8月3日-(4)-
お昼を食べた後、皿を下げに行ったら、三田さんが寄ってきて
「ちょっと話さない」
と言われたで、三田さんの後ろをついてくるみたいにして、一体の何の話をしたいのか確かめないで、わけ分からないまま外に来ていた。
「どう?」
一通り話が終わってから聞かれたけど
「って・・・」
とまどう、というよりも、なぜこんなことを言われなければいけないのかが分からない。
「あたしの言ってることが分かんない?」
言葉尻が上がっているので、黙って首を振る。
「分かんないんじゃないんだね?」
「・・・うん」
イラつきが増したような三田さんに、がんばって声を出す。
三田さんの言ったことそのものは、ちゃんと分かった、だからウソじゃない。
それが分かっても、わたしが考えもつかなかった中身だったから、答えようがないんじゃないの・・・
「ねえ、迷うような話?」
腰に手を当てて、わたしをにらむ三田さんの横には、森さんと矢口さんがいる。
「あんたさ、他に何か考えでもあんの?」
三田さんの口調は、どんどん強くなってる。
「・・・・・」
何て答えればいいんだか、全然思い付かないし、チラチラ視線を三田さんと地面の間で往復させる。
そうして何秒かいたら、森さんが
「まーねー、うちらだって、別に無理強いしたいわけじゃないの」
と言いながらわたしに近付いてくる。
でも、わたしから2、3歩くらいのところで止まって、それ以上は三田さんみたいに詰め寄ってくる感じじゃない。
「協力が大事ってこと、それは分かるよね?」
「・・・」
無言でうなずく。
「分かってんだったらさ」
三田さんが手を伸ばしながら、わたしに向かってくる。
「珠美佳、やめな」
「あ」
森さんに言われて三田さんの手が止まった。
「こんな話、今、初めて聞いたんだもんねえ」
「・・・」
コクッと首を動かすと
「うんうん」
森さんもうなずいてから、三田さんの方に顔を向けて
「珠美佳だって、最初は迷ったんじゃないの?」
わたしの近くから三田さんを手で軽く押し戻す。
「あ、あたしは、別に」
「あんたのがどーだったかなんて、興味ないけど、こーゆーのって、今すぐ決めれるはずないって分かんないのかなぁ」
そう言いながら、わたしと体をくっつくくらい近くまで寄って来た。
(もしかして・・・)
三田さんから、わたしを助けてくれるんだろうか、なんて思ったそのとき
「!」
森さんに両手で顔をはさまれた。
「すぐ決めれないし、もー少し考えた方がいいかもだけどさあ、そんなに考えてもしょうがないよねえ?」
そして、森さんは軽くわたしの左耳に唇を当てて
「今、2時半だから、3時まで決めてね」
と言って1回ポンとわたしの肩を押した。
「じゃ、ねー」
そのまま森さんは行ってしまった。




