8月3日-(7)-
7時まで少し間があるけど、ほとんどの席は埋まってるようだった。
部屋の前の方で、長谷田くん、内海くん、中岡くん、星くんが4人集まって何か話してるけど、あたしからは遠いので、何なのかは声まで聞こえなくて分からない。
そのうち、前の方で話してる人達は長谷田くんだけを残して戻ってきた。
独り残った長谷田くんが、口を開く。
「まだ7時になってないけど」
何人か長谷田くんの方を見る。
「みんなに報告がある」
(報告?)
あたしみたいなことを思ったんだろう、大体の人が長谷田くんに目を向ける。
「あ・・・」
ところが、長谷田くんは、みんなに見られると首を振る。
「あ・・・実は」
今度は目線を落としてしまった。
(?)
何か戸惑ってる感じもする。
(あ・・・)
スゴク言いにくいことなのかな、と思った。
(ってことは・・・)
昨日、何もなかった。
昨日何もなかったけど、でも、おとといは・・・
今日も何かあったんじゃ・・・
あたしがいろいろ想像を広げてると、決意したようにして長谷田くんが顔を上げた。
「ここに戸田はいない」
「は?」
結構大きめな森さんの声に誘われるみたいにして、あたしや何人かが部屋の中を見回す。
(・・・・・)
長谷田くんの言うとおり、戸田くんは部屋にいないみたいだ。
長谷田くんは、そういう他のみんなをチラチラと見ながら
「この集会室の丁度向かい側に道具部屋があるんだ」
「だから?」
森さんが組んでた脚を下ろした。
「知ってる人も多いだろうが、体育館みたいな大きい場所があって、その部屋は体育に使う感じの道具を入れとく倉庫ってところだ」
とっさには長谷田くんの言葉の意味が分からない。
森さんは
「はぁ?」
と言ってから
「あ、そっか」
イスに寄りかかってた姿勢から前に乗り出すみたいにして
「戸田って、そこにいるんだぁ」
手で机をたたいた。
そうすると、森さんの言葉に長谷田くんは何も答えなかったので、かえってわたしは、森さんの言うとおりなんだってことが分かった。
そして、長谷田くんが本当に言いたいことも・・・
「ちょっと待て、まだ7時になっちゃいないぞ」
村井くんに続いて
「戸田以外はここにいるようだしな」
部屋の中をグルッと見た田月くんが言う。
「そこにいるんなら、戸田を連れてくればぁー」
森さんの言葉に長谷田くんが首を振る。
「・・・そういう話じゃないんだ」
「茉莉亜」
「え?」
隣から理璃の声が聞こえてハッとした。
あたしは、いつのまにか理璃の手を握っていたのだった。
「あ、理璃、ゴメン」
「いいよ、別に」
「うん・・・」
せっかく理璃が言ってくれたので、もう少しギュッと手を握る。
「ありがと、理璃」




