8月24日-(6)-
みんな無言のまま朝集会が終わって、どうせやることがないし、そのまま集会室にいれない私達は部屋に戻ってきてた。
朝集会の前に私と栞那ちゃんが話せたのは健ちゃんとヒデくんのおかげだから、今さら隠してもしょうがないと思って、栞那ちゃんに言われたとおりのことを栞那ちゃんが言ったこととして2人に話した。
「・・・そういうことみたいだから、舟山さんが手を上げなかったら、栞那ちゃんが手を上げるってことね」
「うん」
「・・・」
「栞那ちゃんを国王にするために、健ちゃんは手を上げないでって言われた」
「分かった。要は、俺が何もしなくていいんだな」
「うん」
「・・・」
私が話し始めてから、ヒデくんは一言もしゃべらない。
今までもこういう感じ時々あったけど、やっぱりスゴい不安になる。
「なあ、英基、大丈夫か?」
「・・・何が?」
「美結の話、分かったのか?」
「・・・分かったよ」
私が話してる間中、健ちゃんは別にふつうな感じだったけど、ヒデくんは違うみたいに見えてた。
(そうだよね)
ヒデくんが私の話を気に入らなかったことくらいすぐ分かる。
だって、私が自分を持たないで生きてくためにいつも必死に別な誰かが何を思ってるか考えてるのは、絶対ひとりぼっちになりたくなくて、先回りしたりピッタリ後ろをくっついていこうと周りの顔色だけを気にしてるから。
特に、ヒデくんの機嫌が分からなければ、私の毎日のかなりの部分は静かで重苦しくなってしまう。
でも、健ちゃんもヒデくんが面白くなさそうなことには当然気づいてて、今もちゃんと何とかしようとしてくれてる。
「ゴメン・・・どうしてそうしなきゃっていうのは聞けてないの」
「・・・」
「ああ」
ヒデくんみたいに自分の行き先を自分で決めれる人は、理由も分かんないまま進まされることがスゴく苦痛なはずだ。
でも、私が栞那ちゃんに言うなりなのが、たぶん一番ヒデくんをイラつかせてる。
「ゴメンね」
顔をあげれないし、床を見ながら謝ることくらいしかできない。
「美結が謝ることなんてない」
「え?」
思ってもなかった返事に顔を上げると
「気にすんなってことだよ,美結」
健ちゃんが私の肩を後ろからポンとする。
「榮川は美結が知りたいことを聞いても、いちいち説明するとは限らないんだろ?」
「・・・うん」
「何考えてるか分かんないヤツが、何も言わねぇんだ、美結が悪いなんてはずない」
「うん」
「どうなんだ、英基」
次に、ヒデくんの肩もたたく。
「俺は別に」
「そうだよな」
健ちゃんがヒデくんの背中をポンポンポンポンとしながら
「ほら、英基も気にしねぇってよ」
笑うので
「うん」
つられるようにして私も口の両端を上げることにした。
「ありがとう、2人とも」




