8月26日-(6)-
健ちゃんがうなずくのを見てから、栞那ちゃんの方に顔を向ける。
「栞那ちゃん、昨日議会があったのは知ってるでしょ?」
「・・・」
栞那ちゃんが当然知ってると思ってるから、反応がなくても気にしない。
「でも、栞那ちゃんは議会出てなかったんだし、何があったかまで知ってるわけじゃないよね?」
「・・・」
「だから説明するよ」
「・・・」
栞那ちゃんはチラッと私に目を向けただけで、隣に座ってくれた。
「じゃあ、最初に私が話すね」
「美結が?」
「うまく説明できるかは分かんないけど、私の知らないことは健ちゃんが話してね」
「ああ」
「うん。じゃ、私の知ってるところまで」
舟山がヒデくんを告発するため送信したのを見たせいで私が気を失うところまでは話したけど、昨日いろんなことが決まったって端末見れば分かることだろうし、議会で何を決めたかまでいちいち話さなかった。
「・・・・・」
栞那ちゃんは途中で藍川と舟山が食堂を出ていく様子をチラ見しただけで、話してる間ずっと私の顔の後ろ辺りを見つめてるようだった。
「その先は、健ちゃんが」
顔を横に向けてるので、服のはじを引っ張ると
「・・・ああ」
健ちゃんは栞那ちゃんの方を見た。
「美結さん」
「え?なに?」
「まだ聞いていられる?」
青い視線が私と健ちゃんを往復した。
「・・・」
今、気を失った話をしたばかりだから、栞那ちゃんの言いたいことがよく分かる。
(でも)
決心がにぶらないよう、栞那ちゃんとは目が合わないようにしながら
「私は・・・私が、聞かなきゃ」
イスに座り直す。
「・・・鹿生くん、順番を覚えているか?」
「順番?」
そう言ってから、健ちゃんもすぐ分かったみたいで
「ああ、まぁ」
左腕をたたいた。
「最初は手首の上あたり」
「・・・」
「次が腹」
「・・・」
「最後は右ひざ」
(・・・)
急に栞那ちゃんが心配したとおり、スーッと気が遠くなったけど
「っ!」
パーンと力いっぱい両手をたたいて、こらえた。
「仁藤くんに」
ちょっと私を見てから
「何か伝えられたことはある?」
いつのまにかテーブルの上で開いてたノートに目を落とした。
「英基から言われたのは」
健ちゃんもちょっと私を見る。
「美結を守れ」
「・・・」
まあ、ヒデくんなら言うだろう。
「それと、ぶっちゃけて言えば、今は榮川と争うな、だ」
ヒデくんなら、それも言いそうだ。
「・・・そう」
「俺は別に榮川と争う気はない」
「・・・」
「でももう、あの2人とだけはムリだ」
「・・」
「ねえ、健ちゃん。他にはないの?」
もっと昨日のことを知りたくて聞いたら
「他だ?」
返ってきたのは、初めて聞くようなイラついた声。
「時間・・・切れだったよ」
「ぁ・・・」
自分のバカさで胸がギューッとなった。




