8月3日-(3)-
最初の日、いきなり佐藤と根津が死んだのは、押し付けられた勝手なルールでも、守らないと死ぬってことだし、昨日みんな落ち着かなかったのは、オレと同じでルールのマジさを知らされたせいだろうし、自分で少し頭がましだと思ってるんだろうヤツらは、なんかいろいろ話し合ったりしてた。
昨日のオレはといえば、用心のため、みんなの様子をボーッと眺めてた感じに見せてた。
まあ、今朝だって、起きてから特にやることもないふりして、朝飯を食いに行ってて、しかも食い終わった後は集会室に行くっていう流れそのものは昨日の朝と同じにしてる。
でも、他のヤツらにとっては、何となく集会室に来るしかなかった昨日とは違ってて、昨日の終わりに長谷田が、明日の朝は食事を終わらせて、9時までには集会室に集まってくれ。明日の法を決めるなんて言っていたから、今日は一応目的があって集会室に来てるんだろう。
「では、今日の法を送信するので、みんな確認してくれ」
長谷田が言うのとほとんど同時でメールが来る。
オレも端末の画面に触る。
8月3日 @国王の法
~今日の法を【他人に傷を負わせない】にします。 長谷田~
(・・・)
昨日は他人を殺すなっていうのが法だったから、今日のも同じく当たり前な感じだ。
「これじゃ、喧嘩もできないな」
オレの前の村井がつぶやくので、何でだか気になったら、村井はすぐに続いて
「先に殴った方は終わりだ」
と言った。
(そうか、そうだな)
ピンときたので、それはそれで納得だ。
「まあ、外の世界でだって喧嘩は基本禁止なんだから」
オレの後ろの方で田月が言うと
「それもそうか」
村井の隣で三浦が頷いた。
そっちのは、ちょっと納得できない。
昨日は何もなかったからと早くも忘れたヤツがいるのかもしれないが、おとといだ、佐藤と根津が死んだのは。
佐藤を閉じ込めたり、根津の手足を縛ったヤツが、オレ達の中にいて、そいつは次の誰かを狙って、ずっと隙をうかがってるんだ。
おとといの最初の放送を聞き流したにしたって、今こうやって端末を見れば、オレ達のうち生き残るのがたった一人だってのは、すぐ分かるはずだ。
結局、最後の一人になるまで、誰も信じれないし、みんな敵だ。
田月が、外の世界なんて言葉を使ったけど、外っていうか違う世界に来たって思わないといけないし、前の世界なら、誰かにケガさせたくらいで死んだりしないのに、今の世界なら佐藤と根津みたくすぐ死ぬ。
元々分かってはいたが、ホント頭の悪いヤツしかいないクラスだ。
これだけ頭の悪いヤツが集まってるんだから、ちゃんと考えてるオレが生き残るのには都合がいいってことだけど・・・




