何か仁藤に考えがあるのか。
いや、むしろ何の考えもないのか。
(だとしたら、鹿生の自爆?)




