8月22日-(1)-
薄く軽い紙に
表と裏がある
今日の国王は鹿生だ。
鹿生は2回目だけど、舟山は昨日の国王だし、もう俺は2回やってるので、鹿生の立候補にだって仕方なくパチパチ賛成するしかなかったが
(動かず・・・か)
どうするものかと思って見てた榮川に何の動きがなかったのは、ちょっと意外でもあった。
だけど、それはそれで当たり前だとすぐ思い直した。
何しろ、俺達が放り込まれた状況は、宝くじが当たるより確率は高いらしいが、ほとんどの場合ほとんどの奴には一生縁がない。
当然、誰も準備しない。
見た目がいいわけでもなく、勉強も中の中くらいっていう俺は、普段の生活で目立つ要素なんてない。
だからこそ、俺だけは他の奴らと違う種類の人間になろうと思って、来るとは全然限らないレヴィア法に支配された日々にずっと備えてきた。
俺の今日は偶然じゃない。
グループを作って互いに守り合うとか、敵の敵は味方とか、そんな状態が続くことも確かにあったが、そんなのもとっくに終わってる。
俺の明日を偶然にしちゃいけない。
最初からだったかは分からないにしても、今の榮川は俺の敵だし、最初から、鹿生も仁藤も俺の敵だった。
でも榮川は、多分安齊の味方じゃないだろうし、勿論鹿生と仁藤の味方のはずもない。
舟山は俺の味方のつもりだろうが、俺は舟山の味方じゃないんだから、誰の味方でもないということでいえば俺も榮川と同じだろう。
10人以上死なせたはずの森でさえ、最後の日まで手下めいた奴を使ってたし、榮川だって一人きりでは何もできないんだから、もう何日かは放っておける。
結局まずは、安齊と仁藤と鹿生がまとまってる状態を崩さなければ・・・
(!)
その時左を向いてしまったら、俺の隣に転がってる舟山が間近で目に入った。
吐き気に似た感覚。
最初にアラームで起こされた時、俺の左側にいたのは金髪碧眼で日本人に見えるはずもない榮川。
パッと見で判る派手に整った顔の森も同じだが、2人は背が高く凹凸の激しい体つきをしてるから、半端なく目立ってた。
周りの連中から聞こえて来る話を聞いてるだけでも、2人が学校中の有名人なんだと分かってたし、単に風景としてあいつらを見てる分には、気分の悪くなることもなかった。
だが、同じクラスだった舟山についての記憶はここに来るまで毛の先ほどもない。
それはきっと、空気みたいになろうと身を潜めてたからだ、と舟山が自分で言ってたとおりなんだろう。
そうでなきゃ、こんなに幅も体積もあって並外れたブスという奴の印象が、チビだけが理由で何も残らないなんてことはない。
まあ、それでも誰にも目を付けられないように実際できてたんだから、下らないけど優れた能力かもしれない。




