8月27日-(6)-
何も信じちゃいけないのは当然だが、俺も何度か一瞬気が抜けてしまったことは認めるしかない。
まぁ、他人の言うことを信じるなんてヘマだけは一度もしてないし、まさか舟山が見たって騒いでたことを真に受けるはずないとしても、いくら豚でも自分の得にならない嘘をつく意味があるとも思えないから、結局実際に俺自身が確かめるしかないようだ。
(・・・)
とはいえ、30日が経つまであと3日となった中、榮川が動き始めたとしたら、それも当然だろう。
安齊からの一方的な寄生を放置できてるうちは、あいつにも余裕があったってことで、いい加減そうも言ってられなくなった頃と考えて良さそうだ。
(だが・・・)
榮川と安齊は一緒でないときの方が多いから、本当に安齊が見限られたかどうか、そうそう確かめようもない。
「涼香」
それに榮川のことだ、舟山に見せるため、フリをしてたことも考慮しておかないと。
「なぁに?」
氷で背筋を撫でられたような寒気、吐き気がするくらいの気持ち悪さを必死に我慢して、話を続ける。
「安齊と榮川は、涼香がいたことに気付いてなかったんだよな?」
「うん」
さっき舟山から聞いた話では、昼飯のとき食堂に入ろうとしたら榮川と安齊が言い争いをしてるのが聞こえてきたらしい。
「それで、榮川が安齊と自分は前も今もこれからも仲間じゃないんだし、もう話しかけたりもするなって」
「・・・」
「そして、鹿生が怒鳴って、安齊は追いすがろうとするみたいな声出してたけど、榮川は完全無視して食堂から出て行ったよ」
「そうか」
芝居臭すぎる。
マジか仕込みかで言えば仕込みだろうし、出たとこ勝負じゃなくシナリオだと考えるのが当たり前だろう。
でも、舟山か俺がいつ食堂に来るのか分からないのに、都合のいいところだけ聞かせるというのは難しいのも確かだ。
俺でさえそうなんだから、榮川だって何でも思いどおり操れるわけではないだろうしな。
(・・・)
ずっと単なるザコだと思ってた安齊が、今もまだ生きてる。
「優秀くんとあたしが食堂に入ったら、安齊も鹿生も何もなかったふりしてさ、ホント笑っちゃった」
「・・・そうか」
豚の笑顔ほど気色悪いものはない。
「でも、あたしが思うに、安齊と榮川が本気でケンカしたわけじゃないんじゃないかなぁ」
「・・・そうだな」
こんな奴にさえ勘繰れるくらいだ、きっと榮川の作戦とかではない。
舟山が見た、いや見せられたのを、そのまま受け取るんじゃなく、逆さまに見たり、斜めに見たり、裏から透かして見るようじゃなきゃ駄目なんだ。
(となれば・・・)
榮川が本当に狙ってることが何か分かってきた。
やっぱり俺の方が、あいつよりいくらか先を行ったようだな。




