8月27日-(5)-
とりあえず栞那ちゃんと話ができることになったので、なんか安心した。
(私にも何か・・・)
結局栞那ちゃんに聞かなきゃいけないにしたって、いつまでも自分の考えがないっていうのは申し訳ないし、情けない。
(・・・)
それなのに、私でもできそうなことを考えてるうち、ボーッとして眠気に似た感じで気が遠くなってくる。
「!」
隣の健ちゃんが急に立ち上がってドキッとした。
「美結」
「あ、うん」
私も立って入口の方を見ると、栞那ちゃんは席にまだ座ってて、舟山と藍川はいなかったので、まっすぐ栞那ちゃんの横に歩いていく。
「もういい?」
「・・・」
いつも何か書いてるノートとかは、とっくにしまってあったみたいで、私が声をかけるとすぐ立ち上がった。
「じゃあ、廊下で話そ」
「・・・」
廊下に出てから、私は窓際に栞那ちゃんと並んで立って、健ちゃんは私たちの声が聞こえるくらいの少し離れたところで壁に寄りかかった。
「これはね、私が単に感じることなんだけど」
「・・・」
「昨日は何もなかったよね」
栞那ちゃんを見上げる。
「栞那ちゃんもだと思うけど、藍川だってムダな時間を過ごしてないだろうから、昨日も今日も何か、企んでる?んじゃないかって」
「そう思う」
「良かった」
ホッとする。
「それでね、栞那ちゃん」
ほんの少しだけ顔を寄せて
「私が栞那ちゃんとか鹿生くんの役に立てることって・・・」
栞那ちゃんを見上げる。
「何かあったりしないのかな?」
「何か?」
「うん、何か」
栞那ちゃんが握った右手を口に当てた。
(聞けたけど・・・)
とても怖くなった。
栞那ちゃんは、率直な人、だと思ってる。
ムダなことは言わないだろうし、しない、はず。
その栞那ちゃんが、しばらくずっと考え込んでる。
私は何も期待されてないだろうことなんて分かってたけど、ホントに何もできないの?
「そ・・・・み・・に・・きる・・い・・」
「え?」
「今までと同じ」
「同じ?」
「それが美結さんにできること」
「ん?」
「特別なことができるより、易しいことをしくじらない方が難しい」
「・・・」
「言い換えれば、美結さんなら、今までしてきたこと、気を付けてきたことを、これからも続けられる」
栞那ちゃんに言われたことについて考える。
(どういう意味?)
私になら、今までできてたことが、これからもできるし、スゴイことができるより、簡単なことをちゃんとする方が難しい。
(そっか!)
「失敗しないように気をつけろってことだね」
新しいことがうまくできなかったりして2人の足を引っ張るくらいなら、私はお荷物にならないよう、自分の分も2人の分も、今までどおりが続けれるよう、そういうがんばりをする方が、結局は役に立てる。
そういうことだ。




